大学入学共通テストで話題だった英語民間試験、受験に役立つのはどれ?

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大学入学共通テストで話題になりながら2020年度の導入が見送られた「英語民間試験」。7種類の民間試験を利用して共通テストの成績に活用されるはずでした。ただ、民間試験はTOEICやTOEFLなど学生や留学でおなじみのものだけではありません。大学入学共通テストで新たな技能評価「読む・聞く・話す・書く」を判断するものです。

つまり、新しい大学入学共通テストでも、こうした評価が重視されると予想されます。そこで、本記事では高校生活で民間試験を受ける際の受験勉強への活かし方や選び方について解説します。

「英語民間試験」はなぜ導入予定だったの?

まさかの英語民間試験の導入凍結……どういったいきさつがあったのでしょうか。

英語民間試験は2020年度からの導入は断念

2019年秋にかけて、2021年1月実施予定の新しい大学入学共通テストから、英語科目で民間試験の活用が議論されていました。しかし、「世の中の意見が分かれたこと」「準備不足だったこと」などから、2019年11月1日、文部科学大臣は正式に導入を断念すると発表。

「自信を持っておすすめできるシステムになっていない」という理由でした。また、早ければ2024年度に導入を目指すとしています。

なぜ英語で民間試験を導入しようとしたの?

新しい大学入学共通テストの中で、民間試験の活用が熱く議論されているのは英語です。もともと、受験は暗記が中心かつペーパーテストで覚えている学習内容を答えさせる出題形式が多い傾向といえます。そのため、思考力や応用力、社会に出たときのスキルを測るような試験が望まれてきました。

大学入試センター試験では、2006年1月から英語リスニングが導入されたのも、読み・書きだけではわからない実際の英語のスキルを採点するためです。英語は、他の教科と比べて「グローバル化する社会に対応して世界で活躍する日本人を育てる」という大切な目的があります。

以前の、英語学習は文法をしっかり暗記したり、長文読解のコツを身につけたりするなど「読む・書く」が中心でした。「英語を話したり聞いたりは苦手だけれど、読んだり書いたりは一通りできる」といったイメージの受験生が多かったのです。そんな中、受験英語でただ文法や単語、構文を覚える時代から変化していきました。

英語を話せる子どもたちを育成するため、以下のような取り組みにより学校の英語も早期教育が行われています。

・小学校から英語の授業が始まる
・ELTの先生と直接触れ合いながら肌で英語のスピーキングやリスニングを学べるようになった

そういった背景を経て、今回、新しい大学入学共通テストでも、「読み・書き」だけではなく、「話す・聞く」を積極的にテストしようとしていたのです。2006年にリスニングが導入されてから約15年となるセンター試験でも、英語のテストはリーディング中心。国は、英語を話すのが苦手な日本人をなくすために、大学受験でさらにリスニングやスピーキングの導入を模索しているのです。

全国の何十万人もの受験生を一度に英会話の試験を実施するのは、とても難しいことでした。

大学入学共通テストにも影響

リスニングとスピーキングをセットにして、受験生の英語力をテストしたいとき、白羽の矢が立てられたのが英語民間試験でした。例えば、実用英語技能検定(英検)をイメージしてみましょう。「高校卒業程度」の英検2級では、一次試験で「リーディング」「ライティング」「リスニング」の3つの英語技能を評価する内容で、合格者のみ二次試験で面接形式のスピーキング評価を受けます。

一次試験のリーディングでは、短文や会話文、説明文の文脈に合う語句を空所に補充する問題や、Eメールや説明文の長文内容にマッチする選択肢を選ぶ問題が中心です。ライティングでは指定されたトピックについての英作文を書きます。さらに、リスニングでは放送で流れる会話文や物語文、説明文を聞き取りして、3~4つの選択肢から質問に答えるスタイルです。

また、二次試験では、問題文を20秒黙読してから、パッセージを音読。その後、パッセージの内容についての質問、イラストに描かれたシーンの展開説明、さらに意見を聞かれて英語で回答していきます。英検2級は、高校レベルの基礎文法やリスニング、リーディングで対応できます。単語力やリスニング力で差がつきやすいといわれる理由です。

