受験関連コラム

大学受験の「滑り止め」はこう選ぼう!

第1志望の大学に合格する自信はないけど浪人はしたくない、という受験生は少なくないでしょう。そのような受験生は、滑り止めの大学を選定し、その大学の入試を受けることになります。
滑り止め大学には確実に合格しなければならないので、大学の選定といっても自分の現在の学力より低い偏差値の大学を選ぶ「だけ」と思うかもしれませんが、いざ「実際に受験する大学」を選ぶとなると、意外に難しいことがわかるでしょう。

それは入試を受けるにはお金と手間がかかるので、いくら滑り止め受験といっても「絶対に行かない大学」は受けないほうがいいからです。今回は、滑り止め大学の選び方を解説します。

だから滑り止め大学を受験したほうがよい

滑り止め大学の選定に入る前に、そもそも滑り止め大学を受験するべきなのかどうかを考えてみましょう。
例えば、両親がA大学を卒業していて、両親から強くA大学を薦められ、受験生本人も強くA大学に入りたいと思っていたら、滑り止め大学を受ける必要はないかもしれません。
もしくは、B大学C学部のD教授のゼミを受けたいから、何回浪人してでもB大学C学部に入りたい、と考えている人にも滑り止め受験は不要でしょう。
しかし、特定の大学・学部に対してそのような強力な想いがない人は、滑り止め大学を受験しておいたほうがいいでしょう。その理由を紹介します。

滑り止め大学は「安心をもたらす保険」になる

第1志望の大学の入試の日のことを想像してみてください。もしその前日に高熱を出して受験できなかったら、1年間の努力が水の泡です。もしその大学がその年に急に設問の出題傾向を大幅に見直し、「これまで見たことがない問題」が目の前に現れたらどうでしょうか。
受験は運だけでは乗り切れませんが、どれだけ努力を重ねても運に見放されて不合格になる人は少なくありません。
そして運をつかみ損ねるのは、得てして極度の緊張を強いられているときなのです。
したがって第1志望の大学の入試は平常心で臨む必要があります。

第1志望大学の入試の前に滑り止め大学を受験して、「合格間違いなし」との確信を得ておけば、リラックスして本命に挑戦できます。滑り止め受験は本命大学受験の「保険」になるのです。
「第1志望大学に落ちても、大学生になることはできる」と思えば、受験プレッシャーが和らぎます。

また、滑り止め大学は偏差値が低めのところを選びますが、すると「この大学を落ちたら恥ずかしい」という気持ちが生まれます。この気持ちは自分自身を奮起させるでしょう。
もしくは「第1志望の大学に落ちたら、あまり行きたくないあの大学に行かなければならない。それは嫌だ」と思うことでも、奮起につながります。これらも、滑り止め受験の保険効果です。

滑り止め大学も厳選しよう「まずは3校を選ぶ」

滑り止め大学だからといって、適当に選んではいけません。偏差値が低いことを前提としながら、「入学する利益」が得られる大学を探しましょう。

第2、第3志望大学とは違う

滑り止め大学は、第2、第3志望大学ではありません。両者には次のような違いがあります。

<第2、第3志望大学の特徴>
・第1志望ではないだけで、入学したい気持ちは高い(合格したら嬉しいと思える)
・第1志望大学の受験より難易度が高いこともある
・合格確率は五分五分かそれ以下

<すべり止め大学の特徴>
・第1志望大学より圧倒的に偏差値が低い
・客観的な情報(模試など)からも主観的な観点(過去問を解いた感触など)からも、合格確率が相当高い
・かなり妥協した感じがある

第2、3志望大学と滑り止め大学は明確にわける必要があります。例えば、合格確率がそれほど高くない大学・学部を滑り止め大学にしてしまうと、「滑り止め効果」が得られません。それでは単に、第4志望大学を選んだにすぎません。

