大学の受験倍率は合否に関係しない?併願校選びと受験対策のコツ
大学受験では倍率が公開されています。この倍率がどの程度合否に影響するのかを知り、志望校選びや受験対策の参考にしてみましょう。この記事では、大学の受験倍率の種類や一般的な倍率、倍率以外の大学の選び方や倍率が高い大学を志望する際のポイントを解説します。
大学受験の倍率が低い=合格できるではない
大学受験の倍率の高低は、合格しやすいことと直接関係ありません。ここでは、大学受験の倍率について見ていきましょう。
倍率○倍は「○人に1人合格する」の意味
大学受験の倍率は、受験競争率の指標として使われています。例えば、募集人員50人の大学に250人が出願した場合の倍率は5倍で、計算上は5人に1人が合格できます。つまり、倍率が高いほど不合格者が増えるということです。また、同じ大学でも一般受験の前期と後期、受験方式、各学科で倍率は異なります。
志願倍率と実質倍率の違い
大学受験の倍率には、以下のようにいくつか言い方があります。
・志願倍率=志願者数÷募集人員
・実質倍率=受験者数÷合格者数
志願倍率とは、受験者の数に対して募集人数がどれだけの割合であるかを示す指標です。
具体的には、ある試験や選考においての募集人数を受験者数で割った値が志願倍率となります。志願倍率が高いほど競争率が激しくなり、受験者の合格難易度が高くなります。志願倍率が低い場合は相対的に合格しやすい傾向にあります。
実質倍率とは、募集人数を志願者数で割った値を指し、通常の倍率とは異なる指標です。実質倍率は、一般的な倍率に加えて、選考試験や合格基準などの条件を考慮した上で算出されます。例えば、ある試験の倍率が10倍であっても、実際に合格可能な受験者数が募集人数よりも少ない場合、実質倍率は10倍よりも低くなります
大学は、併願受験ができるため、志願したからといって必ず受験するとは限りません。一般的に受験者数は、志願者数よりも少なくなるため、実質倍率よりも志願倍率のほうが高くなる傾向があります。
国公立大学入学者選抜の2次試験における倍率
文部科学省がまとめた「令和5年度国公立大学入学者選抜確定志願状況」によると、2023年度の国公立大学の確定志願倍率は、前期日程が2.9倍、後期日程が10.0倍です。
同調査では、大学ごとに志願倍率を公開しています。例えば、東京大学と京都大学の倍率は、以下の通りです。
・東京大学:3.1倍
・京都大学:3.0倍
なかには、志願倍率が10倍を超える大学もあります。そのため、倍率を見る限りでは、最難関の東京大学や京都大学でも競争率が極端に高いとはいえません。また、志願倍率が1倍を下回る場合は、出願した人数よりも募集人員のほうが多くなっています。定員より入学を希望する人が少なければ、受かりやすいと思うかもしれませんが、合格基準に満たなければ合格できません。
そこで、大学受験では、一定の学力を満たしたうえで倍率を参考情報にします。
偏差値も考慮が必要
大学受験では、学力の目安として入試の志願倍率に加えて偏差値も考慮します。入試や模試の出題内容は、同じにならないため、その都度、平均点が高くなったり低くなったりします。偏差値は、グループ全体における点数のバラつきを評価するものであるため、受ける試験ごとに変化するのが特徴です。偏差値は、以下の計算式で平均点が50、標準偏差が10になるように調整して求めます。
・偏差値=(個人の得点-平均点)÷標準偏差×10+50
偏差値の計算式では、個人の得点と平均点の差を計算に使っています。つまり、偏差値を用いると平均点が異なる問題であっても成績の比較ができるようになるのです。また、同じ偏差値の模試があったとして、多くの人が平均点に近い状況の場合と、受験者の得点差が大きい場合とでは試験に対する心構えが異なります。
このような得点のばらつきは、標準偏差で示されます。得点のばらつきが大きければ標準偏差の値は大きく、得点のばらつきが小さければ標準偏差も小さくなります。つまり、受験に向けて模試を受ける際は、倍率と偏差値の両方を知る必要があります。また、偏差値は試験の受験者層によって異なるため、たとえ校内テストで偏差値が高くても模試で同じとは限りません。
