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社会人から医学部を目指すなら学士編入制度-がいい?試験科目や年齢制限は?

社会人から医学部を目指すなら学士編入制度がいい?試験科目や年齢制限は?

「すでに社会に出て働いているけれども、将来のことを考えて医師になりたい」
「社会に出てから医師に助けられた。厳しいとは思うけれど、今からでも彼らのような医療に携わる人間になりたい」
「若いころはお金がなくて医学部に入ることができなかった。でも、社会人として働くことで貯金ができたから、今から医学部に入りたい」

このように考えて、社会人や、あるいは他の学部から医学部を目指す人もいるでしょう。
そんな人にとって、力強い味方となるのが「学士編入」という制度です。

学士編入制度とは

まず、「学士編入制度とは何か」ということについて見ていきましょう。

学士編入制度の概要

学士編入制度とは、「4年制大学を卒業した人が、新しく他学部に入りなおす制度」のことです。
これは医学部だけでなく、看護学部や獣医学部などでも見られる制度です。

学士編入制度は、「前に卒業した学部が畑違いのものであっても受けることができる」という特徴を持っています。
たとえば、医学部とはまったく関係がなさそうに思える経済学部出身の人なども、この学士編入制度によって医学部に編入することができるのです。

本人にやる気さえあれば、「まったく違う職種で働いていた」という人であっても、この学士編入制度を利用することができます。

ただ、学校によっては、「医師免許は取得していないが、歯学部を卒業し、その資格を取っているもの」などのような条件をつけているところもあります。
このあたりはしっかり調べておきましょう。

なお、「(他の学部の)卒業見込み者」もまた、この学士編入制度を利用することが可能です。

学士編入制度のメリットは?

学士編入制度には、入学者側にとっても、未来の医療業界にとっても大きなメリットがあります。

まず、受ける側の立場から見ていきましょう。
学士編入制度を利用した場合は一般的な受験とは異なり、1年後期、2年次前期、2年次後期、あるいは3年次前期から編入が可能です。
多くの実施大学は2年次前期からの編入としています。

つまり、基礎科目の教養課程を学ぶ必要がなく、いきなり専門的な分野から学習を開始することができるのです。
その理由として「学士を取っているのであれば、当然、教養課程は修了しており、求められる基礎的な知識を持っている」と判断されるからです。

医師になるためには、6年制の学科で学ぶ必要があります。
「一度ほかの大学を出てから、改めて医学部に入り直す」ということになれば、ストレートで合格したとしても、医師になるまで非常に長い時間がかかることになります。
そこでこの学士編入制度を使えば、かなりの課程を省略することができ、医師になるまでに必要な時間も、その分短くなるのです。

また、医学業界にも、「幅広い知識を持つ人材を医師に育て上げることができる」というメリットがあります。
医療の知識だけでなく、これまでに培われたさまざまなスキルが、「多様な医師」を世に送り出すことにも役立っています。

実施大学は国公立の方が多い

この非常にユニークな制度を知ったとき、多くの人が「やはり自由度の高い私立の方が多いのだろう」と考えてしまいがちです。

しかし実は、この学士編入制度を利用できる私立大学というのは、決して多くはありません。

2017年度の受験の場合、私立大学で学士編入制度を採用している医学部は、
・岩手医科大学医学部学士編入(3年次)
・東海大学(1年次後期)
・北里大学(2年次)
・金沢医科大学(1年次後期)
・獨協医科大学(1年もしくは2年次)
の5つだけです。

かつては藤田保健衛生大学や愛知医科大学も学士編入制度を導入していたのですが、それぞれ2016年度と2017年度に廃止されています。

対して、国公立大学の場合は、約30校と選択肢が豊富にあります。

このため、「学士編入制度で医学部に入りたい」と考えるのであれば、私立大学よりも国公立大学の方が選びやすいといえるでしょう。

また、「学士編入制度は設けているが、それほど積極的ではない」とする学校もある、と指摘する専門家もいます。
学校選びは、現役のとき以上に大変であり、慎重にやるべきなのかもしれません。

募集人数はどの大学でも5名程度です。
もっとも多いところで、弘前大学が「20名」募集しています。
しかし、北里大学のように「若干名」と募集人数を濁しているところもあります。
いずれにしても非常に狭き門であるといっていいでしょう。

また、なかには、「一定数は地元からとる」としている大学もあります。
このようなところにも、それぞれの大学の考え方の違いが表れています。

医学部学士編入制度の試験科目

さて、ここからは、実際の学士編入制度の受験について見ていきましょう。

まず、「どんな試験科目が課されているのか」を考えていきましょう。

実のところ、どのような試験科目を課すか、ということについては、学校ごとによって異なります。
一次試験が小論文などの筆記試験を課すところが多いですが、なかには書類審査のみのところもあります。

ただ、確実に二次試験で実施されるのが「面接」です。

これは、学士編入制度を採用している医学部において、ほぼ100パーセントの確率で課されるものです。
2018年度の医学部学士編入制度において、面接を課していないところは、私立大学と国立大学を合わせて神戸大学1校のみです。

それ以外のところでは、何らかのかたちで面接試験を設けています。

面接の形式は様々で、個人面接だったり集団面接だったり、両方を設けているところもあります。
プレゼンテーションやグループワークを課す大学もあります。
神戸大学の場合も、「面接」というかたちではなくても、研究発表を伴う口述試験があります。

このような特徴を持つことから、学士編入制度での医学部受験は、「強く医学部を希望し、医師になるという確固たる理念と、尽きせぬ情熱がある人間のみが合格者となる」といわれているのです。
単純に、「筆記試験の成績がよい」というだけでは試験を突破することは難しいでしょう。

