受験関連コラム

大学受験の「総合型選抜入試」とは?合格に必要な準備についても解説

大学入試制度の一つに「総合型選抜入試」という入試方法があります。しかし、受験生や保護者のなかには「総合型選抜入試について詳しくはわからない」という方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、総合型選抜入試の概要や合格に必要な準備について解説します。

大学受験の「総合型選抜入試」とは?

大学受験の総合型選抜入試とは、自分の強みとなる能力をPRする自己推薦型の入試です。従来からあるAO入試と異なり、学力の高さも重視する点が特徴です。学力については、出願書類に含まれる課題論文や、試験当日の学力検査(筆記試験や面接時の口頭試問など)の結果が合否の判断材料となります。

また、以下の出願書類は、受験生の学力とそれ以外の能力を大学が見極めるのに使われ、同じく合否の判断材料となるのが一般的です。

1.志望理由書
2.自己PR
3.調査書
4.資格などを証明する書類
※出願書類の内容は大学によって異なります。

そのため、受験の際は大学が求める総合的な能力を身につける必要があり、ある意味一般入試よりも難しい一面があるといえるでしょう。なお、総合型選抜入試では他大学との併願ができない大学もありますが、一部大学では他大学との併願が可能な場合もあります。

総合型選抜入試で自分の能力をPRできる実績や経験とは?

総合型選抜入試で自分の能力をPRできる実績や経験は、多岐にわたります。具体的な実績や経験の例は、以下の通りです。

・スポーツや音楽などの全国大会で入賞経験がある
・作文や英語スピーチのコンクールで上位入賞した
・英検1級・TOFELハイスコアレベルの英語力がある
・中学高校で生徒会長を経験している
・数学オリンピックで入賞経験がある
・海外在住経験が長い帰国子女である

総合型選抜入試と一般選抜型入試の違いは、「学力以外の能力や実績」が合否の判断材料として大きなウエイトを占める点です。学校推薦型入試は、「在籍する高校(の校長)から推薦を受けること」が出願の条件となりますが、総合型選抜入試は高校から推薦を受けなくても出願できる点が大きく異なります。

一方で、大学や学部によって受験生に求める能力や実績が大きく変わってくるため、自分がPRできる能力や実績を求める大学・学部を見つけることが重要です。

総合型選抜入試はどのような目的で行われ、何を評価するのか?

総合型選抜入試は、どのような目的で行われ、何を評価するために行われるのでしょうか?ここでは、総合型選抜入試の目的と評価について解説します。

総合型選抜入試はどんな目的で行われるのか?

近年、多くの大学では学力や人間性だけでなく「各大学が求める学生像にマッチする人物」を求める傾向があります。そのため、「各大学が求める学生像にマッチした学力と人間性を両方兼ね備えた人物」を早期に確保する目的で総合型選抜入試が行われているのです。また、複数ある入試方式のなかで総合型選抜入試が大きなウエイトを占めているケースもあります。

主な目的を紹介します。

多角的な能力の評価

総合型選抜入試は、学生の単一の試験結果だけでなく、学力以外の多様な能力や資質を総合的に評価することを目的としています。例えば、高校での学業成績や学校外での活動、社会貢献度などが考慮されます。これにより、学生の総合的な能力や個性を見極め、入学選考の公平性と多様性を向上させることができます。

個別の特徴の評価

総合型選抜入試は、学生の個別の特徴や興味、才能、意欲を評価することを目的としています。これにより、学生の持つ潜在能力や成長の可能性を見極め、将来の学習や社会での活動において活躍する可能性がある学生を選抜することができます。

学生の多様性の尊重

総合型選抜入試は、学生の個々の特徴やバックグラウンドを尊重することを目的としています。従来の試験のみによる選抜では、学力や学歴に偏った評価がされる可能性がありました。しかし、総合型選抜入試では、異なる環境や経験を持つ学生にも公平な評価を行うことができます。

総合型選抜入試では何を評価するのか?

総合型選抜入試は、「この人物は大学(学部)が求める学生像にマッチしているか?」という観点から受験生を総合的に評価します。ただ、なかには「大学(学部)が求める学生像」がわからない受験生もいるかもしれません。しかし、「大学(または学部)が求める学生像」は、どの大学(学部)でも「アドミッション・ポリシー」として公表され、一般の人にも内容がわかるようになっています。

例えば、総合選抜型入試を行う慶応大学文学部のアドミッション・ポリシーは、以下の通りです。

・慶應義塾の精神に対する十分な理解、および学問に対する意欲と向上心

・先人による古典類から最新の研究成果が書かれた論文に至るまでの諸文献を読み込み、理解するための基礎となる語学力(日本語、および英語・フランス語・ドイツ語・中国語)

・与えられた課題に対して論理的に思考し、それに対する自分の考えを正確かつ十分に記述する能力

・現在の社会や文化の成り立ちを理解するための基礎となる歴史的な知識(日本史または世界史)

