予備校の寮ってどんな環境? 費用はどのぐらい必要?

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「勉強をするために親元を離れて、学校の近くの寮に住む」という学習形態は、実は古くから行われてきたことです。
豪雪地帯に住んでいる小さな子どもたちが、冬の間は親元を離れて、学校の近くの寮に住んで学校に通っていた。こんな昔話を知っている人もいるかもしれません。

交通が発達して雪害対策もしっかり行われるようになった現在では、このような目的で住まいを移す、ということは少なくなりました。
しかし、より「勉強のしやすさ」「勉強ができる環境づくり」という目的に特化した、「寮住まい」が着目されるようになったのは事実です。

これは何も、「高等教育を受けるために親元を離れること」だけを言うのではありません。
「自分の理想とする高等教育を与えてくれる学校に合格するための手助けとなる予備校、そこに通うために寮に住む」というやり方もあります。

今回は、「予備校と寮」に注目してお話をしていきましょう。

なお、寮制度のある予備校に限らず、予備校全体の選び方については以下の記事を参考にしてください。

夏期講習はどこの予備校に行けばいいの? 選び方とおすすめの予備校5選

予備校が寮を置く理由

寮の運営費にはお金がかかるため、小規模な予備校がこれを運営するのはかなり難しいと思われます。
しかし、「大手」と呼ばれる予備校の場合、しばしば、「勉強のしやすい環境」を作るために、独自で寮を作り、そこに受験生を住まわせていることもあります。
これらは当然のことながら、当該予備校に通うことを前提としているため、予備校から近い位置に建てられていることが多いようです。(多少距離があるところもあります)

予備校の形態の1つである「通学制」のもっとも大きなデメリットは、「通うための時間がかかること」でした。しかし、予備校の寮に入ってしまえば、このようなリスクは大きく軽減することができます。

また、予備校の寮は、一般的な一人暮らしに比べると、「勉強できる環境であること」に重きが置かれています。
その理由についても見ていきましょう。

一度でも引越しをしたことがある人ならば分かると思うのですが、「引越しをすること」には非常に多くの労力がかかります。
さまざまな家具を買いそろえ、1人で食事をつくることのできる技術を身に着け、金銭管理をしなければなりません。「隣人はどんな人間なのか」「物件はどんなところなのか」を考える必要もあります。

しかし、1分1秒も無駄にしたくない受験生や、勉強以外のことに煩わせられたくない受験生にとっては、これは大きな負担となります。

そのため、予備校の寮の場合は、その多くが、「すでに部屋には、最低限必要な家具・家電がそろっている」という特徴があります。受験勉強のときに絶対に必要となる机や椅子、運び込みが大変なベッドや寝具、洋服を片付けるためのクローゼット、快適な空間を提供するエアコンなどはすでにそろえられています。これによって、「自分で家具を選ばなければならない」「引っ越し作業の手配をしなければならない」というようなわずらわしさから解放されます。

ちなみに、「シャワー室や浴室が個室に完備されているかどうか」「ミニキッチンがついているかどうか」「洗濯機があるかどうか」については、予備校の寮ごとに違いがあります。これらが一通りそろっていて「一般的な1人暮らしの部屋」であることもあれば、「部屋にあるのは、ベッドと机とエアコンとクローゼットだけ。キッチンや洗濯機、浴室は共同で使用する」としているところもあります。
なお、「予備校の寮」であるからか、家具は一通りそろってはいるものの、代表的な家電製品の一つである「テレビ」は置いていない予備校の寮が普通です。

また、同じ予備校が運営している寮であっても、タイプがいくつかあり、部屋の広さや間取りが異なるというところもあります。場合によっては、予備校の寮であるにも関わらず、なんと2階建て形式になっているところも!

予備校の寮、費用はどれくらいかかるのか?

予備校の寮は、もちろんタダで入ることのできるものではありません。
必ず料金がかかります。
そしてこの「費用」は、保護者にとってかなり大きな負担になることもあります。

ここからは、「予備校の寮を借りるために必要なお金はどれくらいか」について見ていきましょう。

これについては、その予備校ごと、また予備校の寮タイプごとによって大きく変動します。そのため、一概に「○○円」と言い切ることはできません。さらにそこに、「一括払いかどうか」「初回のみ料金が高くなる」「管理費用はまた別途徴収する」「光熱費はまた別に支払ってもらう」としているところも多く、平均値を求めることはかなり難しいと言えるでしょう。加えて、その予備校の寮の周辺の地価なども関係してきます。

ただ、一般的に見て、月の支払額が10万円を切るようなところは多くない、と見るべきでしょう。そこのさらに入寮の一時金が必要になることを考えれば、1年間の利用で、最低でも100万円ほどの出費は覚悟すべきです。場合によっては200万円近くかかることもあります。これは、「ベッドと机、あとは共同で使用」というところでも似たようなものです。

また、予備校の寮の場合、ホームページなどに明確に「○○円です」「○○円からです」と明示していないことも多く、実態がつかみにくいというのが現状です。
このため、予備校の寮への入寮を考えているのであれば、事前にしっかりと説明を受けることが求められます。

なお、この料金に関しては、多くの場合、「朝食と夕食は含める」としているところが多いので、この点は安心です。(昼食のみ個人でとるかたちが一般的です)

説明を受ける場合は、「料金はいくらくらいなのか」「それ以外にかかる出費はどれくらいなのか」「もう少し負担が少なくて済むところはあるのか」などの疑問点を、しっかりと聞くようにしてください。勉強をしていくためには、「勉強ができる環境」を整えることが大切です。しかし同時に、その「勉強ができる環境を維持するための費用」についてもしっかりと考えることが大切になってくるのです。

どんな環境で過ごすことになるのか?

