医学部の推薦入試。評定平均はどのぐらい必要?浪人でも受けられる?
近年、医学部でも推薦入試を導入して注目を集めていることを、ご存知ですか?
ただし、推薦であっても合格が約束されたものとはならず、狭き門といえます。
今回は、国公立大学や私立大学の医学部推薦入試についてみていきましょう。
推薦入試を実施している学校は多い!
推薦入試を実施している医学部のある大学は、国公立では43校、私立は17校あります。
「意外と多いのね」という印象ではないでしょうか。
推薦入試の場合、学科のほかに面接が必須となるケースが多く、推薦は専願であることが前提となりますから、受験する大学についてしっかりとした知識と「どうしてこの大学の医学部なのか」という理由を明確にしておく必要があるでしょう。
受験資格や試験対策については、オープンキャンパスや説明会で情報を得ることができますので、ぜひ参加することをおすすめします。
入試について有益な情報を得るだけでなく、実際にキャンパスに足を運ぶことで、「この大学に行きたい」と気持ちを奮い立たせるきっかけにもなることでしょう。
推薦入試の試験内容は?
推薦入試の試験内容は、いったいどのようなものなのでしょうか。
ここからは、国公立と私立の推薦入試の内容について比べてみます。
国公立大学の推薦入試
国公立大学の推薦入試で必須となるのが内申点です。
国公立医学部のほとんどは公募制推薦で、内申点が重要になってきます。
評定平均4.3以上というのが厳しい基準をまずクリアしなければなりません。
「評定平均をクリアしていれば医学部に推薦してもらえるのなら、それはお得なのでは」と考える方も多いようですが、基準はあくまでも基準。
実際にはそれ以上の評定を持っている生徒も出願してくるということを忘れてはいけません。
その上でセンター試験でも基準となる点数以上を取れなくてはいけないため、結果として一般入試と同等の学力が求められると考えた方がいいでしょう。
また、国公立大学の医学部の推薦入試は、大学によりさまざまな課題が課せられます。
「国公立医学部受験」と一括りでざっくりと対策を考えていると、結果として合格をいただけないという事態に陥ることもありますので、注意が必要です。
しっかりと各学校の特色を掴み、それに即した対応をしていくことが重要なポイントとなります。
一般入試同様に学力試験を課す大学もありますから、それをクリアするためには難易度の高い記述や論述に対する対策をしておく必要が出てくるでしょう。
面接も必須ですから、医師として必要とされるコミュニケーションスキルを磨く練習として、しっかりと面接に対応できる準備を整えることも必要です。
私立大学の推薦入試
一方、私立医学部推薦入試はというと、指定校推薦や公募制推薦、AO入試の利用が選択肢として考えられます。
指定校推薦は、学内選考を通過してしまえば、一般入試と比べてかなり有利なものとなるでしょう。
公募制推薦の場合も、指定校推薦ほどではありませんが、倍率面で有利となることは変わりません。
しかし、指定校推薦でも、公募推薦でも他学部と比べてみると一定の倍率は存在するのです。
推薦入試でも、多くの私立医学部で英語、数学、理科の基礎学力試験が実施されます。
大学によって難易度は異なりますが、センター試験で8割程度の得点力は必要といえるでしょう。
過去問が開示されていないことが多い
推薦入試の最大の難関は、過去問が開示されていないケースが多いこと。
開示されていない場合は、医学部の特性として記述をマスターするための訓練をしておきましょう。
数学の基本公式や解法、英単語や文法・語法、理科の定義や典型例題といった基本となる部分に関しては、しっかりと知識が定着するように練習しておきましょう。
基礎学力試験がある場合、その順位で合否が決まるといっても過言ではありません。
やはり、どんなに面接や小論文が素晴らしくても、学力が不足していると入学後学生の質を均一に保てない可能性が出てきますから、合格は難しくなってしまいます。
とにかく、基礎をしっかりと定着させておきましょう。
面接対策としては、やはりどうしてこの大学の医学部なのかを自分の言葉で伝えられるように練習しておく必要があります。
推薦入試の倍率、合格率と主な試験内容
推薦入試の場合でも、倍率は年々アップしてきています。
現在、大体3~4倍というのが、推薦入試の倍率といえるでしょう。
先ほども触れた通り、基礎学力だけでなく面接や小論文などもしっかりと対策した上で、この大学でなくてはいけない理由、自分がどのようにこの大学で学んでいきたいのか明確なビジョンを持つことができるかどうかが推薦入試の重要なポイントとなります。
面接や小論文を通して、学生の想いは自然と大学サイドにも伝わるのです。
医学部入学のために求められる適性としては、コミュニケーションスキルや人柄、医師として必要な思考方法や文章力、表現力がチェックされます。
小論文はとにかく求められた文字数を満たす文章を書くことを最低条件と考え、一定時間内に書きあげる訓練をしておくことが必要です。
大学によってはグループ討論が課されるケースもありますから、積極的な姿勢を持ちつつ、周囲の意見にもきちんと耳を傾け、その上で自分の意見も述べることができるように日常的に心がけて過ごすといいでしょう。
グループ討論は、練習がもしあらかじめできるならしておきたい課題。
とはいえ、そういった機会はなかなかありません。
先述のように推薦入試は過去問が開示されていないケースが多いですが、予備校などには過去に受験した先輩からの情報などのデータがあります。 そのデータの蓄積や、一般入試での出題傾向やレベルを分析し、まとめ、対策を行っている予備校もありますので、医学部受験に強い予備校を調べ、受講することも一手段として有効です。
推薦入試の受験資格
推薦入試における受験資格には、どのようなものがあるのでしょうか。
大学により条件は異なりますが、ここではよく提示されているものをご紹介します。
評定平均は4.3以上が基準
まずは評定平均値ですが、先ほども述べたように「最低でも4.3」という設定が多いようです。
浪人していても推薦入試を受けられるかどうかは、大学の規定によります。
卒業年度が定められていることも多く、「現役のみ」と厳しく限定しているところもありますが、1浪までは許容している大学も多くあるのが実情です。
「4浪まで」というところが、設定の幅が最も広い大学といえるでしょう。
浪人生の場合の平均評定は、現役生が「高校3年次の1学期まで」「高校3年次の2学期まで」と設定されているケースが多いのに対し、「高校卒業時までの平均」とされることが多いようです。
高校入学直後は「まだ受験なんて早い」と考える人もいるかもしれませんし、ましてや浪人生となってしまうことなど考えもしないかもしれません。
しかし、そもそも大学受験は早い段階からの頑張りの蓄積が生きていくものです。
高校3年が近づいてきたときに大学受験準備に追われて内申点をおろそかにしていると、後になって後悔することがあるかもしれません。
評定平均以外で求められる条件とは?