引用元:慶応義塾大学

前段落では「総合型選抜入試で自分の能力をPRできる実績や経験」の例をいくつか挙げました。そのなかでいえば、慶応文学部の総合型入試で高く評価されそうなポイントは、以下の2つです。

・作文や英語スピーチの全国コンクールで上位入賞した
・英検1級・TOFELハイスコアレベルの英語力がある

自分が志望する大学のアドミッション・ポリシーを十分にチェックし、自己PRが有効な実績や経験を事前にピックアップしておくことが大切です。それによって志望校の変更が必要かどうかの判断ができます。

総合型選抜入試の受験スケジュール

ここからは、総合型選抜入試を希望する受験生向けの情報を紹介します。まず知っておきたいのが「総合型選抜入試の受験スケジュール」です。一般的には、以下のスケジュールで総合選抜型入試が行われます。

出願期間:9月1日~

出願期間の開始時期は、文部科学省(以下・文科省)の定めによって9月1日と決まっていますが、学力検査を行うなどの理由で12月以降に出願を受け付ける大学もあります。

試験期間:9月中~

早い大学だと9月中に試験がありますが、遅い大学は試験が翌年になることもあります。また、文科省の定めにより、学力検査がある場合は2月1日~3月25日に試験が行われます。

合格発表:11月1日~

合格発表の時期も文科省の定めで11月1日からですが、試験時期が遅い場合は合格発表も遅くなります。

入学手続き期間

入学手続き期間も大学によって異なりますが、一般的には1~2週間以内となっています。

このように、早い大学だと出願期間や試験期間が夏休み明けすぐに始まる場合もあるので、早い時期から本格的に受験(出願)の準備を始めてください。

総合選抜入試の出願書類

総合選抜入試の出願書類は、大学ごとに異なるため、注意が必要です。ここでは、一例として山口大学の出願書類を挙げながら、出願書類を記入するうえで注意すべき点も紹介します。

志願理由書

所定の用紙に入学を志願する理由の詳細を記入します。合否の判断材料となる重要書類なので、書く内容をよく検討した上で記入しましょう。また、自身の志望する学部や大学との適合性を明確に示すことも重要です。具体的に、なぜその学部や大学に入学したいのか、自身の目標や将来のキャリアにどのように貢献することができるのかを具体的に述べることが求められます。大学のカリキュラムや研究内容を調査し、自身の興味や志望動機と結びつけて説明するなどし、適合性を示すといいでしょう。

自己PR

自分がアピールしたい強み(能力・実績・経験など)を詳細まで記入します。こちらも合否の重要な判断材料となるので、アピールしたい強みが読む人に正確かつしっかりと伝わるように書きます。ポイントしては、他の応募者との差別化を図ることが重要です。自分の個性や経験、興味関心を明確に表現し、他の人とは異なるアプローチや視点を示すことが大切です。

調査書

通常調査書は、クラス担任が書きますが、書くことが多いため完成までに時間がかかります。出願時期を考慮したうえで、時間に十分なゆとりを持って調査書の発行を依頼しましょう。

受験料の振込依頼書

郵送、またはインターネット上で入手可能です。指定の期日までに受験料を振り込んだら、金融機関の収納印が押された振込用紙の控えを願書に添付します。
※大学によってはインターネットバンキングによる振込も可能です。

その他書類

高等学校卒業程度認定試験(旧:大検)の合格証明書や、高校卒業後に取得した資格、各種活動の実績などを証明できる書類です。

各必要書類は、大学によって名称が異なる場合があります。また、他にも出願書類が必要な場合もあるので、必ず事前に個々の大学にご確認ください。

大学受験生が総合型選抜入試に合格するために必要な準備

最後に、大学受験生が総合型選抜入試に合格するために必要な準備を紹介します。総合型選抜入試では、学力だけでなく、他の能力や適性も評価されます。そのため、幅広い視野を持ち、総合的な能力を向上させる必要があります。自己表現力やコミュニケーション能力を高めるために、積極的に発言する機会やディベートの練習などに参加していくと良いでしょう。

その他、以下についても意識しておくことを推奨します。

・自分のPRポイントを探してまとめておく
・自分のPRポイントを文章や口頭で上手に表現する力をつけておく
・志望大学のアドミッション・ポリシーを比較検討する
・学校の勉強や学校活動をおろそかにしない(調査書対策)

早い段階からこれらの対策を行うことで、夏休み明けから始まる総合型選抜入試に落ち着いて対応できます。高校3年生の場合は、今すぐに対策を始めましょう。また、高校1~2年生も今からその心づもりでいれば、高校3年生の時点で総合型選抜入試も選択肢に入れられます。合格へのルートを少しでも多くするためにも、ぜひ記事で紹介した内容を頭に入れておきましょう。

また、総合型選抜入試を少しでも検討している場合は、まず自分の強みとなりそうなPRポイントを探すことが大切です。そのうえで、自分のPRポイントが「アドミッション・ポリシー」と合致する大学を探すことから始めてみてはいかがでしょうか。

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