【大学受験】英単語は分解とインパクトで覚えよう
大学入試を目指す受験生が、英単語を覚えられないことは致命的です。入試に英語を課さない大学はほとんどなく、英単語を知らないと英語の問題を解くことができないからです。英単語の暗記に苦労するのは、単純暗記が苦手だからといえます。単純暗記とは、そのまま覚える方法です。
もし次の2つの英単語と意味を、30秒見ただけで覚えられたら、単純暗記が得意な人です。
「intrepid:勇敢な」
「vindicate:立証する」
そうではない人は、英単語を「分解する方法」と、ダジャレを使って「インパクトで覚える方法」を試してみてはいかがでしょうか。
英単語を分解して覚える
単純暗記が苦手な人は、理屈で覚えていきましょう。理屈は納得を生み、納得が記憶のきっかけになるからです。英単語の理屈とは、英単語の成り立ちのことです。その英単語ができあがった経緯、といってもいいでしょう。受験の頻出英単語は、成り立ちがしっかりしたものが多いので、それを覚えれば単純暗記を回避できます。
例えば、「プリペイド・カード」は、事前にお金を支払うことで、現金を使わずに買い物ができるカードです。このprepaidは、preとpaidから成り立ちます。
preには「あらかじめ、以前の、の前部にある」という意味があります。paidは、pay(「支払う」)の過去形・過去分詞形です。このため、prepaidは「あらかじめ支払った」という意味になります。
「芋づる式」で英単語を覚える
サツマイモは、1本の根に何個も実をつけます。それでサツマイモは、1本の根を引っ張れば複数個を収穫できます。それと同じように、1個の語から複数の英単語を覚えていきましょう。
次に、prepaid以外のpreが付く英単語10個を紹介します。
・preamble:序文、前置き、前文
・precarious:不安定な、危険な
・precaution:予防装置、事前の対策、用心
・precede:~に先立つ、~に優先する、~より重要
・precedent:前例
・precept:教え、教訓、指示、命令書
・preciosity:凝りすぎ、気取り、気難しい、優先度
・precious:高価な、愛する、重要な
・precise:正確な、まさにその
・preclude:~を妨げる、じゃまする、不可能にする、排除する
これらの単語の意味には、すべて「pre:あらかじめ、以前の、の前部にある」のニュアンスが含まれています。ひとつずつみていきましょう。
・「preamble:序文、前置き、前文」のambleは「ゆっくり歩く」という意味です。いきなり本題に入るのではなく、まずは「前置き」をして始める場合、それはゆっくり進めていることになります。
preambleは、ambleする(ゆっくり進める)preの(前の)状態を表しているので、「序文」や「前文」という意味になります。
・「precarious:不安定な、危険な」のcariousは「う蝕(うしょく)」という意味です。う蝕とは、歯で言えば虫歯によって歯が欠けた状態を指します。
つまり、う蝕はすでに事故が起きた状態です。それでprecariousは、事故の前の状態なので、「危険」という意味になります。
・「precaution:予防装置、事前の対策、用心」のcautionは「注意」という意味です。precautionは注意すべきことが起きる前の状態を指すので、「用心」となります。precautionさらに、用心を促す「予防装置」にもなります。
・「precede:に先立つ、に優先する、より重要」のcedeは「譲る」という意味です。ある物を他人に譲るとき、その物は重要なものでなければなりません。そうであるならば、譲る前に物の価値を見定めておく必要があります。それで「より重要」というニュアンスを伝えるときにprecedeという言葉を使います。
・「precedent:前例」のdentは「へこみ」という意味があります。以前にできたへこみは、多くの人の「前例」になります。
・「precept:教え、教訓、指示、命令書」のceptは「つかみ取る」という意味です。受験生が英語の知識をつかみとるには、事前に「教え」を受ける必要があります。また、何かの行動を起こすには、事前に「指示」や「命令書」が必要です。
・「preciosity:凝りすぎ、気取り、気難しい」のciosityは、ciとosにわかれます。ciは「呼ぶ」、osは「揺れる」という意味があります。つまりciosityは「揺れを呼び出す」といった意味になります。「凝りすぎ、気取り、気難しい」という行動は、人の心の動揺を呼び起こす前の行動になります。
・「precious:高価な、愛する、重要な」のciousは「尊い」という意味です。「高価な」物も、「愛する」人も、尊い気持ちを生み出すきっかけになります。