ではここからは、「寮の生活」について見ていきましょう。

予備校の寮と予備校の位置関係

予備校の寮は、「予備校に通うための寮」であるため、一般的には、予備校のすぐ側に建てられていることが多いと思われます。通学制のもっとも大きなデメリットが、「通学するために時間がかかること」であるため、それの解決策の1つとして予備校の寮がある、という特徴があるからです。多くの場合、予備校から歩いて5分以内のところにあることが多く、「目の前の建物がすぐに予備校だ」というケースもあります。
通学に使う時間が惜しい人にとっては、これはかなりありがたいことだと言えるでしょう。

ただ、「あえて、予備校から距離のあるところに予備校の寮を建てた」という予備校もあります。
このような場合は、「予備校が近いと、そこをたまり場としてしまい、勉強をしなくなってしまうから」というような理由であることが多いようです。また、「電車に乗ることで気持ちを切り替えられるから」というのも一つの理由です。
ただ、このような場合も、予備校までの距離が1時間以上あるようなところでは意味がありません。そのため、電車などを使って通学する場合でも、片道の距離は30分程度に収められるケースが多いと言えます。

1日のタイムスケジュールについて

さて、では実際に寮に入った場合、そこでのタイムスケジュールはどのようになっているのでしょうか。
これは、個人個人や予備校の考え方によっても大きく異なります。
一例として、ある予備校の寮の1日のタイムスケジュールを見てみましょう。

まず、朝の7時すぎに起床して、朝食をとります。1時間後には寮を出て、8時半からセンター試験対策のテストを行います。それから、50分間隔で授業を受けて、12時20分から昼休み。1時間に満たない休憩を経て、18時までびっしり勉強をします。このときの勉強は、自主学習や選択授業、必修授業など、個人によって異なります。

18時から1時間20分の間に、食事や入浴をします。そのあと、19時20分から23時すぎまで勉強をして、そのまま消灯。

かなり厳しい生活であり、「遊び」が入り込む余地がない事が分かります。土曜日や日曜日も授業があるため、かなり厳しいスケジュールが繰り返されることになります。

もちろん、これはあくまで一例です。
実際にはもう少し緩いスケジュールをとっているところもありますし、「自主学習ができる環境」「プライバシー」を重要視しているところもあります。厳しすぎる環境だと長続きしないこともあるため、それぞれの性格や予備校ごとの考え方についても、事前にしっかりと確認しておきましょう。

規則と持ち込み品について

予備校の寮は、一般的なマンションとは異なります。
そのため、規則や持ち込み品については制限があります。
ただ、これも、「タイムスケジュール」と同様、予備校ごとによって大きく考え方が違います。

たとえば、規則について見ていきましょう。
「門限は18時で、それ以降は外出不可」としているところもあれば、「門限は20時」としているところもありますし、事前に届け出を出しておけば外泊もできるというところもあります。朝食の時間に関しても、「50分以内」としているところがある一方で、「1時間半ほどの時間を設けている」というところもあります。
基本的には「周囲に迷惑をかけない生活態度」が求められますが、その厳しさは予備校の寮によって異なると言えるでしょう。

持ち込み品については、当然のことながら、テレビやオーディオ機については禁止です。「携帯電話」に関しては、大きく考え方が分かれています。「携帯電話は持ち込み不可」としているところがある一方で、「誓約書を書けばOK」としているところ、「携帯電話の料金は別途(つまり持ち込みそのものは禁止されていないと読める)」としているところなど、実にさまざまです。

ちなみに、防災の関係から、暖房器具の持ち込み(ストーブなど)に制限があることもあるのでご注意を。

寮ならではのポイント

一見すると、テレビがない以外は一般的な1人暮らしの部屋とほとんど変わらないように見える予備校の寮もあります。しかし、あくまでここは「予備校の寮」。そのため、一般のマンションとは異なるところも多いので、その点について見ていきましょう。

まず、食事面の管理です。
多くの予備校の寮では、栄養士が食事の内容を管理しています。
1人暮らしの場合、しばしば「食事内容」が問題になりますが、予備校の寮の場合は、栄養面にも味にも配慮した食事が出てきます。朝食と夕食が寮で出るケースが多いので、寮生は、昼食だけを考えればよいのです。

次に、取り上げたいのが「スタッフ」です。
保護者に対してもしっかりと情報提供が行われ、必要に応じて進路相談を引き受けるスタッフがいます。
また、定期的にOBなどがサポートとして訪れ勉強の相談に乗ってくれる寮もあります。

「施設の充実」も重要です。
予備校の寮のなかには、情報ステーションや自習室を設けているところが非常に多く、必要な情報を手に入れたり、開放的な空間で勉強したりすることができるようになっています。

さらに、「周りがすべて受験生であること」も大きな特徴です。
予備校の寮の場合、入寮にあたってテストが行われることがあります。生活態度はもとより「どのコースに申し込んだか」なども求められ、厳しい環境で勉強に打ち込むことが可能です。高いレベルにある受験生たちと切磋琢磨して勉強をしていくことができるため、学力レベルを上げることに非常に役立ちます。

これらの特徴は、いずれも、一般的な1人暮らしにはない特徴です。
もちろん、「1人でもひたすらに勉強に打ち込める」「きちんと自分で管理ができる」という人もいるでしょう。しかし、1人だけで、そしてだれも監視者がいないなかで、勉強だけに専心していくことはかなり難しいことだと言えます。しかし予備校の寮の場合、ある程度の強制力をもって、「勉強させること」ができます。また、プロフェッショナルによるスケジュールの管理や指導を受けることもできます。これらは、目指す難関校を突破するための、もっとも大きな手助けの一つとなるでしょう。

興味がある人は、一度見学に行ってみてはいかがでしょうか。

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