塾の利用を検討しているものの、学校と塾の具体的な違いが分からず、悩んでいる方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、学校と塾のそれぞれの役割と双方の違いについて紹介します。
また、学校と塾の両方に通うメリットや未来の教育トレンドを紹介するため、塾に通うことを検討している方はぜひ参考にしてください。
学校教育の役割と課題について
学校と塾の役割と課題はそれぞれ異なります。まずは学校教育の役割と課題についてみていきましょう。
学校の基本的な役割
学校教育では、生徒の基礎学力の修得を目的としています。政府が定める「学習指導要領」に基づいて主要教科が指導され、全国で一律の平等な学習教育が行われているのです。
また、学校教育のカリキュラムには、道徳・音楽・家庭科・体育・美術などの教科も含まれており、学力の取得のみならず、総合的な人間形成が目指されています。
さらに、学校は社会性を養い、規範を理解する場としても機能しています。生徒は集団生活を通じて、コミュニケーション能力や協調性を養うと同時に、ルールや規律を守ることの重要性を学べるでしょう。部活動などの課外活動、体育祭や文化祭といった学校行事も精神面の成長につながります。
そして、学校は生徒のキャリア教育や進路指導も行っています。職業体験や進路相談会など、さまざまな体験の場を提供し、生徒のキャリア育成や進路決定をサポートしているのです。
学校教育の課題
学校教育の課題として、個別指導の難しさと授業ペースの固定化が挙げられます。学校の授業は集団に対して一律的な学びを提供するため、すべての生徒に平等な学びの機会が与えられますが、生徒一人ひとりの学力や得意・不得意に合わせることは困難です。併せて、学校教育のカリキュラムは政府によって定められているため、生徒の学習進度に合わせた授業も提供できません。
次に、学校生活によるストレスや不登校などの問題が挙げられます。集団生活を送る以上、授業以外でも他者との密接な関わりを必要とされるため、ストレスを感じる生徒もいるでしょう。
また、悩みを抱える生徒が不登校になるケースも少なくありません。文部科学省による調査では、令和5年度の高等学校の不登校生徒数が68,770人と過去最多を記録しており、深刻な問題とされています。
引用:文部科学省|令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要
塾の役割とは?
塾の役割は、学校での学習を補完することです。また、ハイレベルな授業や受験対策など学校教育の範囲外も補っています。ここでは、塾の基本的な役割と利用時の注意点を紹介するので、入塾を検討している方はぜひ参考にしてください。
塾の基本的な役割
塾は、カリキュラムや指導計画が定められていないため、生徒の学力に合わせた授業を行えます。そのため、学校の授業で理解できない部分がある生徒は、補習授業を行う「補習塾」が基礎固めに適しているでしょう。一方で、難関校の合格を目指している生徒には、よりハイレベルで受験対策に特化した「進学塾」の利用が有効です。
数ある塾のなかでも個別指導塾は、個々の学びに合わせた授業を行うため、生徒自身のペースで学習を進められます。授業は少人数で行われるため、講師が生徒一人ひとりに目を配れるので、集団型の塾と比較してより細やかな指導を受けることが可能です。
前述した通り、進学塾はハイレベルかつ受験対策に特化した授業を提供しています。進学塾では、過去の入試問題や予想問題を徹底的に分析し、生徒の志望校合格という目標達成をサポートしています。夏期講座や冬季講座などの特別講座を実施している塾もあるため、このような塾を利用することで、より効果的な学習を行えるでしょう。
さらに、塾では各学校の対策に向けて授業のカリキュラムが定められています。そのため、受験までの学習計画を立てやすいというメリットもあるでしょう。
塾を利用する注意点
塾を利用する際には2つの注意点があります。1つは月謝です。塾の授業は有料のため、月謝として毎月既定の授業料を納める必要があります。加えて、夏期講座などの特別講座にかかる費用、教材費、通学費なども必要になります。そのため、入塾を検討する際は家庭の経済事情と照らし合わせましょう。
もう1つは生徒の負担です。塾の学習方針や通塾頻度はさまざまですが、生徒によっては負担になる可能性があります。特に進学塾は通塾頻度が高く、集団型でハイレベルの授業を行うため、ストレスを感じる生徒も少なくありません。
学校と塾の違いとは?
