早慶大とマーチの「世間イメージ」と「卒業後の位置」はどれほど違うのか

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私立大学への入学を目指している受験生にとって、一つの大きな目標となるのは、早稲田大学と慶應義塾大学ではないでしょうか。しかし早大と慶大は難関大学。
自身の学力を無視し、いきなり早慶に特化した受験勉強に取り組む戦略はリスクが大きいかもしれません。

その場合、まずは、マーチ(MARCH、明治、青山、立教、中央、法政)も視野にいれてもよいでしょう。マーチでも十分世間の受けはよく、いずれかの大学を卒業すれば、世間はしっかりと「一流大学卒者」と認定してくれる傾向にあります。

ですが、マーチ受験といっても楽ではなく、相当な勉強量が求められます。それならばいっそのこと、早慶を狙ったほうがいいと考える方も多いかと思います。大学選びはなかなか悩ましいですね。

では、早慶かマーチかで悩む受験生のみなさんと一緒に、目標大学をどのように設定していったらよいのか考えていきましょう。

早慶大受験とマーチ受験ではどれほど「大変さ」が違うのか

受験生が早慶大受験かマーチ受験かの選択が迫られるのは、それぞれ次のようなメリットとデメリットがあるからです。

早慶大受験マーチ受験
メリットデメリットメリットデメリット
ブランド力
○○
受験勉強がかなり大変
××
ブランド力
受験勉強が大変
×
将来、超有望
○○
不合格リスクがとても高い
××
将来、有望
不合格リスクが高い
×



この表の「○」と「×」を集計すると、早慶大受験は「○○○○××××」、マーチ受験は「○○××」となり、いずれもメリットとデメリットが相殺されます。早慶大受験はメリットが大きい分デメリットも大きく、マーチ受験はメリットが小さい分デメリットも小さいというわけです。

それでは早慶大とマーチの計7大学の偏差値をみておきましょう。
・慶大:70.0
・早大:62.5~70.0
・明治大:55.0~62.5
・青山学院大:55.0~60.0
・中央大:55.0~57.5
・立教大:55.0~57.5
・法政大:52.5~57.5

慶大が早大より上回っているのは、「私立大で最も偏差値が高い」慶應医学部があるからです。慶應医学部をのぞくと、早大と慶大はほぼ同じ偏差値です。

マーチ5大学のなかでは明治大の偏差値が頭一つ抜き出ています。ただ今回は触れませんが、早大と明大の間には上智大と東京理科大が入ります。
つまり私大のランクでは、「早慶」の超トップペア、「上智理科大」の第2グループ、「マーチ」の第3集団、という構成になっています。

偏差値の高さは「受験コスト」の高さと比例します。受験コストとは、合格点を取るまでに必要な勉強量や塾の授業料や参考書代などの総額のことです。

また、偏差値が高いと入試で落ちるリスクが高まり、浪人する可能性も高まります。浪人生活には、予備校の授業料に加えて、社会に出るタイミングが1年遅れることによる生涯年収の低下という部分にもかかってきます。

それでは次に、これだけのリスクとコストに見合った価値が、早慶大受験とマーチ受験にあるのかどうかみていきます。

早慶大生と早慶大出身者は世間からこう見られている

Yahoo!知恵袋に「早稲田大学って聞くと、どんなイメージを持っていますか?」という質問があり、早大OBと思われる人が回答を寄せています。
(参照:Yahoo!知恵袋

その回答の要約をまとめるとこうなります。
・社会的な影響力が強い
・首相を多く輩出し政治力が強い
・マスコミ各社で早大閥が形成されている
・早大卒者は支配欲、独裁欲が強く、目立つ存在になりたがる
・経営者や組織のトップに就くと個性的な運営をする
・建設業界で存在感がある

早大卒者はビジネス界でリーダーシップを存分に発揮できる地位を確立しやすいことがわかります。

もちろん慶大卒者もビジネス界での活躍では負けていません。
特に金融業界は強く、慶大生なら、メガバンクや大手生保など若くして高額年収を獲得できる企業から内定を獲得できる可能性が高まるといえるでしょう。

そして慶大生就職で最も魅力的なのは、「終活の最強の勝ち組」といわれている5大総合商社(三菱商事、三井物産、住友商事、伊藤忠商事、丸紅)への就職率の高さでしょう。
5大総合商社への入社は、私大なら慶大、国立なら一橋大が有利であると指摘する人もいます。

それでは次に学生の評判を概観していきます。
「日本一の私大生」という称号を手にした慶大生と早大生たちには、どのような特徴があるのでしょうか。
ある現役の慶大生(法学部)は、入学当初は「東大を落ちて慶大に入った」ことにコンプレックスを感じていたそうです。しかし学生生活を送るうちに、母校愛が芽生えてきて、大学や級友たちに溶け込めるようになり「慶應に入ってよかった」と思えるようになったそうです。

別の慶大生は「慶大生はチャラい」という印象は必ずしも当たっていない、と話しています。それよりも大学の講義は課題や試験が厳しく、「勉強させられる環境」にあるといいます。

