突然、高3で「大学受験をする」と決めた人の勉強法

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高校を出て就職しようと思っていた人が突如、大学に行きたいと思うことは珍しくありません。しかし、その突然の方針転換が高校3年の4月では、遅すぎるでしょうか。これまで大学入試に備えてこなかった人が、高3の4月から11ヵ月間勉強して志望大学に合格することはできるのでしょうか。

可能です。

確かにライバルの受験生たちの多くは、高1の春から大学受験の準備をしてきました。したがって、「1年しかない」と考えるのはもっともなことです。しかし、「1年もある」と考えてください。10代後半の人の1年間の成長率は無限大です。
十分な戦略を練り、勉強を極限まで効率化すれば「1年あれば十分」です。

大学全入時代

大学全入時代という言葉をご存知でしょうか。希望をすれば誰でも大学に入ることができる状態のことです。大学の進学率が5割に達したことで、日本は大学全入時代に突入したといわれています。

入学定員割れになった私立大学は2018年度に210校ありました。これは全私立大の36%に当たります。入学定員割れとは、例えば、50人募集していたのに、受験した人が45人しかいなかった状態のことです。例外がなければ、この大学を受験した45人全員が合格します。

少子化が進み高校生の人数が減ったのに、大学の数が増えてきたため、大学全入時代が到来しました。かつて受験戦争と呼ばれていた激しい競争は一部の大学に限られ、それほど勉強しなくても入学できる大学は増えました。

高3生が急遽大学進学に切り替えても間に合うのは、こうした事情もあります。しかし、誰でも大学に進学できる状態と、行きたい大学に合格することは別の話です。この記事では、突如大学進学に切り替えた4月の高3生が、行きたい大学に合格する方法を考えていきます。

担任の教師に相談する

大学に進学することを決意したら、なるべく早い段階で担任の教師に相談、報告しましょう。高校の教師たちは、就職を志望する生徒たちに提供する授業と、大学受験に挑戦する生徒たちに提供する授業を変えています。それは、就職を志望する生徒たちに受験テクニックを教えても興味をもってもらえないからです。教師たちは、就職する生徒たちには、教科の内容と実社会での出来事をリンクさせて教えようとするでしょう。

もし大学進学に切り替えた生徒が、就職志望者が多いクラスに居たら、受験テクニックを教わることができません。しかし、担任に大学進学の意向を伝えれば、授業内容を変えてくれるかもしれません。授業内容が変わらなくても、放課後に質問する時間を設けてくれたり、進学指導を充実させてくれたりするはずです。

また担任が、ある生徒が大学進学に切り替えたことを知れば、職員室で他の先生にも教えるでしょう。他の教科の教師も、受験勉強を支援してくれるかもしれません。

高校の教師は自分自身が大学に通っていたので、大学教育が人生に与える好影響を知っています。それで多くの高校教師は、1人でも多くの生徒に大学に行ってもらいたいと思っています。就職から大学進学に切り替えた生徒を応援したくなる教師は、職員室のなかにたくさんいるはずです。

高校教師は大学受験のプロです。自身も大学受験で苦労した経験がありますし、教師になってからも自分の専門科目の大学入試を研究しています。高3生になって急に大学進学に切り替えた生徒は受験情報が不足しているでしょう。大学受験のプロである教師の支援を受けることは、勉強の効率化に直結します。

志望大学を絞って受験科目を絞る

ライバルの受験生たちは、少なくとも高1生のころから大学を意識しています。早い人だと中学生や小学生のころから大学受験を見据えた特別な教育を受けています。そのため、高3から受験勉強を始める人が「まともな勝負」をしたら、勝ち目はありません。受験科目を絞りましょう。受験科目を少なくすれば、1科目にかける時間を大幅に増やすことができます。
受験科目とは、入試で課すテストの種類のことです。受験科目は大学ごとに決めることができるので、受験科目が少ない大学を選べばいいわけです。

文系をすすめるわけ

高3から大学受験に取り組む人のなかで、まだ文系か理系か決めていない人がいたら、文系をおすすめします。文系とは、法学部、経済学部、文学部、教育学部、商学部などのことです。理系とは、工学部、理学部、医学部などのことです。

なぜ文系をすすめするかというと、受験科目に数学と理科を選択しないで済むからです。数学と理科は、ある程度の基礎学力がないと設問の意味すらわからないでしょう。勉強の「取っ掛かり」をつかみにくい科目といえます。一方、文系学部の受験科目である国語や地歴公民の試験は、初学者でも設問の意味はわかります。