高校で学ぶ英語の授業や定期テスト、模試と比べると、英検で求められる英語能力や出題傾向とでは、かなり違うことに気づくでしょう。つまり、新しい大学入学共通テストでは、ますます英語民間試験で必要な英語スキルや対応力を身につけておくと有利になります。

英語の試験対策が変わる

CEFR(セファール)という英語試験の国際基準で見ていきましょう。7種類の英語民間試験は、どれもレベルが同じではありません。ここがポイントです。CEFRは、最高レベルのC2~A1までの6段階評価があります。レベル順に並べると「C2>C1>B2>B1>A2>A1」です。

ややこしいのは、例えば英検1級の場合、CEFRではC1~B2という2つのレベルにまたがっていたり、ケンブリッジ英語検定「B1」ではC1~A2まで3レベルをカバーしていたりするなど、比較が難しいところです。

さらに、最高レベルのC2に到達できる試験は、ケンブリッジ英語検定「Proficiency」と「Advanced」、そして「IELTS」の8.5以上の3つのみ。例えば、英検1級で最高レベルC2を目指したくても、英検の試験の難易度がCEFRではC2まで対応していません。

さらに、2019年7月2日、「TOEICは2021年1月実施予定の大学入学共通テストに参加を取りやめる」という発表がありました。もし2024年の大学入試から英語民間試験が導入されても、2020年6月時点ではTOEICが8種類目となるかは不透明です。

2021年1月実施予定の大学入学共通テストでは導入が見送られた7種類の英語民間試験。しかし、文部科学省が大学受験の英語の評価で利用しようと考えていたのは確かです。つまり、来年度以降における大学入学共通テストの英語試験の傾向や、近い将来に民間試験が導入された場合、どういった学習をすればいいのか、などのヒントになるでしょう。

7種類の英語民間試験の特徴

民間の英語検定試験は、今回、新しい大学入学共通テストで注目されましたが、高校を卒業後、大学生や社会人になっても使える資格ばかりです。英検は、日本人にはなじみの深い英語検定ですし、TOEICは就職試験や転職活動で英語力を証明するのに広く利用されています。

ちなみに、英語民間試験は、先ほど紹介したCEFRの6段階だけで評価します。これまでのセンター試験や新しい大学入学共通テストでは1点単位の点数で採点されるのと大きな違いです。

国際基準はありますが、同じ英語の試験でもそれぞれ単純に難易度や評価方法を点数化はできません。そこで、C2~A1という6段階評価を大学入試の評価基準にする予定だったのです。ここからは、具体的にそれぞれの英語民間試験のポイントや難易度を見ていきます。

英検

CEFR

実用英語技能検定の目安

C2

C1

1級

B2

準1級

B1

2級

A2

準2級

A1

3~5級

日本人にとても人気の高い英語検定試験です。ただ、英検は「従来型」「新方式」の2つあります。この記事の前半で紹介した、一次試験と二次試験を別日で実施するのは「従来型」です。2018年から始まった、1日で「読む・聞く・書く・話す」の英語の4技能をすべて試験するものを「新方式」といいます。

このうち、大学入学共通テストでは、新方式のみを採用する予定でした。ちなみに、新方式は「英検CBT」「1日完結型」「公開実施」といった3つの試験に分かれています。新方式であれば、どれを受験してもOKでした。英検は、受験者数が非常に多いので、将来的に英語民間試験が導入されると利用できる可能性が高いと思っていいでしょう。

一方で、就職試験など社会では、TOEICのほうが好まれる傾向です。それでも、高校卒業までに英検2級はチャレンジしておきたいレベルといえます。

GTEC CBT

CEFR

GTEC CBT

C2

C1

1370~1400

B2

1160~1369

B1

880~1159

A2

510~879

A1

509以下

ベネッセが高校生や受験生の英語能力を開発するためにスタートしたのが「GTEC CBT」。グローバル社会に対応できる高校生の育成を目的にしていて、日常会話をベースにしつつ、アカデミックの要素もうまく取り入れたバランスのよい出題内容です。リスニングは、スピードがゆっくり目となっており、いきなり英検やTOEICはちょっと……という高校生や受験生に向いています。

