「4当5落」は危険!受験生は7時間30分の睡眠がオススメ

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「寝る間を惜しんで勉強しなければならない」
もし、このような気持ちで大学受験という長丁場の闘いを乗り切ろうと考えている受験生がいたら、すぐに考えを改めたほうがよいでしょう。
睡眠時間を削って勉強時間に充てれば、確かに参考書を早く読み進めることができます。しかし、それは合理的な勉強法とはいえません。
なぜなら、睡眠時間は受験勉強に絶対に欠かせない健康に深くかかわるからです。

かつて「受験戦争」という言葉が当たり前のように使われていたころ、「4当5落」という言葉がありました。これは、「受験生は1日4時間睡眠で頑張れ、5時間以上寝たら落ちるぞ」という意味です。しかし、4当5落節は精神論にすぎませんでした。睡眠時間を削って勉強すれば偏差値が上がるという科学的な根拠は示されていません。
現在では、勉強した内容を記憶として固定させるためには良質な睡眠が欠かせない、とする説が有力視されているのです。
受験生はしっかり7時間30分寝て、起きているときにしっかり勉強する生活習慣を身につけましょう。

睡眠の記憶の固定効果とは

甲南大学知能情報学部の前田多章准教授は、「睡眠には記憶の固定効果がある」と指摘し、理想の睡眠時間は7時間30分であると提唱しています。
この記憶の固定効果こそ「しっかり7時間30分寝たほうが学習効果が上がる」ことの根拠になります。詳しくみていきましょう。

睡眠の記憶固定効果を理解するには「ノンレム睡眠とレム睡眠」「宣言的記憶とエピソード記憶と意味記憶」といったキーワードを知っておく必要があります。

睡眠には、ノンレム睡眠とレム睡眠という、2つの質が異なる眠りの状態があります。ノンレム睡眠は脳を休める睡眠で、レム睡眠は体を休める睡眠です。
ノンレム睡眠とレム睡眠は交互に訪れ、2つ1セットの時間は大体1時間30分です。したがって7時間30分眠ると5セット繰り返すことになります(1.5時間×5セット=7.5時間)。

眠りについて1回目と2回目のノンレム睡眠時間は非常に深い眠りに陥り、このとき少しくらい物音がしたり体を揺らされたりしても人は目覚めません。
眠りの後半のレム睡眠時間になると睡眠中でも脳が活動を開始し、目覚めに備えます。

記憶には宣言的記憶と手続き記憶があり、受験に関係するのは宣言的記憶です。
その宣言的記憶は、さらにエピソード記憶と意味記憶に分かれます。
エピソード記憶は、いつ、誰が、どこで、何をしたかを覚えている記憶のことをいいます。エピソードという一連の流れとして記憶するのです。
そして意味記憶は、物事の意味や特徴や性質や数値を覚えることをいいます。

例えば、織田信長が京都の寺で明智光秀に襲撃されて死亡した本能寺の変は、1582年6月2日に起きました。
明智光秀は信長の重要な家臣でしたが、信長の言動に我慢できなくなり、謀反を起こしたとされています(※諸説あります)。
本能寺の変が現代に語り継がれているのは、超有能な指導者が簡単に討たれたことと、「部下が無謀な上司をやっつける」というドラマティックな展開があるからです。人々が本能寺の変を忘れないのは、エピソード記憶が固定しているからなのです。
しかし、本能寺の変が1582年に起きたことや、本能寺が京都にあることは、案外忘れられがちかもしれません。それは、「1582」や「京都」という数値や特徴を覚えるには、エピソード記憶のほかに、意味記憶を働かす必要があることが理由として挙げられます。

入試の日本史の試験では、歴史上の出来事のストーリー(エピソード)と、そのストーリーにまつわる細かい数字や地名の両方を覚えていなければ得点につながりません。したがって受験勉強では、エピソード記憶と意味記憶の両方をフル活用しなければならないため「苦労する」のです。
そしてこの宣言的記憶は、ノンレム睡眠とレム睡眠の両方の時間に脳に固定されていきます。つまり、ノンレム睡眠とレム睡眠のセットが多いほど、記憶の固定も進むということです。
1セットは1時間30分ですので、5時間しか眠らないと3セットしか繰り返されません。しかし7時間30分眠ると、5セット繰り返すことができるのです。