ただ数学も理科も国語も地歴公民も、水準以上の点数を取るにはそれ相応の勉強量が必要です。しかし「取っ掛かり」がつかみやすい科目は、勉強をスムーズに進めることができます。

ただ、いくら高3から受験勉強を始めるからといって、理系を志向している人が文系学部を受験してしまうと、将来後悔することになるかもしれません。理系志向の人は数学と理科に立ち向かったほうがいいでしょう。

英語には時間をかけよう

志望大学学部が文系でも理系でも、英語は避けて通ることはできません。英語は時間をかけて取り組むしかありません。ただ効率的な勉強方法がありますので、あとで紹介します。

受験科目はこう絞ろう

文系学部を選択した前提で話を進めていきます。例えば、日本大学法学部の一般入試は、日大が独自に課すA方式入試とセンター試験を利用するC方式入試があり、それぞれの科目は次のようになっています。

A方式

・国語100点
・日本史B、世界史B、地理B、政治・経済、数学1、数学2、数学A、数学Bから1科目:100点
・英語100点

C方式(3教科型)

・国語200点
・日本史A、日本史B、世界史A、世界史B、地理A、地理B、現代社会、倫理、政治・経済、倫理・政治・経済、数学1、数学1・A、数学2、数学2・B、簿記・会計、情報関係基礎、物理基礎、化学基礎、生物基礎、地学基礎、物理、化学、生物、地学から1科目100点
・英語200点

C方式(4教科型)

・国語200点
・日本史A、日本史B、世界史A、世界史B、地理A、地理B、現代社会、倫理、政治・経 済、倫理・政治・経済、数学1、数学1・A、数学2、数学2・B、簿記・会計、情報関係基礎、物理基礎、化学基礎、生物基礎、地学基礎、物理、化学、生物、地学から2科目200点
・英語200点

この場合、おすすめはC方式(3教科型)です。センター試験を使うことで、他の大学を受験できるチャンスが増えるからです。

例えば、センター試験を入試として使っているA大学とB大学があり、ABともに「国語、日本史B、英語」を課していたとします。その場合、センター試験を1回受けるだけで、A大学とB大学の両方に出願することができるのです。A大学もB大学もセンター試験の結果で合否判定をします。そのため、C方式(3教科型)なら、受験科目を最小限にできるうえに、受験機会(出願機会)を増やすことができます。

ただ注意しなければならないのは、「受験科目最小限+センター試験活用」はどの受験生も狙ってくるということです。それだけにライバルが増えることになります。

次に青山学院大学法学部の受験科目をみてみましょう。以下の3つの方法のうち、いずれかで受験することができます。

センター試験利用入試

・国語150点
・世界史B、日本史B、地理B、現代社会、倫理、政治・経済、倫理・政治・経済、数学1・A、数学2・B、物理、化学、生物、地学のうち1科目100点
・英語100点

一般入試(全学部日程)

・英語150点
・国語100点
・世界史B、日本史B、政治・経済、数学I・II・A・Bのうち1科目100点

一般入試(個別学部日程)

・英語150点
・国語100点
・世界史B、日本史B、政治・経済、数学1・A・2・B、英語リスニングのうち1科目100点

例えば、センター試験の英語、国語、日本史Bを受験すれば、日大法学部と青学法学部の両方に出願することができることがわかります。ここまで受験科目を絞り込むことができれば、あとは英語と国語と日本史Bの勉強に邁進(まいしん)するだけです。

メンタルと生活環境を整える

突如大学進学に切り替えた高3生は、メンタルも受験環境も整っていないと思います。メンタルとは、受験勉強に集中する気持ちのことです。受験環境とは受験勉強を中心に置いた生活のことです。

受験勉強は1年間の長丁場です。しかも出題範囲は高1~3年の学習範囲と広範囲です。高校の定期試験にように、試験前の1週間で集中的に覚え込む勉強法が通用しません。中3生のときに挑戦した高校受験に比べて、大学受験ははるかに難しい内容になっています。さらに、高校入試は「合格させる試験」ですが、大学入試は「落とす試験」なのでよりシビアです。

受験勉強ではときに、いくら勉強しても学力が上がらないことがあります。受験勉強の学力は予備校が実施する模擬試験(模試)で計測しますが、模試の点数がまったく上がらないと焦るでしょう。

