【大学受験の数学】どのように始めたらいいか

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高校生が「大学受験に向けて数学の勉強を始めよう」と思い立ったら、どこから手をつけたらよいのでしょうか。答えはシンプルで、「最初から」です。

数学を苦手とする人は、正しい勉強法を理解していないことが多いようです。数学の勉強法は、日本史の勉強法と比べると、明確になります。日本史の場合、縄文時代と戦国時代、戦後史は、バラバラに勉強しても得点することができます。しかし、数学は順番に学習していかないと、簡単に破綻してしまいます。

では、その「順番」は、どこに記されているのでしょうか。それは文部科学省の「高等学校学習指導要領」です。数学は、文部科学省が考案した順番に学んでいけば、確実に攻略できます。「最初から特異なことはしない」「基本に忠実に取り組む」ことが、大学受験の数学の2大鉄則です。

なぜ学習指導要領が重要なのか

この記事の対象読者は、「大学受験に向けて数学の勉強を始めよう」と、今、思い立った高校生であり、学年は何年生でも問題ありません。

高校に入学した時点ですでに難関大学を狙っている高1生も、スロースタートでこれから受験勉強モードに入る高3生も、本気で数学を始めようと思ったら、文部科学省がつくっている「高等学校学習指導要領 数学編」(以下、学習指導要領)を確認することから始めてください。

その全文は以下のURLで確認できます。
https://www.mext.go.jp/content/1407073_05_1_2.pdf

受験数学の攻略法の解説記事で、「学習指導要領を確認しよう」とアドバイスしているものはほとんどないはずです。しかし、学習指導要領をしっかり確認してから数学の勉強に取り組めば、「道に迷わず」進むことができます。

なぜなら、「高等学校学習指導要領 数学編」は、日本を代表する数学の専門家と数学教育の専門家がつくったものだからです。超難関大学の入試では、学習指導要領の内容以上のものが出題されますが、その問題は、学習指導要領の内容を確実に把握していないと、クリアできません。

また、一部の難関大学や、難関大学以外の大学であれば、学習指導要領の内容を確実に把握しておくだけで、合格点に十分届きます。最短ルートを通って志望大学に合格したい人は、高校数学の「根本」である学習指導要領を、時間を惜しまずしっかり確認することを、強くおすすめします。

数Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、A、Bの違いを知る

大学入試の数学は、数Ⅰ、数Ⅱ、数Ⅲ、数A、数Bの5種類があります。学習指導要領では、この5種類について「性格」「目標」「内容」を示しています。まずはそれらを確認しておきましょう。かなり長い文章ですが、ゆっくり、しっかり、飛ばさず読み込んでください。

数Ⅰの「性格」「目標」「内容」

数Ⅰには、中学数学の流れをしっかり受け止める性格があります。文部科学省は、中学数学から数Ⅰの流れを意識しています。また、数Ⅰは、数Ⅰだけで高校数学を終える人にも、さらに発展して勉強する人にも、配慮する内容になっています。つまり、数Ⅰは「誰もが通過しなければならない道」といえます。

数Ⅰの目標は、「数と式」「図形と計量」「二次関数」「データの分析」についての基本的な概念や原理法則を理解することです。これらの内容を紹介します。

数と式では、「数を実数まで拡張する意義」「無理数の四則計算」「集合と命題」「二次の乗法公式」「因数分解の公式」「不等式の解と性質」を理解します。

図形と計量では、「鋭角の三角比」「鋭角の三角比の値を用いて鈍角の三角比の値を求める方法」「正弦定理」「余弦定理」「三角形の辺の長さと角の大きさ」を理解します。

二次関数では、「二次関数の値の変化とグラフ、最大値、最小値」「二次方程式の解とグラフの関係」「二次関数のグラフを用いた二次不等式の解の求め方」を理解します。

データの分析では、「分散」「標準偏差」「散布図」「相関係数」「統計量」「仮説検定」「データの散らばり」を理解します。

数Ⅱの「性格」「目標」「内容」

数Ⅱは、数Ⅰのあとに学習し、数Ⅲの前に履修します。そのため、数Ⅱは、数Ⅰの発展形であり、数Ⅲの系統性に配慮している、という2つの性質があります。

数Ⅱは、「いろいろな式」「図形と方程式」「指数関数・対数関数」「三角関数」「微分・積分」を理解することが第一の目標です。それぞれの内容は次の通りです。

いろいろな式では、「三次の乗法公式」「因数分解の公式」「式の展開」「因数分解」「多項式の除法」「分数式の四則計算」「複素数の四則演算」「二次方程式の解の種類の判別」「解と係数の関係」「因数定理」「高次方程式」「二項定理」「虚数」を理解します。
v 図形と方程式では、「座標を用いた平面上の線分を内分する点と、外分する点の位置と距離」「座標平面上の直線や円の方程式」「軌跡」「不等式の領域と、領域の不等式」を理解します。