固定した記憶を引き出す

さて、記憶を受験で使うには、記憶を脳に固定するだけでなく、いつでも自由に引き出せなければなりません。例えば、試験中に「1582」を思い出すことができず、試験が終わってから思い出しても、その記憶の固定は受験に役立たなかったことになります。
固定した記憶を自在に引き出すには、新しい記憶と既存の記憶の関連づけと、記憶を思い出すきっかけになる「索引」という機能が必要になります。
前田准教授によると、レム睡眠のときに記憶の関連づけと索引が身につきます。
したがって、固定した記憶を引き出すにも睡眠が必要になるのです。

受験生が4当5落を実行するのは危険

「4時間睡眠で頑張れば難関大学の入試を克服できる」という4当5落の考え方が、いかに科学的根拠を欠いたものであるか、ご理解いただけたでしょうか。
さらに、学習時間との関係性においても、4時間睡眠は「意味がない」といえるでしょう。4時間睡眠ということは、1日20時間活動することになります。どれほどの難関大学に挑戦するにしても、1日20時間の学習は必要ありません。

全国大学生活協同組合連合会が全国の大学生に行ったアンケートによると、大学受験の終盤の追い込み時期である12~2月の1日の学習時間は以下のとおりでした。

 

1~2時間

3~4時間

5~6時間

7~8時間

9~10時間

11~12時間

13時間以上

無回答

平日

17%

26%

28%

15%

6%

3%

1%

4%

休日

15%

11%

15%

20%

18%

11%

6%

4%

単純計

32%

37%

43%

35%

24%

14%

7%

8%



難関大学や有名大学を狙う場合、1日5~6時間以下が少なすぎることは明らかなので、ここでは検討から除外します。
「9時間以上」でみると、平日と休日の割合を単純に足したものでは、9~10時間が24%で最多になりました。次いで11~12時間の14%です。そして13時間以上は7%しかいません。
この結果からは、いくら受験勉強といえども1日10時間程度にとどめておいたほうがよいことがわかります。

どのように7時間30分睡眠を確保するか

1日10時間勉強する目標を立てたら、あとは7時間30分の睡眠時間をどのように取るか考えていきましょう。
1日7時間30分の睡眠を取っても、活動時間は1日16時間30分もあります。10時間勉強しても、1日6時間30分の「睡眠と勉強以外の時間」を確保することができます。
高校や予備校への通学に往復1時間、3食に2時間使っても、リフレッシュ時間を3時間30分確保できます。
リフレッシュ時間の3時間30分を分割して、勉強時間の10時間の途中に組み込めば勉強効率も高まるでしょう。
例えば、以下のようなスケジュールを作ってみてはいかがでしょうか。

<7時間30分睡眠と10時間学習のモデル>

起床

朝食終了

家を出る

高校または

予備校到着

授業や自習:6時間

昼食など:1時間45分

学校を出る

自宅に到着

学習:4時間

夕食や風呂など:3時間

就寝

7:00

7:45

8:15

16:00

16:30

23:30



7時に起きて朝食を摂ったり身支度を整えたりして、7時45分には家を出ます。通学時間が片道30分だとすると、高校または予備校に8時15分に到着します。もし始業時間がこの時間より遅ければ、早朝自習をしましょう。そのような自習を含め、高校や予備校では6時間勉強したとします。それでも帰宅する16時までに、昼休みを含めて1時間45分の休憩を取ることができます。
自宅に着くのが16時30分ですので、すぐに自宅学習に取り掛かります。就寝時刻の23時30分まで、夕食や娯楽時間に3時間を費やしても、たっぷり4時間勉強できます。
そして、翌朝7時まで眠ることができれば、7時間30分間寝ることができます。
この生活であれば、十分な睡眠と十分な勉強時間を無理なく確保できそうです。

夜型の受験生には「分割睡眠」がおすすめ

「自分は夜型だ」と自認している受験生も少なくないでしょう。夜中は家の中が静かなため、参考書や問題集に集中できます。また、友人と遊んだり、スマホでSNSを使ったり、テレビ番組を見たりする機会は時間が遅くなるにつれて減っていくので、夜や夜中は「誘惑」が少なく勉強にも向いているかもしれません。

しかし、夜中まで起きながら普通の生活をすると睡眠時間が減ってしまいます。そこでおすすめしたいのが、分割睡眠です。昼寝をして、その分、夜の睡眠を短くするのも分割睡眠の一種です。

先ほど紹介した「7時間30分睡眠と10時間学習のモデル」では、23時30分に就寝しています。もし受験生が23時30分以降も勉強したいのであれば、例えば、7時間30分の睡眠時間を4時間と3時間30分にわけ、それぞれ別の時間帯に設定する方法もあります。