客観的な学力の指標として偏差値を活用する場合には、同じ志望校を目指す人が多く受験する模試の偏差値を知ることが重要です。また、同じ模試を定期的に受けることで、学力の上下や得意科目、苦手科目の把握にも役立ちます。
倍率以外の大学選びのコツ
大学の志望校を決める際は、今までの志願倍率情報だけでなく以下の観点に注意が必要です。
併願校とのバランス
併願校は、倍率や偏差値を踏まえて、挑戦校・実力相応校・安全校に分けて3~4校程度に絞るのが一般的です。また、本命校を中心に受験科目や入試傾向、スケジュールが負担にならないよう調整する必要があります。もし、複数回受験をする場合は、共通テストを利用した受験も検討してみましょう。
なかには、募集定員よりも多く合格者を出す大学もあるため、倍率が意外に低くなっていることがあります。同じ偏差値の大学でも、倍率が高いほど受験へのリスクは高くなるため、A校かB校かで迷った場合は、過去の実質倍率を参考にすることも一案です。
カリキュラムや研究内容
将来、就職したい職業や興味のある学習テーマを扱っている研究室の情報は、志望大学選びに役立ちます。ただし、「どのようなことに興味があるのか」については十分に自己分析してください。例えば、「英語に興味がある」といっても、「英語という言語を研究したいのか」「英語を用いて国際教養や専門知識を学びたいのか」などによっても目指す大学の内容が異なります。
もし、語学力を高めたい場合には、四年制大学への編入を目指してアメリカのコミュニティカレッジで学ぶ方法も選択肢の一つです。教育機関として認定された学校・プログラムであれば、編入後の大学の卒業単位として認定される場合があります。志望校の選定では、学部や学科の名前だけで決めるのではなく、さまざまな内容を確かめておくことが必要です。
立地・環境・通学時間
大学のWebサイトなどでも多くの情報を調べることができますが、実際に足を運んで気がつくこともあります。そのため、大学の公開講座に参加したり、学祭に行ってみたりして雰囲気を知ることが大切です。遠方で足を運びにくい場合は、まず動画コンテンツを探してみましょう。
学費・進路相談の体制
学費や諸経費、交通費など金銭面は、保護者との確認が欠かせません。就職を見据えて受講できる講義の幅広さや就職率の高さ、バックアップ体制などを確認しましょう。
倍率が高い大学を受験する際の心構え
もし、受験する大学の倍率が高い場合は、合格点が高くなる傾向があります。こでは、大学受験で志望校の倍率が高い場合に気をつけたいことを紹介します。
苦手分野は徹底的に対策する
志願倍率が高い理由が「合格点に満たない層なのか」「合格点を超える層なのか」は、わかりません。まずは、学力を高める必要があるため、苦手分野をしっかりと対策しましょう。苦手分野の対策は、以下のように原因ごとにやるべき内容が異なります。
・苦手意識がある→基礎問題まで戻って解く、なぜ苦手なのか自己分析をする
・どこから問題に手をつければいいのかわからない→問題を解くコツやノウハウを探す
・暗記が苦手→関連付けや覚えることの用途や目的を確認するなどして覚え方を工夫する
・得意科目だと油断して対策が遅れた→基本問題に立ち返る
確実に8割得点できる状況を目指す
倍率が高い場合は、特に合格最低点を意識しましょう。大学受験で合格するには、とにかく勉強をして、合格点以上を取らなければなりません。勉強内容は幅広いですが、満点を目指して勉強する姿勢が必要です。大学の入試問題は、難問が含まれることが多く満点が取れないケースも少なくありません。
過去問の演習をする際は、まったくわからない問題にこだわるのではなく、実力的に得点できる問題を確実に解答できるように対策して、入試当日に8割得点できるように学習を進めましょう。
受験当日はケアレスミスに注意
もし、合格する層が多く受験する場合は、受験者同士の得点差がつきにくく、合格点が高くなる傾向があります。そのため、試験中はケアレスミスを絶対にしないように注意しながら落ち着いて問題を解いてください。一つのミスで合否が分かれてしまう可能性があります。