指数関数・対数関数では、「指数を正の整数から有理数に拡張する意義」「指数法則を用いた数や式の計算」「指数関数の値の変化とグラフ」「対数の意味と計算」「対数関数の値の変化とグラフ」「累乗根」「log」「常用対数」を理解します。

三角関数では、「角の概念を一般角に拡張する意義」「弧度法による角度の表し方」「三角関数の『値の変化とグラフ』『相互関係』『加法定理』『2倍角の公式』『合成』」を理解します。

微分・積分では、「微分係数」「導関数」「関数の定数倍」「和と差の導関数」「導関数を用いた関数の値の増減、極大・極小、グラフの概形」「不定積分と定積分」「関数の定数倍」「和と差の不定積分と定積分」を理解します。

数Ⅲの「性格」「目標」「内容」

数Ⅲには、将来、数学が必要な専門分野に進もうとする生徒に必要な知識、という性質があります。数Ⅲの目標は、「極限」「微分法」「積分法」を理解することです。数Ⅱでは「微分・積分」とまとまっていましたが、数Ⅲでは微分法と積分法がわかれています。それだけ深掘りしていくことになります。

極限では、「数列の極限」「無限級数の収束と発散」「無限等比級数」「無限級数の和」「分数関数と無理関数の値の変化とグラフ」「合成関数と逆関数」「関数の値の極限」を理解します。

微分法では、「微分可能性」「関数の積と商の導関数」「関数の和、差、積、商の導関数」「合成関数の導関数」「三角関数、指数関数、対数関数の導関数」「導関数を用いたいろいろな曲線の接線の方程式」「いろいろな関数の値の増減、極大・極小、グラフの凹凸、グラフの概形」を理解します。

積分法では、「不定積分」「定積分」「置換積分法」「部分積分法」「定積分を利用して、いろいろな曲線で囲まれた図形の面積や立体の体積、曲線の長さを求める方法」を理解します。

数Aの「性格」「目標」「内容」

数Aは数Ⅰと並行して学んだり、数Ⅰを履修したあとに学習したりします。数Aには、数Ⅰを補完する性質があります。数Aの目標は、「図形の性質」「場合の数と確率」「数学と人間の活動」を理解することです。

図形の性質では、「三角形の基本」「円の基本」「空間図形の基本」を理解します。

場合の数と確率では、「集合の要素の個数の関係、和の法則、積の法則、数え上げの原則」「順列と組み合わせ」「順列の総数と組み合わせの総数」「確率」「期待値」「独立な試行と、独立な試行の確率」「条件付き確率」を理解します。

数学と人間の活動では、「数量や図形と人間の活動の関わり」「数学史的な話題」「数理的なゲームやパズル」「数学と文化の関係」を理解します。

数Bの「性格」「目標」「内容」

数Bには、数Ⅰより進んだ内容を学んで数学を活用する、という性質があります。数Bの目標は、「数列」「統計的な推測」「数学と社会生活」です。

数列では、「等差数列」「等比数列」「いろいろな数列の一般項や和を求める方法」「漸化式」「漸化式で表された数列の一般項」「数学的帰納法」を理解します。

統計的な推測では、「標本調査の考え方」「確率変数と確率分布」「二項分布と正規分布」「正規分布を用いた区間推定と仮説検定」を理解します。

数学と社会生活では、「社会生活の問題を数学で解決する意義」「日常の事象や社会の事象の数学化」「数学的な問題解決方法」を理解します。

数学の勉強をイメージする

上記に紹介した学習指導要領の概要をじっくり読むと、高校数学の全体像が見えてきます。 受験生は、それぞれ「数Ⅰ、数Aしか受験に使わない」や「数Ⅲまで必要」といった事情を抱えていると思います。全体像を確認しておけば、例えば「数Ⅰと数Aだけなら、数学の『入口』を勉強するだけ」と安心できます。

もしくは「数Ⅲを理解するには、数Ⅰ、数Ⅱを先にマスターしなければならない」という覚悟ができます。

「安心」や「覚悟」は、数学の勉強のイメージになります。受験勉強の期間は、高3からスタートさせる人でも11ヵ月あります。高1から始める人は3年にもなります。それだけの長い期間、数学に取り組むことになるので、イメージづくりをしておかないと、行き当たりばったりの勉強になってしまいます。