B判定も射程内にする

前提となる偏差値ですが、模試のA判定(または合格率80%)とB判定(または合格率65%)が目安になります。A判定を滑り止めにすることは異論がないとしても、なぜB判定大学も滑り止め大学の対象になるのでしょうか。
それは、模試によっては判定が厳しめに出ることがあるからです。A判定の大学のなかだけで選ぼうとすると選択肢が狭まってしまい、「行きたくない大学」ばかりになってしまいます。B判定にまで選択肢を広げることで、「行ってもいい大学」が増えてきます。

入学する利益を考える

模試の合格判定や偏差値で大学・学部をある程度絞ることができたら、「入学する利益」を検討しましょう。滑り止め大学に入学する利益には、次のようなものがあります。

・就職が強い
・テレビに出ている教授がいる
・自宅に近い
・大学が行ってみたい地方にある

就職の強さは大きなメリットです。就職の強さは学生を集めるカギになるので、就活支援に力を入れている低偏差値大学もあります。そのような大学はホームページで卒業生たちの就職先を掲載しているので、必ずチェックしておいてください。
テレビに出ている有名教授がいる大学・学部に入ると、その先生の講義を受けることができます。

有名教授の講義は面白いだけでなく、時宜(じぎ)を得た教えを受けることができます。また、著名な教授は特定業界に深い人脈を多く持っていることが多いので、その先生のゼミに参加すれば、これも就職に有利です。

大学が自宅の近くにあると、1人暮らしするコストも交通費のコストも抑えることができます。
逆に、自宅から遠く離れた場所にある大学に入ることでメリットを受けられる受験生もいます。例えば都会の受験生が、北海道に住んでみたい、沖縄に行ってみたいと思った場合、地方の大学に入ればその願いがかないます。

北見工業大学(北海道北見市)や室蘭工業大学(北海道室蘭市)、琉球大学(沖縄県中頭郡西原町)は国立大学でありながらあまり偏差値が高くないので、実は「穴場大学」です。
もちろん地方の受験生が東京の大学を滑り止めにすれば、都会に出るチャンスを得ることができます。

なぜ3校がいいか

滑り止め大学は、3校にとどめておいてはいかがでしょうか。
第1~3志望大学と滑り止め3大学校で、計6回受験することになります。受ける大学・学部が増えるとその準備も増えるので、7校以上になると対策を練るだけで「疲れて」しまいます。

何校受けても入学するのは1つの大学・学部です。最終的に、入学しなかった大学・学部の受験料は、活用しなかったお金となってしまいます。もちろん、滑り止め大学や第2、3志望大学は重要な「保険」なので、その受験料が無駄にはなることはありませんが、ただ活用はできません。「保険のかけすぎ」には注意しましょう。

10校以上受けることの意義

受験生のなかには10校以上受ける人もいます。
10回の入試に挑戦することは、活用しないお金が増え受験準備が煩雑になるデメリットがありますが、メリットもあります。
それは、第4、5、6、7志望大学を決めることができることです。10大学受験のラインナップはこうなります。
1)第1志望大学
2)第2志望大学
3)第3志望大学
4)第4志望大学
5)第5志望大学
6)第6志望大学
7)第7志望大学
8)滑り止め大学A
9)滑り止め大学B
10)滑り止め大学C

滑り止め大学はどうしても「できれば行きたくない大学」を選ぶことになってしまいます。しかし第7志望大学まで受験することができれば、行きたくない大学に行かなくてよい確率が高まります。
出身大学は一生履歴として残るので、できれば行きたくない大学には行かないほうがいいのです。

入試科目を合わせよう「滑り止め用の勉強は無駄?

滑り止め大学・学部を選ぶとき、入試科目と出題傾向はしっかり把握しておいてください。理想は、第1志望大学の入試科目と同じ科目で、出題傾向も似ている大学を滑り止めに選ぶことです。
偏差値が高くない大学の入試問題は難易度が低い傾向があるので、滑り止め大学をこのように設定すれば、第1志望大学向けの受験勉強のトレーニングになります。
本命大学の入試科目になくても、滑り止め大学の入試科目を勉強することは人生において無駄にはなりませんが、ただ「受験効率」を考えると回避したいところです。

