コロナで変わった受験の未来|2020年の大学入試から2021年を推測

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新型コロナウイルスの感染拡大で、2020年の入試は日程縮小や中止・延期が相次ぎました。また、体調が悪い中受験した学生や、3密の中実施された受験そのものへの批判や今後の取り扱いも話題に。

2020年の入試を振り返りながら、もし来春にも新型コロナウイルスが流行した場合も含めて、2021年の入試であり得る変化やその対策をまとめます。

2020年の大学入試は新型コロナで大混乱

2020年春入学の大学受験では、年明け以降、新型コロナウイルス感染状況による受験生の不安が広がっていました。大学受験は、都道府県をまたいで全国から多数の受験生が集まります。しかも、冬場で暖房の中、受験会場は密室状態に。スペースや受験者数の関係で、隣の席との距離もなかなか離せるものではありません。

「3密」の状況になりやすい大学受験。「全国一斉に受験を中止すべきでは?」といった声もあるほどでした。ただし、2~3月にかけて当時はまだ緊急事態宣言の発令前で、大学が個々に判断して受験の取り扱いを決めていた時期です。

そのため、基本的に感染対策を十分に行ったうえで、受験は実施して「一部日程や実施内容を変更する」といったかたちで終わりました。

大学で対応はさまざま

新型コロナウイルス感染拡大の影響が大きくなりはじめたのは、2020年2月25日実施の国公立大学の2次試験(前期)でした。国公立大によって受験の対応が分かれ、受験生が新型コロナウイルスの感染者だった場合、受験を求めない大学が多かったためです。

しかも、試験1週間前の段階で、追試などの特別措置の予定がない大学が大半でした。東京大は、2020年2月13日に公式ホームページで新型コロナウイルスの対応をアナウンス。感染者は「入学試験が受験できない」「追試験などの救済措置の予定もない」といったことを発表しています。

東大以外の大学の後期日程との関係を考えると、感染者が回復してから改めて追試をするのは難しいことが大きな理由でした。東大では10年前の新型インフルエンザをはじめ、感染症の流行などがあっても、救済措置は行わない方針を貫いています。大阪大では、2月中旬時点で受験生の間で新型コロナウイルスの感染が流行しているわけではないと判断。医学部の意見も参考にしながら最終的に通常通りの受験を実施しています。

入試実施した大学はなぜ?

2020年2月に受験を実施した主な国公立大は、東京大、大阪大、名古屋大学などです。感染予防の対策はとったうえで、例年通り行われました。つまり、もし受験日に受験生が感染していた場合は、受験をあきらめざるをえない事態になったのです。特別な対応をとらなかった背景には、以下のような大学側の意図が感じられます。

・学内のほかの試験日程や、他大学の試験日程との関係で通常どおり開催する必要があったから
・感染した受験生だけ試験を延期すると公平性が保てないから
・国公立大は2次試験の配点割合が大きいため、センター試験だけで合否判断するのは難しいから
・感染予防対策をしたうえで実施できると判断したから

ただし、三重大のように2月時点では予定通り試験を実施したものの、その後の状況の変化で「追試や受験の中止・延期の検討が必要」と考える担当者もありました。そのため、今後も受験情報は刻々と変化すると意識しなければならなくなったのです。

日程変更や延期も

例年通り受験が実施された大学がある一方で、特例措置を設けた大学も一部であります。例えば、北大や新型コロナウイルスの感染のために受験できなかった学生を対象に、調査書やセンター試験の結果といった事前の成績で総合的な合否判断をしました。ただし、2次試験が筆記試験のみの募集のケースが対象です。

センター試験と調査書から総合的に判断すると決定したのはほかに、東京工業大、鹿児島大、佐賀大、名古屋工業大、鹿児島大など。2次試験とセンター試験の成績には「ある程度の関係性が読み取れる」「体調を押して受験すれば感染拡大のおそれがある」といった理由からの判断でした。

豊橋技術科学大学では、次の3つの条件で特別措置を設定して試験が行われました。

・2020年2月25日の一般入試前期日程の受験生が新型コロナウイルス感染者であること
・新型コロナウイルスの診断書を提出すること
・対象となる感染症は新型コロナウイルスのみ