「人見知りである」
「緊張しやすい」
「言葉がうまく出てこない」
という人は、学士編入制度での編入を考えているならば、これに対する対策をしっかりと練ることおすすめします。

社会人の場合、就活などで面接を乗り越えてきたと思われますが、そのとき以上にきちんとした対策が求められます。

筆記試験についても見ていきましょう。
筆記試験のときに課される内容はさまざまです。

ただ、そのなかでも、「英語」はほぼ必須科目として挙がってきています。
「英語」というカテゴライズでの試験科目を設けていない大学は、北海道大学・秋田大学・新潟大学・群馬大学・琉球大学の5大学しかありません。

医師になるということはもちろんのこと、社会人からの学士編入制度での編入ということであれば、「英語はできて当たり前」という感覚が強いのでしょう。
現役での受験の場合でも、英語に重点を置いている学校は多いようです。
今や英語は、受験に欠かすことのできない科目になっているといえます。

また、岩手医科大学医学部の場合は「英語」が試験科目に入っていませんが、「学士編入制度が可能なのは、歯科医師免許を持っているものに限る」という条件があります。
もちろん一般教養は問われますし、細胞生物学や解剖学といった専門的な知識も求められるということです。

加えて、「TOEFLで特定の点数以上をとっていなければ、一次試験を突破できない」という制限を設けている学校もあります。
このため、英語はほぼ必須といえるでしょう。
特に、TOEFLの点数を条件として掲げている大学を目指す場合は、早期対策が必要です。

それ以外に多いのは、理系科目(自然科学・生命科学)です。
医師になるための基礎知識として、これを問われることもほぼ必須といえます。
「理系科目(自然科学・生命科学)」「英語」「面接」の組み合わせにしている大学は、非常に多くみられます。

反対に、国語系の能力を求める大学はほとんどありません。
鹿児島大学がかろうじてこれを試験科目に入れているくらいです。

ただ、「小論文」を試験科目に入れているところは比較的多いため、「まったく日本語が扱えない」という人の場合は、もちろん突破は難しいでしょう。

学士編入制度の年齢制限

「何才になっても人は勉強することができる」
「学ぶということに年齢は関係ない」
「人間は、(体力に関係することでなければ)何才になってからでもどんな職業にでも就くことができる」というのは、よくいわれることではあります。

それでは学士編入制度の場合は、「年齢制限」というかたちで、このような考えが断絶されてしまうことがあるのでしょうか。

先述したように、医師になるためには長い勉強期間が必要です。
そのこともあってか、大学のなかには年齢制限を設けている大学もあります。
もっとも、これは決して多くはありません。
2018年に学士編入制度に年齢制限を設けている大学は、唯一獨協医科大学のみ(26才まで)で、ほかの大学は特に年齢制限を設けていません。

医学部の場合、試験を突破することも難しいので、授業も非常に専門的なものになってきます。
それに加えて、国家試験に合格しなければ医師になることができないという問題もあります。

このため、早めに受験をしておいた方がよいでしょう。
年齢を重ねれば重ねるほど集中力はなくなっていきますので、知識の吸収力も落ちていくのが一般的だからです。

受験にいたるまでのプロセスが大事になる

最後に知っておいてほしいのは、「学士編入制度を利用して医学部に入るには、高い学力レベルが求められる」ということです。

国公立の医学部に入ろうとする場合、偏差値は70以上が求められます。
これは最難関として知られている、東京大学の理科一類並みかそれ以上の数値が必要です。
学士編入制度は、それよりも科目数が少ないため若干勉強はしやすくなるといわれていますが、それでも、「最難関」であることは間違いありません。

特に、
「学生時代は理系だった」
「海外に住んでおり、そこで専門的な研究をしていた。英語は専門分野を論じることができるほど達者だ」
「そもそも医学関係の仕事についていた」
というようなアドバンテージがまったくない、という人は非常に厳しくなるでしょう。
文系出身の場合は、慣れていない理数系の科目を勉強していかなければならないという難しさもあります。

学士編入制度で私立の医学部に目指す場合には、勉強に打ち込むための環境に変えなければならない、と指摘する専門家もいます。
社会人の場合、「仕事をしながらお金を貯めつつ、学士編入制度で医学部の入学を目指す」という人も多いかと思われます。

しかし、「仕事をしながらの勉強では追いつかない」と考えた方がいいでしょう。
もし仕事をしながら学士編入試験を受けるなら、隙間時間をうまく使いながら効率的に勉強することを心がけましょう。

もちろん、「独学でやっても、絶対に合格しない」とまで断言することはできません。
ただ、時間のないなかで、最難関の学校に学士編入制度で入ろうとするのであれば、やはり、予備校などの力を借りた方がよいでしょう。
現在は、「医学部専門の予備校」などもありますから、このあたりに頼ることも視野に入れてみてください。

しかしこれらの予備校は、講師陣もハイレベルであるため、学費が非常に高いことも特徴です。
入学金や教材費用だけでも40万円近く、そして毎月の受講料が20万円を超えるというケースもあります。
加えて、ホームページでは費用を明らかにしていないところも多いので、問い合わせも必要です。

受験にいたるまでに、いかに効率よく良い指導者を選び、真剣に向き合って勉強していくかが、合格できるかのキーとなってきます。

学士編入制度を志す場合、「学校に入学した後の入学金」を貯めることも重要ですが、「予備校に通うための費用」もしっかり確保しておかなければなりません。

医学部への学士編入制度は、特殊な制度ではありますが、なかなか一筋縄ではいかないものでもあります。

しかし意外なほどに「年齢制限」は厳しくありません。
そのため、一心不乱に努力をし、勉強をしていけば、だれの前にでも「医師になる道」は開かれています。
あとは、受験日までにどれくらい勉強時間を確保できるか、どれくらいの知識を蓄えられるかにかかっているのです。

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