試験日程は、年に3回です。受験会場は47都道府県それぞれに設置されます。なお、CFER評価はC1までです。

ケンブリッジ英語検定

CEFR

ケンブリッジ英語検定

C2

200~230

C1

180~199

B2

160~179

B1

140~159

A2

120~139

A1

100~119

英語を母語としない外国人が受験する英語検定で、世界的に知名度の高い検定の1つです。英検は国内、TOEICも国際的には一部のエリアで通用するテストですが、ケンブリッジ英語検定は海外での就職や転職、留学などに利用されています。英検のように、レベル別で5つかつ8種類の試験があります。

もし、大学入学共通テストに利用できるようになると、CEFRの最高レベル「C2」まで対応しています。試験内容は、日常的な英会話や英語能力を測るものです。ビジネスの内容も多少含まれていますが、それほど多くはないので、高校生や受験生にもとっつきやすいでしょう。

TEAP

CEFR

TEAP

C2

C1

375~400

B2

309~374

B1

225~308

A2

135~224

A1

英検を運営している日本英語検定協会の試験です。日本国内の大学入試の英語試験を想定した内容ですが、大学受験だけではなく大学での英語学習や海外留学での英語スキルを高める目的もあります。高校英語をベースに、高校生や受験生にマッチした内容なのも特徴です。英語の4技能をすべてカバーしています。

なお、TEAPは問題用紙と解答用紙によるペーパーテスト、スピーキングは面接官との対面試験です。

TEAP CBT

CEFR

TEAP CBT

C2

C1

800

B2

600~795

B1

420~595

A2

235~415

A1

TEAPのコンピューター版です。スピーキングは、録音方式で行います。

IELTS(アイエルツ)

CEFR

IELTS

C2

8.5~9.0

C1

7.0~8.0

B2

5.5~6.5

B1

4.0~5.0

A2

A1

アメリカやカナダ、イギリスなど英語が共通語の大学・大学院へ留学するための英語力評価試験です。TOEFLと並び、海外留学で国際的によく使われていて、アカデミックな試験内容になっています。日常生活やビジネスシーンよりも、専門的な内容や高度な単語が登場するのが特徴です。

CEFRの最高レベルC2~B1までに対応しています。

TOEFL iBT

CEFR

TOEFL iBT

C2

C1

95-120

B2

72-94

B1

42-71

A2

A1

先ほどのIELTSと同じく、英語圏への海外留学で英語力を証明するため受験校に提出する目的でよく使われています。大学の講義をイメージした出題内容も多いものの、高校生や受験生で十分対応できるレベルで作成されています。

その他の認定試験(TOEIC)

CEFR

TOEIC L&R/TOEIC S&W

C2

C1

1845~1990

B2

1560~1840

B1

1150~1555

A2

625~1145

A1

320~620

TOEICは英語民間試験で一番利用者が多いと想定される試験です。「英検と並んで日本でなじみがある」「受験料が他の試験に比べて割安」「大学入学後や就職活動でも必要」といったことが理由です。

日本語の対策テキストも豊富なうえ、CEFRも最高レベルC2を除く5段階に対応。次年度以降、もし英語民間試験の導入が決まっても、冒頭で説明したように2020年6月時点でTOEICは参加を取りやめているため、大学入学共通テストで利用できるかは難しそうです。しかし、就職や社会に出てからのことを考えると、高校生や受験生のうちから出題形式に慣れておくのに一番おすすめの英語試験といえるでしょう。

まとめ

繰り返しますが、2021年1月実施予定の大学入学共通テストでは英語民間試験の利用は見送られました。そのため、受験生は大学入学共通テストの英語試験で勝負することとなります。ただし、国は導入を一時的に断念した状態と考えると、2024年度以降、国で準備が整えば利用できるようになるかもしれません。

今年の受験生は、ひとまず大学入学共通テストに集中しましょう。来年、再来年に受験を迎える高2生、高1生は、今回紹介した英語民間試験の特徴や難易度を参考に、自分の将来とマッチしそうな試験を英語学習の一つの取り入れてみてはいかがでしょうか。

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