・「precise:正確な、まさにその」のciseは「切る」という意味です。例えば、ニンジンを切るとき、事前に切る場所を「正確に」決めておく必要があります。
「preclude:を妨げる、じゃまする、不可能にする、排除する」のcludeは「閉ざす」という意味です。閉じるのは、妨害者の侵入を阻むためです。閉じる前には、妨害者の行為を「不可能」にしたり、妨害者を「排除」したりします。
ここまでですでに、preが付く単語を11個紹介できました。11個の英単語を単純暗記することは大変な作業ですが、preと関連づけることによって、単純暗記をある程度回避することができます。
覚えておきたい接頭辞
preのように、英単語の前に付き、後ろの言葉に意味を付け加える語のことを接頭辞といいます。分解暗記法を体得するには、次の接頭辞を覚える必要があります。
anti:反、非、対
auto:自動の
be:つくる
bi:2つ
co:相互に、共同
counter:反対
de:否定・下降
dis:反対・欠如
ex:前の
fore:前方の
hyper:超、過度の
im-/in-/ir-/il:反、非、対
in:中の
inter:間
kilo:千
mal:悪い
mega:百万
mini:小さい
mis:誤った
mono:1つ
neo:新しい
non:非、不、無
out:優れる
out:外側の
over:限度を超えて
poly:多数の
pseudo:偽りの
re:再び
semi:半分
sub:下位
super:上位、超越
sur:上位、超過
tele:距離
trans:超えて
tri:3つ
ultra:超えた
un:反対、でない
under:不十分、下位
vice:副、代理
接頭辞を覚えるには、英和辞書を引き、接頭辞が付いた最初の10個の英単語をノートに書き出していく方法が有効です。例えば、英和辞書で「mal」の箇所を調べると、次の英単語が掲載されています。
maladaptation、不適合、場違いの
maladjustment、調整不十分
maladminister、処理を誤る
maladroit、不器用な
malady、病気、悪い癖
malaria、(病気の)マラリア
malconformation、不完全な形態
malcontent、不満のある、批判的な
malice、悪意、敵意
malignant、悪性の
malは「悪い」という意味をつくる接頭辞である、と覚えている人は、これらの単語の意味をとらえやすくなります。
ここで紹介した英単語のなかには、非頻出単語もありますが、分解法を使うと、難しい英単語を学ぶことができます。
覚えておきたい接尾辞
接尾辞は、英単語の語尾にくっついて意味を加える語です。
接尾辞についても、次のものが付く英単語をそれぞれ10個調べてみてください。
-able:可能な
-age:行動、結果
-al:行動、結果
-al:〜の(性質の)
-ant/-ent:人
-ate:〜する
-cy:状態
-en:〜する
-ence/-ance:行動、結果
-ent:〜の(性質の)
-er:人、物
-ery/-ry:行動、場所
-ful:〜に満ちた
-fy:〜する
-ism:主義
-ity:状態
-ive:〜の(性質の)
-ize/ise:〜する
-less:〜のない
-ment:行動、状態
-ness:状態
-ous:〜の多い
-ship:状態
-tion/-sion:行動、状態
例えば、「-ness」が語尾に付く英単語には次のようなものがあります。
kindness:親切
happiness:幸せ
hopelessness:絶望
dryness:乾燥
blindness:失明
silliness:愚かさ
calmness:静けさ
darkness:闇
oneness:一体感
brightness:明るさ
これらの単語はすべて「-ness:状態」を表しています。
インパクトがある覚え方をすれば記憶に定着する
分解方式でも英単語を覚えられない人は、インパクト方式を試してみてください。物事の記憶は、インパクトが強くなるほど定着しやすくなります。英単語のインパクトを強めるには、連想記憶術が有効です。例えば、kennelを「犬(けん)寝る」だから「犬小屋」と覚える方法が連想記憶術です。
ダジャレで英単語を覚えるこの方法はかなり「邪道」です。しかも、直接的には正確な発音を覚えることはできないという欠点もあります。そのため、単純暗記や分解方式で英単語を覚えられる受験生は、連想記憶術は使わないほうがいいかもしれません。
しかし冒頭で紹介したとおり、暗記している英単語が少ないことは、大学受験の致命傷になります。「邪道でもなんでもいいからとにかく覚えたい」という受験生は、このインパクト方式「連想記憶術」を使ってみてください。