ただ、分割した睡眠時間をどこに設定してもよいわけではありません。もちろん、高校や予備校の授業時間に睡眠時間を置くこともおすすめできません。
睡眠に詳しい医師は、仮に分割睡眠を実行するにしても、深夜1時から午前5時までの4時間は睡眠に充てたほうがよいとアドバイスしています。体内時計に狂いを生じさせないためにも、そのアドバイスを守りましょう。

そこで、次のような分割睡眠モデルつくってみました。

<7時間30分睡眠と10時間学習の分割睡眠モデル>

起床

早朝学習:2時間

朝食など:45分

家を出る:7:45

高校または

予備校到着

授業や自習:6時間

昼食など:1時間45分

学校を出る

自宅に到着

して就寝

5:00

8:15

16:00

16:30

分割睡眠:

3時間30分

起床

学習:2時間

夕食など:3時間

就寝

 

20:00

1:00

 



5時30分に起床して、自宅で2時間早朝学習をします。朝食は抜かないほうがいいので、ここでも朝食と身支度の時間を45分取っています。そして家を7時45分に出ます。
ここから帰宅の16時30分までは先ほどみたモデルと同じです。
分割睡眠モデルでは、帰宅してすぐにベッドに入り3時間30分の睡眠を確保します。20時ちょうどに起きて夕食や風呂を間に挟みながら、2時間の勉強をこなします。そして深夜1時に就寝します。
このスケジュールでも、早朝学習2時間+学校での学習6時間+自宅学習2時間で計10時間の勉強時間を確保できるのです。

分割睡眠をすすめる医師は、人によっては睡眠時間を分けたほうが「眠る満足感」が深まると指摘しています。また、この「7時間30分睡眠と10時間学習の分割睡眠モデル」であれば、分割睡眠を一時的に中止するときも、学校からの帰宅直後の睡眠を取らず、就寝時間を21時30分に前倒しするだけで、起床時刻5時を変更することなく7時間30分睡眠を確保することができるのです。

良質な睡眠を確保する方法

十分な睡眠時間と必要不可欠な勉強時間を確保できたら、次は良質な睡眠を取るように心がけましょう。
公益財団法人健康・体力づくり事業財団によると、よい睡眠を取るための生活習慣改善の9カ条は次のとおりです。

1:自分の睡眠特性が朝型か夜型かを把握して、睡眠時間帯を決める
2:毎日決まった時間に寝て起きる
3:睡眠が十分かどうかは日中の眠気で判断する
4:眠る前は読書や音楽やぬるめの入浴などでリラックスする
5:眠る4時間前からコーヒーやコーラなどのカフェイン類を摂取しない
6:朝起きてすぐに日光を浴びると目覚めがよくなる
7:3食しっかり食べる(特に朝食は体内時計の調整に重要)
8:適度に運動する
9:昼寝は30分以内

(※実際は10カ条ありますが、10カ条目は「睡眠薬の服用とアルコール」についてのルールなのでここでは掲載しません)

先ほど分割睡眠を紹介しましたが、分割する睡眠時間帯をその日の気分で決めるのではなく、規則正しく運用したほうがよいわけです。
また、運動系の部活動をしてきた生徒は、受験勉強に入ると運動する機会が急に失われます。健康を維持する上では適度な運動も必要ですので、例えば電車通学をしているのであれば1駅分歩くなどして運動量を確保してみてください。

まとめ

眠ることは、空腹になったら食べたり、食べたら排便したりするのと同じ生理現象です。したがって自然体で眠ることが理想的といえます。
しかし、受験生にとって「時間」は合否を決める生命線ですので、どうしても「寝すぎ=悪いこと」と感じてしまうかもしれません。
危機感を持って勉強に臨むことはよいことですが、神経質になりすぎないようにしてください。もし眠りすぎてしまって勉強時間が減ってしまったら、テレビやスマホを見る時間を減らしてみてはいかがでしょうか。眠りすぎてしまったことを挽回するために次の睡眠時間を減らすのは、さらなる寝すぎを引き起こすことになるので、得策とはいえません。
そして、入試本番が近づくと緊張して眠れなくなることもあります。寝不足で入試本番に体調不良を引き起こしては元も子もありません。いかなる状況下でも平常心を持ち、しっかり眠ることも「受験勉強メニュー」のひとつと心得てください。

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