滑り止め大学の更新を忘れずに

受験勉強を進めるなかで、滑り止め大学は常に更新していく必要があります。例えば、超優秀な受験生であれば、本命を東大、京大に据え、早慶上智を滑り止めにすることもあります。
つまり、自分の学力と偏差値が向上し、第1志望大学のレベルを上げることができたら、滑り止め大学のレベルも上げたほうがいいのです。

「絶対に入りたくない」大学も滑り止め受験すべきか

先ほど、滑り止め大学は模試のA判定もしくはB判定が出た大学・学部のなかから選びましょう、と解説しました。
では、A判定大学のなかにも、B判定大学のなかにも行きたい大学がなかったらどうしたらよいでしょうか。特に、絶対に入りたくない大学ばかりだったら、困ると思います。

その場合、「浪人すること」と「絶対に入りたくない大学に入学すること」の比較が重要になります。家庭の事情や自身の気持ちなどから、浪人することが許されない受験生は、絶対に入りたくない大学も滑り止め大学のなかに入れておいたほうが無難です。

それというのは、入りたくない大学と思って入学してみても、意外に母校愛は育まれるものだからです。
大学のブランドや知名度だけで行きたい大学と行きたくない大学をわけている受験生は少なくありません。そのような受験生は大学の本質をみていないので、実際に大学に入ってみるとそのよさに気が付くのです。
どこの大学で学問を修めても、学問は学問であり、人としての質を高めてくれます。

絶対に入りたくない大学も滑り止め受験すべきか?の答えは、浪人をしたくないなら受験すべき、となるでしょう。

滑り止め大学にしか合格せず「入りたくない」と思ったらどうすべきか

入試がすべて終わり、滑り止め大学しか合格しなかったとします。受験の当初は、その大学しか合格しなかったらそこに行くつもりでしたが、いざ入学を目の前にしてみると「やっぱり行きたくない」と思うかもしれません。
そのとき、どうしたらよいでしょうか。

リアリティを持って考える

滑り止め大学の選定では、ここまでリアルに考える必要があります。
もし合格した大学にどうしても行きたくないと思ったら、親に相談してみてください。まずは、高い受験料を支払ってくれたお礼の気持ちを、親に表明しましょう。
そして、決して最初からその大学に行かないつもりではなかったことも伝えてください。受験した大学は、熟考に熟考を重ねたうえで選定したことを話しましょう。
そのうえで、どうしてもその大学に行きたくない理由を話し、浪人させてほしいと頼んでみるのです。
さらに、浪人してでも入りたい大学・学部名を挙げて、なぜそこに行きたいのかも説明しましょう。
そこまでの決意を固めるには、浪人生活の覚悟も必要です。浪人期間中に通う予備校を決め、その予備校が第1志望大学の受験に強いことを親に説明できるとよいでしょう。予備校のパンフレットを入手しておくと、親に覚悟が伝わります。

ここまで話せば、親も「じゃあもう1年頑張ってみなさい」と言ってくれるに違いありません。

滑り止めだからといって油断できない

ある受験生が、第1~3志望大学・学部と滑り止め大学3校の計6回の入試に挑むとします。このとき「受験エネルギー」の90%は第1~3志望大学に注ぐ必要がありますが、それでも残りの10%は滑り止め大学対策に使ってください。
それは、滑り止め大学だからといって無対策で入試に臨むと、落ちてしまう可能性があるからです。
例えば、滑り止め大学だからといって、過去問をまったくやらずに入試に臨むようなことはしないでください。
滑り止め大学として受験する以上、なんとしてでも合格しなければなりません。

まとめ

「滑り止め」という言葉は、ネガティブな響きが強く、よくない言葉なのかもしれません。しかし、大学受験における「滑り止め」には、むしろポジティブな意味があります。大学受験の緊張感やプレッシャーを薄めてくれますし、進学の確実性を高めてくれます。

したがって、滑り止め大学という位置づけになる大学にネガティブな印象を持つ必要はありません。どの大学にも、必ず長所があります。それを発見できたら、偏差値にはない価値を得ることができます。
滑り止め大学の選定には、十分時間をかけましょう。そして自分の学力が上がってきたら、滑り止め大学の見直しも必要です。

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