連想記憶術とは
連想記憶術は、「英単語連想記憶術〈第1集〉―心理学が立証した必須4000語の獲得」の著者、武藤たけ雄氏が提唱したものといわれています。連想記憶術のつくり方を紹介します。
例えば、先ほど紹介したkennelは、次のように連想記憶していきます。
kennel:犬小屋
・連想記憶術:犬(けん)寝る、犬小屋で
(解釈:犬が寝るのは犬小屋)
kennelをカナ表記すると「ケンネル」となります。kennelの意味が「犬小屋」なので、「ケンネル」を犬小屋関連の意味にしていきます。「ケン」は「犬」の音読みなので、そのまま使えます。「ネル」を「寝る」と理解すれば、犬が寝ている様子を想像できるでしょう。こうした連想法で、英単語と意味を関連付けていきます。
このあと、難解英単語で連想記憶術をつくってみます。
難解英単語を連想記憶術で覚えてみる
英単語の横の日本語が、本来の意味になります。
下段が連想記憶術で、( )が連想記憶術の解釈です。かなり強引なダジャレがあるので、解釈も読んでみてください。
tremor(トリマー):震え
・連想記憶術:トリマーの手が震えている
(解釈:犬の毛をカットするトリマーさんの手が振るえている)
allegiance(アリジエンス):忠誠
・連想記憶術:主(あるじ)案ずる、忠誠心
(解釈:主が子分たちの忠誠心を心配している(案じている))
boon(ブーン):恩恵
・連想記憶術:防音の恩恵
(解釈:防音設備がしっかりしている建物は勉強がはかどる恩恵が得られる)
ambushed(アンビュシュトゥ):待ち伏せ
・連想記憶術:アン、ブスっとしながら待ち伏せ
(解釈:アンさんがブスっとした顔(不機嫌な顔)で待ち伏せている)
bogus(ボガス):偽物
・連想記憶術:撲す、偽物を
(解釈:偽物の商品を撲滅する)
facile(ファシル):安易な
・連想記憶術:ハッスル、安易な興奮
(解釈:あの人は安易なことでハッスルしたり興奮したりする)
ballots(バロッツ):投票
・連想記憶術:バーローと言いながら投票
(解釈:投票所に酔っ払いがやってきて「バーロー、何が政治家だ」と騒いでいる)
advocacy(アドボカシー):擁護
・連想記憶術:あと、ぼかしで擁護する
(解釈:問題のある写真について、あとでぼかしを入れて擁護する)
oblivious(オブリビョウス):気付かない
・連想記憶術:炙り火(あぶりび)薄い、気付かない焦げ(こげ)
(解釈:魚を火で炙ったが、火力が薄いので気付かないほどの焦げ目しかつかなかった)
dismantle(ディスメントル):解体する
・連想記憶術:デス、メンタルを解体する
(解釈:愛する人の死(デス)は、メンタルを解体させる)
illicit(イリシット)違法
・連想記憶術:入り嫉妬されるのは違法な場所だから
(解釈:あの場所はよく釣れるから、そこに入ると他の釣り人から嫉妬される)
detrimental(デトリメント):有害な
・連想記憶術:デートに麺食べる、有害なアドバイス
(解釈:先輩から「デートではラーメンを食べたほうがよい」と嘘のアドバイスを受けた)
recurrence(レキュアレンス):再起
・連想記憶術:霊柩車連想させる、再起は不可能
(解釈:霊柩車が走っているのを見ると、再起できないことを連想させる)
*これらの連想記憶術は、すべてこの記事のオリジナルのものです。
連想記憶術に向いているかどうかの確認方法
自分が連想記憶術に向いているかどうかを確認する方法があります。上記の15個の単語の連想記憶術の部分「だけ」を、それぞれ20回音読してください。
そのあとで、下の英単語だけの状態を見て、意味を言い当ててください。
もし10個以上覚えることができていたら、連想記憶術に向いています。
tremor
allegiance
boon
ambushed
bogus
facile
ballots
advocacy
oblivious
dismantle
illicit
detrimental
recurrence
まとめ
英単語の単純暗記が苦手な人は、単純暗記を続けても時間の無駄です。単純暗記を長時間続けても学習効果が得られない人はいます。
ニワトリがいくら一生懸命羽ばたいても飛べないのと同じです。受験勉強は時間制限のある競争なので、無駄な時間を取る余裕はありません。
だからといって受験生は、英単語の暗記から逃げられるものではありません。そこで、ニワトリが速く走れる足と極度の警戒心を獲得して生き延びているように、分解方式やインパクト方式で英単語を覚えていきましょう。
ただ、時間をかける必要はあります。英単語に限らず、苦手な教科を克服するには時間がかかるからです。無駄な勉強法には時間をかけず、有効な勉強法にたっぷりと時間をかけてください。