なお、大学職員の感染者が見つかった北海道大のように、後期試験そのものを中止した例もあります。合否判断はセンター試験の成績のみが材料となりました。そのほか、小論文や面接試験を中止した大学も複数ありました。また、音楽や美術関連の学部、学科では、面接と実技試験に代えて、演奏中の動画や美術作品の画像を提出させた例もあります。

2020年受験は各大学の判断に委ねられた

2020年1月に新型コロナウイルスの感染が広がるにつれて日本でも受験の中止が懸念される状況が続いていました。しかし、受験シーズン真っただ中であったことや、大学の受験は原則各大学が判断するため、受験自体が取りやめとなるケースはほぼなかったのです。文部科学省も、社会的な意味や子供たちの将来を大きく左右しかねない受験について大学に柔軟な対応をするように求めていました。

しかし、実際には感染拡大と受験シーズンが同時期だったため、国としての方針を打ち出せないまま、受験が実施されています。大学側も、安易に特別措置を設けてしまうと、公平な受験の実施が難しいと判断したようです。

2020年の入試から備えるべき2021年の受験のポイント

それでは、2021年の入試はどうなるのでしょうか。

2021年からの受験は不透明

2020年5月の段階で、2021年からの受験がどのようになるかは、未知数です。「新型コロナウイルスの感染拡大が長期化する」「ある程度収束するものの、受験制度が大きく変更される」などさまざまな可能性があるため、ニュースを丁寧にチェックしていく必要があります。

2020年4月3日、萩生田文部科学大臣は会見で、新型コロナウイルス感染拡大にともなう教育への影響がおよばないように、「2021年からの受験生に配慮する対応策を検討している」と明らかにしました。まず、2020年3月の全国一斉休校から4月の緊急事態宣言以降、学校での受験生の学習は大幅に遅れています。

しかも、地域によって授業数に差があり、今後も緊急事態宣言の緩和の違いで、ますます「授業ができている自治体」「できない自治体」の格差が心配されるでしょう。明らかに授業数が違う受験生を来年春、同じ条件で受験させるのか検討しています。さらに、受験生のために、最大限大学が柔軟な対応をとることも求める方針です。

新型コロナウイルスにより、かつてない社会状況の中、受験生が不利益の出ない受験が行われるよう文部科学省も考えているのが分かります。ただし、まだ2021年の受験がどのようになるのか、国レベルでは具体的な方針は示していません。大学レベルでも、新型コロナウイルス感染拡大の状況次第で、その都度受験日程や会場の扱い方をはじめ、改めて救済措置を設けるのかどうか、対応が分かれると予想されます。

さらに、「新学期を9月スタートにしよう」という動きも出てきました。全国の学校を9月始まりにすれば、地域によって学習進度が異なる心配もなくなり、入試も2021年夏まで延期できます。新型コロナウイルス感染拡大により2020年3月に始まった一斉休校から半年分を来年でカバーすることも可能です。受験は前年からすでに始まっています。

特に、AO入試や学校推薦で受験を考えている人なら、授業が進まない学習面だけでなく、部活の活動自粛や大会などの開催自粛の影響は少なくありません。しかも、2021年1月に実施予定の大学入学共通テストは、過去問がないため傾向や対策がとりづらい傾向です。今後、「3密対策」を考えると、全国50万人以上の受験生が各地の会場で集団受験できるかどうかも分かりません。

9月入学にして新しい時代の受験を一から作り上げるのも選択肢の一つでしょう。新学期を9月にする案は、社会的な議論が必要なため、2020~2021年で実現するかどうかはまったく分かりません。いまの受験生は、あらゆる可能性を考えながら受験対策を立てなければならない厳しい状況が続くと予想されます。

受験勉強の仕上げのタイミングをどこに置くか

2020年5月時点で、例年通り4月入学で受験は1~3月というイメージで勉強を進めましょう。受験方法や配点は、大幅に変わるかもしれません。しかし、救済措置をある程度取り入れたうえで受験が実施される可能性もあります。9月入学というのはあくまで2020年5月段階では実際に行われるか分かりません。