鳥の目と虫の目

学習指導要領の確認は、定期的に行いましょう。定期的に学習指導要領をチェックすることで自分の今の立ち位置がわかるからです。受験勉強では「鳥の目」と「虫の目」で見る習慣をつけましょう。

鳥の目で見るとは、大空から全体像を眺めるイメージです。学習指導要領で現在地を確認することが、これに当たります。虫の目で見るとは、対象物に近づいて細かいところまで観察するイメージです。問題集の応用問題や過去問の難問を解くのが、これに当たります。

あせる必要なし「まずは教科書」

ネットで「大学受験、数学」を検索すると「30分でわかる○○」「1ヵ月で偏差値を10上げる方法」といった景気のよい言葉が散見されます。しかし、それらは「嘘」でないにしても「本当」ではありません。

確かに、数学のなかには30分で理解できる項目もあるでしょう。しかし、それはたまたま理解しやすい内容だっただけで、先ほど紹介した、学習指導要領に載っているすべての項目について、各30分で理解できるわけがありません。もしそれが本当なら、高校数学は1週間ですべて網羅できてしまいます。

また、偏差値35の人が45にするのと、60の人が70にするのは、同じく「10上げる」でも、労力はまったく異なります。

数学の勉強は、ほんの一握りの超天才を除いて、必ず苦労が伴います。そのため、これから受験数学を始める人は、あせる必要はまったくありません。あせっても何も得られないでしょう。なぜなら数学は、一歩ずつ進めないと、ひとつも得られないからです。

学習指導要領で全体像を確認したら、それぞれの内容を、教科書を使って1項目ずつ、地道に学習していきましょう。
まずは、教科書だけで十分です。参考書や問題集は、まだ要りません。教科書にも、簡単な問題が出題されているので、それを解いていってください。

「参考書や問題集を使わずに、教科書だけで受験数学の勉強を進めるのは不安」という人もいるでしょう。もしかしたらそれは、教科書を使った勉強を「簡単だ」と思っているからではないでしょうか。しかし、教科書を「正しく」使うことは、意外に難しいことです。

教科書は「わからない部分」を明らかにするために使う

教科書は、わからない部分を明らかにするために使います。高校の授業は教科書を使って進めますが、そのスピードはとても遅いので、受験勉強として進める速度には適しません。大学受験モードに入ったら、教科書を独自に「どんどん」進めていってください。わからない部分が出てきたら、高校の先生に尋ねましょう。

また、問題集を開いて、基本問題を数多く解き「体に覚えさせて」いきましょう。もしくは、参考書を開いて勉強してください。教科書の著者と参考書の著者は別人です。別の人から同じ項目の説明を受けると、急に理解できることがあります。問題集と参考書は、初期段階では脇役になります。

予習でわからない部分は、先生の授業で説明を受けても、理解するのに時間がかかるはずです。つまり、予習でつまずいた項目は、高い確率で将来の弱点になります。したがって、そこを重点的に勉強することができます。

教科書を読んだだけで理解できた項目は、得意分野になります。それがわかれば、問題集を開いて応用問題を「どんどん」解いていってください。得意分野を増やしていけば、苦手分野の勉強に集中することができます。

先ほど、「教科書を正しく使うことは意外に難しい」と解説しましたが、それは、(1)予習で「どんどん独学で勉強しなければならないから」であり、(2)「わからない項目を徹底的に潰していかなければならないから」です。

なぜ、初めて学習する分野の予習には、参考書ではなく教科書のほうが適しているかというと、教科書のほうがコンパクトにまとまっているからです。教科書のほうが「どんどん」スピーディーに独学を進めていくことができます。

まとめ

数学を習い始めてすぐにつまずく人の多くは、問題の意味を理解していません。つまり、難しい問題だから解けないのではなく、何を問われているかわからないから解けないのです。この「最初のつまずき」を乗り越えるには、学習指導要領で、各項目の「性格と目標」を確認しておくとよいでしょう。

性格と目標は、「高校生諸君、この分野では、このことを修得するように」というメッセージです。これから学ぶことの性格と目標がわかれば、少なくとも、何を問われているのかはわかります。数学に近道もワープもありません。数千年の歴史を持つ数学を極めるには、王道こそ最短ルートです。あせらずじっくり、サボらず地道に、一歩一歩進んでいけば、必ず理解できます。

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