日ごろから誤答を見過ごさないように注意する習慣を身につけましょう。
倍率の高い大学を目指す際の高校1年~3年の勉強のコツ
将来、難関と呼ばれる大学を目指そうと考えている人に向けて、高校1年生~3年生でどのような勉強をすればいいのか、学年別に解説をします。
高校1年生の時の勉強のコツ
高校1年生の勉強のコツとしては、以下のポイントに注意することです。
- ①基礎学力の確立を重視しましょう。授業に真剣に取り組み、基本的な学習習慣を身につけることが大切です。
- ②学習計画を立てて、時間を有効活用しましょう。予習や復習をしっかり行い、理解を深めることが重要です。
- ③定期的な自己チェックを行いましょう。定期テストやクイズなどを活用して自分の理解度を確認し、不明点や弱点を把握しましょう。
- ④興味関心のある分野にも積極的に取り組みましょう。自分が好きなことに情熱を注ぐことで、学習へのモチベーションが高まります。
- ⑤健康的な生活習慣を心がけましょう。十分な睡眠やバランスの取れた食事、適度な運動は学習効果にも影響を与えます。
高校1年生の段階ではまだ具体的な受験対策は必要ありませんが、基礎学力の確立や学習習慣の形成は将来の受験に大きな影響を与えます。一つずつ基礎を固めながら、興味を持ちながら学び続けることが重要です。自分の進路に向けて着実にステップを進めていきましょう。
高校2年生の時の勉強のコツ
高校2年生の勉強のコツとしては、以下のポイントに注意することです。
①高校の授業やクラブ活動を有効に活用し、幅広い知識や経験を積みましょう。授業内容を深く理解し、必要な知識を習得しましょう。
②授業や自主学習の内容を復習し、理解を深めることが大切です。定期的に復習テストや問題演習を行い、知識を定着させましょう。
③問題解決や論理的な思考を鍛えるために、数学や英語の問題演習に時間を割きましょう。論理的思考は難関大学受験において重要な要素です。
④高校の教科書だけでなく、参考書やインターネットなどの学習資源を活用しましょう。自分の苦手分野や興味のある分野に特化して学習することも重要です。
⑤毎日の学習スケジュールを立て、計画的に勉強時間を確保しましょう。時間の使い方を工夫し、効率的に学習できる環境を整えましょう。
⑥高校生活は忙しくストレスも溜まりやすいですが、十分な睡眠や適度な運動、リラックスする時間を確保しましょう。健康な状態で学習に取り組むことが大切です。
これらのポイントを意識しながら、高校2年生の段階でさらなる成長を目指しましょう。自分自身の学習方法や効果的な勉強スタイルを見つけて、自己成長を遂げるために取り組んでください。
高校3年生の時の勉強のコツ
高校3年生の勉強のコツとしては、以下のポイントに注意することです。
①高校の授業内容を復習し、演習問題を解くことで基礎力を強化しましょう。定期的な模試や過去問の解答も重要です。
②各大学の入試傾向を把握し、対策を立てましょう。過去問題の解析や志望校別の対策書を利用し、重点的に学習しましょう。
③時間の使い方を工夫し、集中して学習することが重要です。短時間でも質の高い勉強を行いましょう。
④定期的な模擬試験を受けることで、本番の雰囲気に慣れることができます。間違えた問題や苦手な分野を重点的に復習しましょう。
⑤ 論述式の問題に慣れるために、論文やエッセイの執筆を練習しましょう。論理的な思考や文章力の向上が求められます。
⑥忙しい受験勉強の中でも、十分な睡眠と休息を取ることが重要です。疲労が溜まると集中力が低下するため、バランスの取れた生活を心掛けましょう。
高校3年生にもなると、受験本番までもうまもなくです。そのため、より本番に近い形(模試など)での学習機会を増やしていきましょう。
大学受験の倍率情報は志望校対策に役立つ
大学受験の倍率には、志願倍率と実質倍率があります。単純に「倍率が低ければ受かりやすい」とは言い切れません。また、倍率が高い場合には、得点差がつきにくく合格点が高くなるという傾向を踏まえて、1点の獲得を大切にする受験対策が重要です。偏差値とともに倍率の考え方を知り、志望校選びの参考にしてみてはいかがでしょうか。