学校と塾には、指導・教育の目的に違いがあります。この目的の違いにより、それぞれの役割や課題も異なります。
学校は基礎学力の定着だけではなく、社会性の育成が目的です。また、主要5教科以外の授業、部活動などの課外授業、文化祭・体育祭といった行事も行っているため、生徒に幅広い学びを提供しているといえるでしょう。このような学びは主体性や協調性の育成にもつながります。
塾は集団に対する一律的な対応ではなく、個別の対応が目的です。個人の学力に合わせた学びを提供し、生徒一人ひとりに目を配った授業・指導を目指しています。学校では対応できないハイレベルの授業や受験特化型の授業を行う塾もあり、志望校合格や進路実現などの目標達成を徹底的にサポートしています。
塾と学校を両立するメリット・デメリット
ここからは、塾と学校の両方に通うメリット・デメリットについて紹介します。それぞれを理解したうえで、自身に合った塾を選ぶようにしてください。
塾と学校を両立するメリット
塾と学校を両立するメリットとして、苦手科目を克服できることが挙げられます。先述した通り、学校の授業は指導計画が定められているため、個々の苦手科目に特化した授業を行うことは容易ではありません。
しかし、塾では苦手科目を重点的に学習できるようなカリキュラムを組めます。近年では、特定の教科のみを受講できる塾もあるため、より効率的に学習を進められるでしょう。
個別指導型の塾は教師と生徒の距離が近く、学校の授業で理解できなかった部分をすぐに質問できるため、苦手科目の克服に効果的です。
塾と学校を両立するデメリット
塾に通う以上、生徒の自由な時間が減ってしまうことは避けられません。その結果、生徒の負担が増えて通塾をストレスに感じる可能性があります。生徒の負担を軽減するには、学校と塾の役割を明確にして重複を避けることが大切です。
たとえば、難関校の合格を目指す生徒は、受験に特化した学習を行う必要があります。この場合に学校での学習内容を振り返る補習塾に通塾してしまうと、生徒にとって学校と塾が果たす役割が重複してしまい、通塾の意義がありません。
そのため、学校では基礎を身に付け、塾では発展的・専門的な学習を行うという役割の分担が必要です。塾を効果的に利用することで生徒も自身の成長を実感し、通塾の負担を軽減できるでしょう。
未来の教育トレンド:学校と塾の進化
近年では、AIの発展やグローバル化が進み、学校と塾が提供する学習方法も進化を遂げています。以下で紹介する3つのポイントを中心に、時代に合わせた学びを理解することで、よりよい選択を行えるようになるでしょう。
1.AIを活用したパーソナライズ学習
これからの教育現場では、AI(人工知能)によるパーソナライズ化が可能になります。具体的には、学校の授業にAIが使用されることで、生徒の学習状況や理解度をリアルタイムで分析できるようになります。これにより、個々の得意・不得意が可視化され、生徒の学力向上にさらに効果的な教育体制が整うと考えられるでしょう。
AIによるパーソナライズ化が進むことで、進路指導も躍進するとされています。これは集団の一律的な学習ではなく、個々の興味・関心に基づいた学習が提供されるためです。こうした学習は、将来の目標設定や進路実現につながり、進路指導もより具体的になるでしょう。
塾でもAIによる指導の発展が期待されています。膨大な模試のデータをAIが分析すると、生徒一人ひとりに適した学習プランを作成できます。このような個人に特化した学習プランは目標達成までの過程を明確にし、生徒の学力向上だけではなくモチベーションの維持にも大いに貢献するでしょう。
実際の学習においても、学習効率を最大化した「個別最適化学習」が普及し始めています。具体的には、AIが生徒の苦手分野を特定して、その分野を重点的に学習させる方法が普及している状況です。同時に、得意分野の伸ばし方も改善されています。今後も個々に適した教材や指導が提案され、学習の効率化が進むでしょう。
2.探究学習とプロジェクト型学習(PBL)の拡大
近年では、自己の生き方を考えるための資質・能力の育成を目標とした「探究学習」が文部科学省により推進されています。別名「PBL」と呼ばれるこの学習は、地域や企業と連携したプロジェクト型の学習方法を採用し、生徒と実社会との関わりを深めています。PBLであれば、生徒の課題発見・解決能力を養うと同時に、地域や企業の新たな魅力を学ぶ機会を得られるでしょう。
また、生徒に社会的な課題と自己の課題の関連性を発見させ、未来の社会参画を促しています。PBLにより、学校以外のフィールドに目を向け、生徒自身の将来と実社会を切り拓くための力が養われているといえるでしょう。
塾でも探究学習を支援しています。テーマ選定のサポートを始めとして、集中講座やイベントを開催するなど、生徒の学びの場を広げています。なかには生徒の興味・関心に基づいたコースを用意した塾もあるため、主体性や探究心を育みながら学べる環境といえるでしょう。
このような探究学習を提供する塾では、進学対策も行っています。探究学習に基づいた進学対策では、生徒の興味・関心が尊重されるため、進路決定に対する動機が明確になります。
また、総合型選抜などの推薦型の選抜では、課外活動や実績を高く評価されるため、探究活動の経験が有利に働くでしょう。
3.グローバル教育の拡充
英語を用いたグローバル教育も変化を遂げています。その筆頭が英語と各教科を融合した授業である「CLIL」の導入です。CLILには以下の4つの「C」が含まれています。
・「content」:教科科目・学習/テーマの内容
・「cognition」:学習者の思考や学習スキル
・「communication」:学習者のコミュニケーション能力
・「culture」:学習者の文化
CLILは点数による一律的な評価ではなく、学習内容の理解に重点を置いており、思考やコミュニケーション、文化など多面的な要素を含んだ指導方法です。
また、CLILを導入した教室では、英語でのディベートや意見交換も積極的に行われています。これにより、英語の運用能力の向上に加えて、言語の壁に捕らわれない主体性を育成できます。バイリンガルな教育や国際的なキャリアを目指す学生にとって効果的なアプローチといえるでしょう。
塾では、海外大学への進学サポートが強化されています。TOEFLなどの試験対策やエッセイ対策が主ですが、海外進学に特化した塾では入学願書の作成や個別カウンセリングといった手厚いサポートも行っています。
形態は個人レッスンやオンライン、対面などさまざまですが、グループワークやディスカッションで実践的な英語力を身に付けられる塾もあるため、自身に合った塾を選ぶことが大切です。
まとめ
学校は基礎学力や社会性の育成を目標として、幅広い学びを提供しています。特に学習面においては、集団に一律的な学びを提供する点が特徴的です。一方で、塾では個々に合わせた学びを提供しています。受験や進学対策に特化した塾もあり、生徒の目標達成を徹底的にサポートしているといえるでしょう。
こうした塾と学校の目的の違いを理解したうえで、通塾を検討する必要がありますが、両者を効果的に活用することで生徒のさらなる成長が期待できます。個々に合った塾をお探しの方は、ぜひ「オススメ予備校一覧ページ」をご覧ください。