ただ、受験が遅くなることはあっても、早まる可能性はまずありません。文部科学大臣も、総合型選抜や学校推薦型入試の募集延期を検討していると示しました。具体的な変更内容は、まだこれから明らかになるうえ、延期が実現すると一般入試の受験日程にも大きく影響を受けます。

ただ、通年の受験日程で学習を仕上げていって、延期があれば苦手分野をつぶしたり、さらに得意分野を伸ばしていったりするのがおすすめです。

スケジュールを意識した受験日程作成

2021年からの受験は、スケジュールの組み方がとても大切になります。なぜなら、受験校のうち「A大学は通常通り」「B大学は大幅に延期」「C大学は受験方式が変更」など、2019年までの受験情報が役に立たなくなる可能性が高いからです。

そのため、志望校と併願校の受験日が前後したり、新型コロナウイルス感染の状況によって急に受験中止や延期になったりするリスクも生まれます。そのため、「受験校を絞る」「優先順位を付ける」といった対策を、シビアにしていくことが重要です。そして、受験直前の入試変更にもあわてず、次の手を常に考えて受験に臨みましょう。

受験生が取れる予防策は?

生活習慣

休校と外出自粛が続いて、生活リズムが乱れている受験生は多いかもしれません。朝型、夜型の違いはともかく、2021年の受験に勝つためには、生活習慣の見直しが必須です。ここで生活リズムを崩してしまうと、新型コロナウイルスが収束して受験が通常通り実施されるようになったとき、後悔してしまいます。

・起床時間をいつもと同じにする
・朝、昼、夜の食事を決まった時間に食べる
・自分が集中しやすい時間を見つけてまとまった受験勉強を確保する

受験のストレスだけでなく、2020年以降は新型コロナウイルスへの不安もマイナス要因の一つです。そのため、自分のペースでリズムを崩さない受験勉強を続けましょう。もちろん、手洗いうがいや人が密集した場所に近づかないなど、基本的な感染予防を徹底しておくことも重要です。

受験勉強法

学習進度が大幅に遅れているため、大学側も3年生で学習する内容は出題しづらくなる可能性があります。その分、2年生の2学期までの範囲は確実に点数が取れるようにもれなく内容を押さえておくことが必要です。授業再開の時期によって異なりますが、2020年までよりも2年生までの学習範囲の配点が大きくなるのは避けられないと思っていいでしょう。

受験では2~3年1学期にかけての出題が多い傾向ですが、2年生の内容で少しでも苦手な分野があると、合格ラインで致命的な場合も出てくるかもしれません。2021年からの受験にかぎっては、「短所より長所を伸ばす」やりかたよりも「全体的に平均点以上を超えてくる」ような、ボトムアップスタイルの勉強が向いています。

受験校の選び方

2020年は、授業が遅れた分、夏休みを授業に充てる可能性もあります。「夏を制する者は受験を制す」といわれますが、夏休みは「授業も進めながら受験勉強もする」という状況になれば、ウエイトの置き方が問題になるでしょう。そのため、夏休みに入るまでにはある程度、現実的な志望校を絞っておくのが大切です。

1~2年生にかけての模試の成績を参考にして、受験校を見据えた勉強に早めに切り替える必要があります。実際、3年生の夏休み以降で成績がぐっと伸びるケースが少なくないため、受験校を絞り込むのはかなり難しい問題です。

まとめ

2021年からの受験は、これまでの受験の常識が参考にならない大変なものとなりそうです。国も、大学側の方針もまだ出そろっていないため、受験日程や受験方式が何度も変更される可能性が大きいでしょう。それでも、例年と同じように1~3月の受験シーズンを仕上げるタイミングにして、学習を進めていくことが大切です。

コツコツと積み上げる受験姿勢と、受験方法の流れに臨機応変に受験校選びや学習方法に対応していくこと。現段階では、緊急事態宣言がいつ解除されるかによって、2021年からの受験の見通しも変わってくるとしかいえない状況です。自分でもニュースに注意して、最新の受験情報を手に入れるようにしてください。

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