地域によっては、評定平均だけではなくそのエリアに住んでいることが条件とされているケースもよくあります。
例えば、「A県立大学」の医学部の推薦条件は「A県の在住者であること」といった形です。
また、国公立大学医学部のAO・推薦入試の中には、県や市といった自治体から奨学金を受けとることが可能な枠が用意されていることも。
奨学金の目安としては、学費と生活費で大体月額10万円程度支給されるケースが多くあります。
この制度を利用すると、勉強にのみ集中して学生時代を過ごすことができ、アルバイトなどをする必要がないのが大きな魅力といえるでしょう。
さらに、卒業後決められた年数をその自治体指定の医療機関で勤務することで、返済義務がなくなるというオプションも用意されています。
このように説明すると魅力的な制度のように思えますが、実際にはその連続した期間を指定された地域に居なくてはいけないというデメリットもあります。
とはいえ、留学や研修で他県や海外に赴く期間は許可しているケースもありますから、難しく考えずにトライしてみるのもいいでしょう。
推薦入試スケジュール
ここでは推薦入試のスケジュールを見ていきます。
国公立と私立では形式がまったく違うので、対策はしっかりしましょう。
国公立医学部の場合
国公立医学部では、3パターンの推薦入試が行われています。
まず、年内に面接や小論文試験などを行い、年明けの大学入試センター試験と、志望動機書や推薦書といった書類審査の総合で評価するもの。
次に、センター試験で1次選考を行い、2次試験として面接や小論文試験を実施するもの。
3つ目はセンター試験を使わずに、大学独自の試験を行うものとなります。
センター試験を利用する場合、85%~90%の得点が必要となりますから、しっかりと準備しましょう。
3つ目の大学独自の推薦入試を行っているところは少ないのですが、この場合は一般入試の学生と同程度の学力が求められるため、あらかじめしっかりと受験準備しておかなくてはいけません。
面接と小論文対策も必須となり、特に地域枠を利用して受験する場合、その地域が抱える医療に関する問題や、対策を自分なりにまとめておくといいでしょう。
私立大学医学部の場合
私立大学医学部の推薦入試では「基礎学力試験」「適性検査」と呼ばれる学科試験が実施されます。
科目は「英語と数学のみ」「英語、数学、理科1科目」というように、大学によって異なりますので、自分の志望する大学の募集要項をしっかりチェックしましょう。
この学科試験の結果と、書類審査、面接や小論文との総合で選考が行われます。学科試験の入試問題がオープンになっている大学を受ける場合は、過去問分析と演習は必須。
ですが、推薦入試の過去問は公開していない大学も、多くあります。面接や小論文についても非公表としている大学が多いため、予備校など情報を蓄積しているところを活用して対策するのも一つの方法といえるでしょう。
万が一推薦入試が通らなかった場合でも、一般入試のチャンスもある
ここまでは推薦入試についての詳細を伝えてきました。
これらの内容を踏まえてしっかり対策を行って、試験に挑んでいくこととなります。
しかしながら、現実的な面を見ると、倍率や難易度という意味では、一般入試と比べると受かりやすい入試形態ではありますが、推薦の場合でも「推薦=合格」と考えることはできません。
推薦入試の受験が決まったとしても、それだけで安心するのはまだ早いと言えます。
合格は保証されないにしても、推薦入試を受ける最大のメリットは「受験するチャンスを増やすことができる」という点でしょう。
一度推薦でチャレンジして残念な結果となった場合でも、一般入試でもう一度受験しなおすことは、基本的に可能です。
推薦入試と一般入試は、試験の時期にズレがあります。
推薦入試は、大学側が定めている一定の基準を満たしている人が受験資格を持つことができるもので、一般入試よりも早いタイミングで受けることができます。
多くの大学では11月上旬~12月上旬に実施しています。
これらを踏まえて単純に考えれば、推薦と一般とで受験するチャンスが2回あるということになります。
これは、医学部にどうしても進学したい人にとっては大きな魅力ではないでしょうか。
とはいえ、推薦入試特有の小論文や面接対策をしながら、センター試験など次を見据えた勉強を進めていくこともも決して楽ではありません。
しかし、将来的に医師として活躍することを考えると、1年でも早く医学部に合格した方が何かと有利です。現実的に、年齢が上がっていくにつれての受験は、その年齢が足かせとなって受験に対して不利になってしまうという事例もあります。
ここ数年であの「東京大学」でも推薦入試を実施するようになり話題になりました。
それだけ推薦入試というものがクローズアップされるこの時代、医学部の推薦入試も今後もさらに増加していくことが予測されます。
「専願だから」と言っても入りやすいわけではなく、「指定校推薦だから」とはいえ必ずしも入学が叶うわけでもない医学部ですが、医師という仕事は素晴らしいもの。
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