これから大学受験の準備を始める人のための英語の勉強法
高校2年生または高校3年生になっても大学受験の準備をしていない人はいます。高校を卒業したら就職しようと考えていたところ、急に大学に行きたくなった場合は、何から手をつけたらよいのかわからないのではないでしょうか。
急遽、大学を目指すことになった受験生は、英語の勉強法を工夫してください。英語の学力は、長い時間をかけて基礎をつくり、そこから応用問題に挑戦して上げていくものです。しかし、高2、3生がこれから受験勉強を始める場合、効率化を最優先に考える必要があります。
高3生が4月から勉強を始めてレベルの高い大学に挑戦することは無謀か
この記事では、高3の4月から受験勉強を始めて、11ヵ月後の2月に入試を受ける、との想定で解説していきます。また、狙うのは、レベルの高い大学とします。
少子化の影響で受験生が減ったことで、大学のレベルを考えなければ、それほど一生懸命勉強しなくても大学に入学できるようになりました。大学のレベルにこだわらない受験生は、ここで紹介するようなハードな勉強をする必要がないかもしれません。しかし、少しでもレベルが高い大学を狙っている人は、ライバルに追いつき追い越すために、より効率的でよりハードな勉強が必要になります。
正味の実力を知ろう
これまで大学受験に備えてこなかった高3生は、次の2タイプにわかれます。
Aタイプ:大学受験は意識してこなかったが、英語はコツコツ勉強していた
Bタイプ:英語の勉強をサボってきた
Aタイプの受験生は、半月くらい集中して入試英語に取り組むことで「受験モード」に入ることができます。そのためAタイプの人は、平常心で勉強を進めてください。
Bタイプの受験生は、強い危機感を持ってください。これまで英語の勉強をサボってきた人が、急に入試英語に取り組んでもまったく歯が立たないでしょう。半月くらい英語の勉強に集中しても、恐らく学力が上がったと感じることはないでしょう。
直近の模試を受けよう
Bタイプの受験生は、まずは「今の自分の正味の英語力」を測定してください。直近の模試は必ず受けてください。そこで「落ち込む」経験を済ませておいてください。落ち込むことは、「このままではまずい」という危機感を生みます。そして危機感は「勉強しなければならない」「遊んでいられない」というモチベーションをつくります。そして何より、一度落ち込んでおけば、あとは全速力で走り抜くことができます。
2~3ランク上の大学を目指そう
模試を受けて「今の自分の本当の英語力」がわかれば、志望大学も大体定まってくるはずです。ただこのとき、「今の自分の本当の実力」より2~3ランク上の大学を目標にしましょう。なぜなら、11ヵ月で驚異的に偏差値を上げることは不可能ではないからです。
10代後半は、人生で最も強く集中力を発揮できる時期です。そして、長時間勉強すると気持ちがよくなる「スタディ・ハイ」状態をつくることもできます。スタディ・ハイ状態になると、学ぶことが面白くなって、勉強を続けたくて寝たくなくなります。そして、勉強したことが面白いように脳のなかに吸収されていきます。2~3ランク上の大学に入ることは不可能ではありません。
今の実力より2~3ランク上の大学を目指す狙いはもうひとつあります。それは「飢餓感」が生まれることです。現在の実力より1ランク上の大学に入る偏差値は、案外簡単に獲得できることがあります。例えば、当初偏差値40程度だった受験生が、偏差値50まで上げれば、1ランク上の大学が射程内に入ります。
そのとき「悪い達成感」が得られてしまいます。短期間で偏差値を1ランク上げたことに油断してしまい、そこから学習意欲が落ちてしまい、それにともなって学力も落ちてしまうのです。
受験勉強では、常に「まだまだだ」という飢餓感が重要になってきます。そのため、あまり早く達成感を持たないほうがよいでしょう。できれば、目標を2~3ランク上の大学に置きましょう。
中1~高2までの英単語を丸暗記しよう
高3生になって初めて受験勉強を始める人は、まずは中1から高2までに習う英単語をすべて丸暗記してください。
5冊の教科書の巻末の英単語をすべて覚える
中1、2、3、高1、2の5冊の英語の教科書を用意してください。教科書の巻末には、教科書内で使われている英単語がすべて載っているので、その意味を完全に覚えてください。英単語の意味を覚えたら、意味(日本語)をノートに書き出していってください。そして、教科書を閉じて、ノートの日本語の横に英単語を書き出していってください。これを半月(15日)ほど繰り返して、中1~高2の英単語をすべて覚えてください。
