高校2年生でセンター試験プレテストを受験。そのメリットは?
「受験対策」といっても、そこには数多くの種類があります。
「センター試験プレテスト」もそのうちの一つです。
今回はこの「センター試験プレテスト」の概要と、それを受けるメリットや受け方について紹介していきます。
センター試験プレテスト(試行調査)とは?
センター試験プレテストは、独立行政法人入試センターが実施しているものです。
これは少し特徴のあるテストなので、まずはセンター試験プレテストの目的や実施の背景について見ていきましょう。
センター試験プレテスト(試行調査)の目的・背景
センター試験プレテストは、大学センター試験に代わるテストとして検討されている「大学入学共通テスト」の導入に向けた試行調査のためのテストです。
現在の「センター試験」は、2020年(2021年の1月に実施されるもの)には「大学入学共通テスト」に代わるとされています。
まだその情報は出きってはいませんが、現在行われている「センター試験」は2019年(2020年の1月に実施されるもの)で終わり、翌年からは新しいテスト形態になることが決まっています。
試験日程こそ変わらないものの、従来のセンター試験では見られなかった「記述式」による解答が求められたり、英語では「話す・聞く・読む・書く」の4段階での解答が求められたりするなど、その問題傾向・解答方法は大きく変わります。
2020年~2023年は現在のやり方で学習してきた学生が受験し、それ以降は新しい学習要領で学んだ生徒が受験することになるため、ここでまた制度が変わると考えられています。
センター試験プレテストは、このような「新しい大学入試制度」をつくりあげていくために行われるものです。
受験生にとっては力試しのよい機会になりますが、問題を作る側においても、「設問ごとによる正答率はどれくらいなのか」「正答数はどのように分布しているか」「問題文の提示は適切かどうか」などを知るための資料ともなります。
センター試験は、さまざまな変更を加えつつも、1990年から行われてきたものです。
これが終わりを迎えるということで、大学受験自体も大きく様変わりすることが予想されます。
30年ぶりとなる新しい試験の導入は、受験生にも大学側にも国側も、大きな変化をもたらすことでしょう。
センター試験プレテスト(試行調査)の概要
センター試験プレテストの場合、「大学入学共通テストのたたき台」という特性を持っています。
そのため、これを受けたからといって、ここで出てくる問題がそのまま新しい大学入学共通テストの試験問題として採用されるとは限りません。
あくまで、「独立行政法人大学入試センターが、大学入学共通テストを作るために実施するための試験である」と考えておくべきでしょう。
ただ、実際にはどのような雰囲気で試験が行われるのかといったことを知るためにも、センター試験プレテストを受けることは非常に有用です。
高校3年生を対象として行われるのが基本ですが、高校2年生でも受けることができます。
たとえば、国語や数学ⅠAなどがこの対象となります。
対して、世界史や数学ⅡBなどについては、高校2年生の段階では原則として受けることができません。
後述で詳しく紹介します。
ちなみに、平成29年のセンター試験プレテストは11月13日~24日の期間で各高校で実施。
さらに、期間中であればセンター試験プレテスト実施日を各高校が任意で設定できるようになっていました。
試験監督に立つのも実施した高校の教職員であったため、普段の学校のテストと似たような状況で受けることができたと考えられます。
ただし、これは年度によって異なります。
平成29年では上記のような状況で行われましたが、平成30年度の場合は、実施会場は大学入試センター試験の全会場を対象としており、試験監督も大学の教職員が務めるという計画が立てられています。
また、日時も、11月10日~11日と設定されています。
センター試験プレテストの内容について
さて、この「センター試験プレテスト」ですが、これはどのような問題になっているのでしょうか。
まず、先にも述べたように、センター試験プレテストは「2年生のときに受けられるもの」と「3年生のときに受けられるもの」に分けられます。
平成30年のセンター試験プレテストの概要はまだ「計画」となっていますから、ここでは平成29年のデータから見ていきましょう。
平成29年と平成30年、そして今後のセンター試験プレテストのやり方は大きく変化していく可能性も充分にありますから、「自分が受けるときのセンター試験プレテストの概要」をしっかり調べておくことは重要です。
平成29年の11月に実施されたセンター試験プレテストでは、
・2年生が受けられるのは、国語と数学ⅠAまで
・3年生は、これに加えて、世界史B・地理B・日本史B・現代社会・数学ⅡB・物理・化学・生物・地学の試験を受けられる
とされていました。
試験時間は、国語は100分、数学ⅠAは70分、それ以外は60分ということになっていました。
国語
国語では、下記のようなものが問題として出題され、検証されました。
・論理的、あるいは文学的、もしくは実用的な、近代以降の文章
・古文や漢文を含む古典
与えられた言語や情報をさまざまな角度から解釈して、文章を記述していくことが求められていました。
また、それぞれの分野を個別に分けて考えるのではなく、総合的な思考力を試される問題も出題されました。
センター試験というと「マークシート」の印象も強いかと思われますが、国語のセンター試験プレテストでは記述式の問題も出されます。
文字数は20文字~120文字とばらつきがありますが、「短い文字数で簡潔にまとめる技術」も求められているといえるでしょう。
数学
2年生が受けられるのは、数学ⅠAまでです。
持っている知識(数式や表の読解など)を利用して、段階的に問題を解いていくことが求められました。
また、平成29年のセンター試験プレテストにおいては、「日常におきる事象を、数学によって読み解いていくこと」を意識した問題も出されました。