勉強をしても模試の点数が上がらないのは、学力が一定水準に達していないからです。学力が水準に達すれば、それ以降の勉強は模試の点数を上げます。したがって、自分を信じて勉強を続ける強い気持ちが必要になります。

1日の勉強時間は、最低でも10時間は必要になるでしょう。高校での授業が6時間ある日は、自宅などで4時間勉強することになります。朝、登校する前に1時間勉強し、放課後3時間勉強するようにしてください。そして、学校のない日曜などは、自宅や図書館の自習室などを使って、10時間勉強を実行してください。
10時間勉強にも強いメンタルが必要です。

突如大学進学に切り替えた高3生は、これまで就職の準備をしてきたと思います。例えば、自動車免許を取得するために、高校在学中に教習所に通おうと思っていた人もいるでしょう。もしそれを計画していたら取りやめたほうがいいかもしれません。教習所に通う時間を勉強時間に振り替えるためです。

生活全般を受験勉強中心にするには、家族の協力が欠かせません。自分の部屋がある高3生はいいのですが、そうでない場合は家のなかで静かに勉強できる場所を確保する必要があります。

まずは中学の教科書を完璧にする

突如大学進学に切り替えた高3生は、志望大学を決めたとしても、いきなりその大学の過去問に取りかからないほうがいいでしょう。「まったく歯が立たない」経験をしてしまうと、メンタルが弱ってしまうからです。

受験科目にした科目の中3生用の教科書を開き、その内容を完全に頭のなかに叩き込んでください。さらに中3生用の問題集を、全問正解するまで何度も繰り返してください。これをやるかやらないかで、その後の受験勉強の効率がまったく変わってきます。特に英語は、中1の教科書も見直したほうがいいでしょう。中学で習う単語はすべて暗記するようにしてください。

予備校を活用しよう

突如大学進学に切り替えた高3生は、予備校を活用してください。予備校には現役合格を目指す高3生向けコースを設定しているところもあります。

予備校は「最小時間で最大効果」をあげることができるかどうかを基準に選びましょう。予備校では相談を受け付けているので、これまで受験勉強をしてこなかったこと、高3生になって進路を就職から大学進学に切り替えたことを説明してください。「大丈夫ですよ」と言ってくれる予備校は安心できます。

さらに、科目別授業や能力別授業を実施している予備校を選んでください。受験科目だけ偏差値を上げたいので、科目別授業は必須です。また、突如大学進学に切り替えた高3生は、学力が低い状態から受験勉強をスタートするので、そのレベルに合わせた授業を受ける必要があります。それで能力別授業も重要になるわけです。

1年で合格を目指すか、浪人を視野に入れるか

突如大学進学に切り替えた高3生が、次の大学を志望する場合、一浪を視野に入れたほうがいいかもしれません。

関関同立(関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学)
MARCH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)
早慶上智理科(早稲田大学、慶応義塾大学、上智大学、東京理科大)
一橋大学、東京工業大学
旧7帝国大学(東京大学、京都大学、北海道大学、東北大学、名古屋大学、大阪大学、九州大学)

これらの大学はとても人気があり、ブランド力も他大学を上回ります。とても魅力ある大学なので、突如大学進学に切り替えた高3生だからといってあきらめる必要はありません。
しかし、国立大は受験科目が増えますし、しかも1科目ごとに勉強を深掘りしていかなければなりません。

そこで「高校3年の1年間猛勉強」と「予備校の力」と「さらに浪人1年間」の3つで難関大に挑むわけです。

上記の大学であれば、それだけの「コスト」に見合うでしょう。ただ、浪人したからといって必ず合格できる保証はどこにもないので「リスク」は伴います。リスクを取る覚悟があるのかどうか、そしてさらに1年間猛勉強を継続できるのかどうか、いずれも自分のメンタルの強さが深く関わってくるので、よく検討するようにしてください。

まとめ

これまで高校を卒業したら就職しようと思っていた人が、突如、高3生になって大学進学を決意することはたいへんかもしれません。しかし、とてもよいことでもあります。ぜひその夢を実現するよう、準備に取りかかってください。

まずは高校の担任の教師や家族に決意を伝えて、支援を取りつけましょう。そして戦略的かつ効率的に勉強を進めて、遅れを取り戻しましょう。基礎学力をがっちり固めてから応用問題に挑戦するようにしてください。難関大やブランド大を狙うには、一浪も視野に入れておいたほうがいいかもしれません。

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