これだけは例外
「受験英語の勉強では丸暗記をしてはならない」と聞いたことがあると思います。このアドバイスは間違っていません。入試の英語のテストは丸暗記で対応できるものではありません。
しかし、中1~高2で習う英単語だけは例外です。これだけは丸暗記しておかないと、英語の勉強が進みません。
これから受験勉強を始める高3生は、効率的に進めていかないと、とても翌年の2月の入試に間に合いません。中1~高2英単語丸暗記は、九九のようなものです。九九を覚えていない状態で数学の問題を解くことを想像してみてください。4×6を計算するのに、毎回4+4+4+4+4+4を計算しなければなりません。
九九を覚えていないと、難しい数学の問題を解けないのと同じように、中1~高2の英単語を暗記していないと入試の英語の試験問題は解けません。中1~高2の英単語をみてすべて日本語にして、その日本語だけをみてすべて英単語に戻せたとき、目標を達成したことになります。
英単語を覚える意義
基礎的な英単語を覚えていないと何が起きるのか、みてみましょう。
以下の英文は、ある大学の入試に出題された英語長文の一文です。
Relearning the art of seeing the world around us is quite simple, although it takes practice and requires breaking some bad habits.
この英文を理解しようとするときに、relearningとquiteとalthoughとpracticeとrequireとhabitを、すべて英和辞典で調べていたら、全体の意味を取ることも、構文をつかむこともできないでしょう。
入試の英語の試験では、このような英文を「日本語に訳せ」と出題されるかもしれません。または、「bad habitsは何か、日本語で具体的に説明せよ」と問われるかもしれません。
そもそもhabitがわからなければ、英語長文のなかからhabitを説明している箇所を探すことはできません。
入試の出題者は「受験生はrelearningとquiteとalthoughとpracticeとrequireとhabitくらいの意味は知っている」という前提で問題をつくります。中1~高2の英単語を覚えていないと、英語の勉強のスタートラインに立つことすらできないのです。
暗記する作業はとてもつらいものですが、中1~高2の英単語だけは、あきらめて丸暗記してみてください。これを乗り切れるかどうかでそれ以降の受験英語の勉強の行方が決まるといっても過言ではありません。その代わり、中1~高2の英単語を完璧に頭に入れてしまえば、英語の学力は加速度的に向上していきます。
ちなみに先ほどの英文は次のように訳すことができます。「自分の身の回りの世界を探る技術をもう一度学ぶことは、多少の訓練を積んで、悪習慣をあらためる必要はあるが、とても簡単だ。」
あせりは禁物
高3生から受験勉強を始める人は、あせらないでください。なぜなら、あせりは効率化を妨げるからです。急ぐこととあせることは別物です。長く勉強することとあせることも別物です。高3生から受験勉強を始める人は、急いで勉強しなければなりませんし、誰よりも長時間勉強しなければなりません。
それでもあせらないようにしてください。「やってはいけないあせり」を紹介します。
基礎的な英単語の丸暗記を飛ばすあせりは禁物
前章で、中1~高2の英単語の丸暗記を最初に取り組むようアドバイスしました。さらに、その作業を半月(15日)ほどで終わらせたほうがよい、とも解説しました。しかし、もし半月で覚えきれなかったら、先に進まず引き続き中1~高2英単語の丸暗記に取り組んでください。
このとき「半月でやるべき勉強をこなせなかった」とあせる必要はありません。冷静に効率よく暗記する方法を考えたり、勉強時間を増やしたりして、初期の目標を達成してください。
学力が上がらないことによるあせりは禁物
高3の4月から受験勉強を始めて、毎日10時間勉強しても、夏休み前に成績が上がることはないでしょう。そのときあせらないようにしてください。あせらず同じペースで勉強を続けることでしか、成績を上げる道はありません。
高3生から受験勉強を始めた人の成績は、簡単には上がりません。なぜなら、高3生向けの模試は、長年受験勉強をしてきた高3生向けにつくられているからです。高3生から受験勉強を始めた人が1日10時間の勉強を数ヵ月続けても、夏休み前ならせいぜい高2生くらいの学力しか身につかないはずです。それでは高3生向けの模試で好成績を残せるはずがありません。