現在の数学においては、「知らないことを、知っていることで解決に導くこと」を主題とした問題が出題されることもあります。
なお、このときは、数学Ⅰで記述式の問題が見られました。
地理・歴史・公民
地理においては、その地域の地域性を求めたり、地域の移り変わりについて尋ねたりする問題が採用されました。
地理は、単純に「問題を読み解く」だけでなく、「将来的にどのようにしていくか」の「構想」の分野も求められます。
「歴史」も似たような傾向があります。
単純に「覚える学問」ではなく、「その歴史の事実にどのような背景があったのか」「どのような意味があったのか」を問う傾向が強く見られました。
公民についても、「現代社会における課題点」「人はどのようにして生きるか」などが問われています。
もちろん、問題文や資料を読み解く力は必要ですが、概念や理論を活用して正答を導くことが期待されているのです。
「座学としての勉強」だけでなく、「その知識からどんなことが読み取れるか」を問う問題は、数学などにもよく見られます。
理科
理科では「過程」を重要視して、「どうしてその結果にいきつくのか」などを求めます。
センター試験ではありますが、受験生が知らない問題が出されたり、与えられた情報を分析したりする力が求められます。
「理数系」と言われますが、理科の問題を解くためには、ある程度数的な処理の方法を知っている必要があるといえるでしょう。
英語
もはや、どこの大学を受ける場合でもほとんど必須ともなる科目。
それが「英語」です。
国際化する社会においては、英語力は単純に「読む力・書く力」だけを身につけるのでは力不足です。
そのため、「聞く力(リスニング)」を重要視した問題も出されています。
また、情報を整理したり、文章をまとめたりする力も同時に求められています。
それだけではなく、「議論」を耳にして「何が論じられているか」などを正確に聞き取る力も問われていました。
※英語のみ、センター試験プレテストの日程が2月になっていました。
高校2年生でプレテストを受験するメリット
高校2年生で受けられるセンター試験プレテストは、受験科目において制限が出ます。
しかし、センター試験プレテストを受けておくことは、非常に大きな意味があります。
まず、センター試験プレテストを受けることによって、自分の苦手分野が分かります。
高校2年生のときでもすでに「受験」に焦点を当てている人もいるかもしれませんが、「学校で実施されている期末テストや中間テスト」しか受けたことがない、という人もいるでしょう。
これらのテストは、「つい最近習った部分からの出題」であるため、「今まで習ってきた分野」と隔絶されてしまっているテストであることもあります。 しかしセンター試験プレテストでは、まんべんなくさまざまな分野から出題されます。
そのため、「自分が苦手な分野」がわかりやすいのです。
自分が苦手な分野が分かれば、それに対する対策も講じやすくなります。
また逆に、点数を多くとれた分野は自信になるでしょう。
さらに、高校2年生でセンター試験プレテストを受けておくと、「苦手なことを克服するだけの時間」を十分に確保できるというメリットがあります。
センター試験プレテストは通常10月もしくは11月に実施されます。
高校3年生で受けた場合、センター試験本番までは2~3か月しか残されていません。
しかし高校2年生で受けた場合は、単純計算で、1年以上の時間があることになります。
もちろん受けられる受験科目には制限がありますが、それでも、「国語」「数学IA」の苦手分野を把握し、それの克服に早くから努められることには大きな意味があります。
センター試験当日にも予備校でプレテストを実施
さて、このようにして行われているセンター試験プレテストですが、各予備校でもセンター試験のプレテストを行っています。
センター試験で出される問題は、応用問題はあるにせよ、基本的には「2年生までで学んだこと」から出題されます。
全問題のうちの80パーセント程度が、「2年生までに履修した学習分野からの出題」だといわれています。
このため、2年生までの勉強を完全に理解しているのであれば、高校2年生の段階で80パーセント程度の正答率をマークできる、というわけです。
この「各予備校が行うプレテスト」は、それぞれの予備校で実施日時などが異なります。
ただ、なかには、「本番のセンター試験と同じ日程で実施する」というところもあります。
本番さながらに、現在本番のセンター試験を受けている先輩たちと似た環境でプレテストを受けられるため、予行練習として非常に大きな意味を持ちます。
模擬試験と本番は違うという考えもありますが、それでも回数を重ねることで「緊張」は薄れていくことでしょう。
このような「模試」は数多くありますが、センター試験の模試は、あらゆる模試のなかでもっとも有意義なもののうちの一つだといえるでしょう。
独立行政法人大学入試センターが音頭をとって行うセンター試験プレテストも、予備校で行われるプレテストも、「早い段階で問題点・苦手点を洗い出し、それを克服するために動きやすくなること」というメリットを持っています。
模試は、その結果に一喜一憂するために行うものではなく、問題点を見つけ、それの克服に取り組むために行うものなのです。
たとえば、「現代文は得意だけれど、古文の読み取りが苦手。それは、そもそも古文における語彙力(ボキャブラリー)が足りないから。語彙力が足りないから、文章が読み解けない」ということであれば、古文に触れて、古文独自の言い回しや語彙を1年かけて学んだり増やしたりすることが求められるでしょう。
これに大きく時間を割かなければならないようであるのならば、今後の学習計画を見直したり、新たに計画を立て直したりすることが求められるかもしれません。
このプレテストで出た結果を元に、学校の先生や予備校の先生、そして家族と話し合って、よりよい学習計画を組み立てていきましょう。
1年半後の合格発表の時に笑うために、プレテストはあるのだと考えるとよいでしょう。