しかし、高2生の学力を身につけなければ、いつまで経っても高3生向けの模試で太刀打ちできません。
高3生から受験勉強を始めた人は、ライバルは高1のころから受験勉強に備えてきたことを忘れないでください。しかも高1のころから受験勉強をしてきたライバルたちも、高3生になった今、10時間勉強を継続しています。彼らの高パフォーマンスにあせることなく、自分の足元を固めるようにしてください。
睡眠時間を削るあせりは禁物
成績が上がらないからといって、睡眠時間を削ってまで勉強することのないようにしてください。睡眠時間は、1日8時間はとりましょう。眠たい目をこすりながら勉強をしても、頭に入ってきません。また、寝不足の状態で授業を受けたり自習をしたりしても、記憶に定着しません。
睡眠時間を削るのではなく、遊びの時間やリラックスタイムといった無駄な時間を削るようにしてください。ただし、スタディ・ハイに入ったら、多少睡眠時間を削ってもよいでしょう。
記憶した英単語の数が一定数を上回ると、面白いほど英語長文が読めるようになります。そして「英語長文が読める」と感じられるようになると、初見の英単語が出てきても「これって、こういう意味じゃないか」と推測できるようになります。そして、その推測は大体当たっています。
例えば夜11時に、突如この「ゾーン」に入ったら、そのときは気兼ねなく午前2時でも3時でも、なんなら朝まで勉強しても構いません。その代わり、翌日は眠気がとれるまでしっかり寝てください。
1問の英語長文を3時間かけて解く
自分を信じて、あせらずコツコツ英語を勉強していれば、10月ごろにはレベルの高い大学の背中がみえてくるでしょう。ようやく高1から勉強してきたライバルたちに追いついた状態です。
しかし、この状態になっても、高3から「受験勉強」を始めた人は地道な勉強法を続けてください。例えば、10月になればそろそろ過去問にとりかからなければなりません。もし、第1志望大学の過去問の英語長文読解をまったく解くことができなかったら、その1本の英語長文の復習に3時間かけてみましょう。
英語長文をすべて日本語に訳してみてください。暗記できていない英単語は「このとき」暗記してしまってください。その英単語はいずれ暗記しなければならないものだからです。日本語に訳したら、その日本語だけをみて英作文をしてみてください。そうです。中1~高2英単語の丸暗記をしたときと同じように、地道な和訳=英訳法を行うわけです。
過去問の英語長文問題では、英文の全文が設問に使われているわけではありません。しかし、英文をサラサラ読める力がないと、英語長文読解は自信をもって解くことができません。そして、英文をサラサラ読めるようになると、英語を聴き取る力もアップします。これは偶然ではなく、人の聴力は、知っていると聴き取ることができ、知らないと聴き取れないことがあります。
1問の英語長文を3時間かけて解くと、「たった1問に時間を使いすぎた」とあせってしまうかもしれません。しかし、あせる必要はありません。なぜなら、英語の学力はときに、1問の英語長文を3時間かけて解くことでしか上がらないことがあるからです。
応用に行ったり、基礎に戻ったりしよう
高3から受験勉強を始めた人が応用問題に詰まったら、基礎に立ち返りましょう。そして基礎問題に慣れたら、またすぐに応用問題に戻りましょう。応用に行ったり基礎に戻ったりを繰り返してください。
高3から受験勉強を始めた人の場合、「基礎はもう押さえた」と思っても、抜けている項目が必ずあります。効率性を重視して勉強するので、どうしてもいくつかの項目を飛ばしてしまうのです。
高1から受験勉強をしている人は、驚くほどそういった「穴」がありません。完全に覚えていなくても、なんとなく知っていたということが多く、簡単に乗り越えていきます。
しかし、高3から受験勉強を始めた人の場合、飛ばしてしまった項目は、まったく心当たりがない状態になっています。そのときは、参考書で確認したり、放課後、職員室に行って英語の先生に尋ねたりしなければなりません。
まとめ
高3から受験勉強を始める人は、大きなハンデを背負っていると自覚してください。高2からスタートしても、遅いくらいです。徹底的に効率化に努めると同時に、「知らないものは仕方がない、時間をかけて覚えよう」と開き直ってください。確実に1歩1歩進んで行けば、翌年の2月には必ず納得のいく学力に到達しているはずです。