日経BPコンサルティングが行った「首都圏大学ブランド・イメージ調査 (2018-2019)」によると、慶大の大学ブランド力偏差値は83.0で2位でした。1位は偏差値90.7の東大90.7で、早大は3位で79.5でした。
このランキングは首都圏限定なので京大が入っていません。東大以外の国公大では東京工大が5位、4位は私大の上智大でした。
つまり首都圏の人たちは「東大早慶」が大学のトップ3であると認識しているのです。

同じ調査で大学別のイメージをフリー回答で尋ねたところ、次のような感想が寄せられました。
<早大へのイメージ(フリー回答)>
・エネルギッシュだ
・チャレンジ精神がある
・自由闊達だ
・個性的だ
・精神的にタフだ
・大学のロゴが思い浮かぶ

<慶大へのイメージ(フリー回答)>
・自分の意見をしっかりいえる
・リーダーシップがある

早大も慶大も、かなりポジティブな印象を周囲に与えていることがわかります。
早大受験も慶大受験も浪人リスクや受験コストはとても高いのですが、それだけのハードルを越えてでも入学する価値があるといえるでしょう。

マーチ学生とマーチ出身者は世間からこう見られている

先ほど紹介した「首都圏大学ブランド・イメージ調査 (2018-2019)」でマーチについて言及した部分をみてみましょう。ランキングは以下のとおりでした。

6位:青山大
9位:明治大
10位:中央大
13位:立教大
19位:法政大

最上位の青山大でも、東大、慶大、早大、上智大、東工大に次ぐ6位でした。
マーチ最下位の19位法政大は、津田塾大(18位)や東京学芸大(17位)、東京理科大(16位)の後塵を拝する結果となりました。

「マーチ」という語呂がいいのでこの5つの大学の知名度は抜群ですが、しかし大学ブランドのイメージとしては「そこそこ」のポジションに沈んでしまっています。

では大学別のイメージ(フリー回答)もみてみましょう。
・明治大:親しみが持てる
・青山大:センスがいい、かっこういい、キャンパスに活気がある、立地がよい、面白みがある、コミュニケーション力が高い
・中央大:在学中の資格取得に積極的だ
(立教大と法政大については記述なし)

これらの回答は確かにポジティブなものばかりですが、早慶に対するイメージのコメントより力強さに欠ける印象があります。

たとえば「親しみ」「かっこいい」「立地」「面白み」「資格」といったワードからは「日本経済を牽引する」「日本の課題解決に取り組む」といったミッションのようなものは感じられません。
こうした点は、早大や慶大にかなり水を空けられているといわざるをえないでしょう。
したがってマーチ受験は、浪人リスクや受験コストは低いものの、入学して得られるメリットも早慶と比べると少ないといえます。

「やっぱり早慶」の理由

大学のイメージも、世間受けも、就職先の豪華さも、卒業後に得られる社会的地位も、どれをとっても「やっぱり早慶」と感じさせるものがありました。
元々早慶への憧れが強かった受験生は、ここまで読んでみてあらためて「やっぱり勉強量を増やして早慶を目指す」という気持ちになっていただけたのではないでしょうか。

「マーチで十分」の理由

一方、早慶の合格圏内に入るための勉強量を重荷に感じる方は、マーチ受験に絞り込みましょう。しっかりと人生設計を工夫すれば、早慶卒者を上回るための戦略構築も可能です。

<「資格の中央大学」は健在>

たとえば中央大学。資格取得で有名ですね。事実、中央大学はホームページで「中央大学で取れる資格」を大々的にPRしています。
(参照:中央大学「中央大学で取れる資格」

その資格とは、以下のとおりです。

教員免許
社会教育主事
司書・司書教諭
学芸員
電気主任技術者
第1級陸上特殊無線技士
第2級海上特殊無線技士
測量士補
測量士
第1級陸上無線技術士
電気通信主任技術者
土地家屋調査士
司法試験
臨床心理士
公認会計士(補)
不動産鑑定士
ファイナンシャルプランナー
証券アナリスト
税理士
宅地建物取引士
中小企業診断士
社会保険労務士
司法書士
行政書士
情報処理技術者

これらの資格の多くは、いわゆる「食べていける資格」です。これらの資格を持って就活すれば、大手企業に食い込むこともできるでしょう。
またこうした資格があれば、30~40代まで企業で経験を積み、その後に独立することができます。
早大卒者や慶大卒者が大学のブランド力や学閥人脈といった武器を使って社会での存在感を示していこうとするのであれば、マーチ卒者は資格という武器を携えて社会で闘っていけばいいのです。

<有名企業への就職に強い明治>

明治大学は、大学を挙げて学生たちの就活を支援しています。その取り組みは確実に成果を生んでいます。
以下の会社は、2017年度に明治大学を卒業した人たちの就職先です(*)。いずれも憧れの企業であり、入社が難しそうな会社ばかりです。
こうした一流企業に早慶を出ていなくても入ることができる明治大は、「受験コスパがよい」といえそうです。

(株)NTTドコモSCSK(株)新日本有限責任(監法)
(株)キーエンスSMBC日興証券(株)神奈川県庁
(株)ジェーシービーTIS(株)損害保険ジャパン日本興亜(株)
(株)ニトリホールディングスあいおいニッセイ同和損害保険(株)大和ハウス工業(株)
(株)みずほフィナンシャルグループアクセンチュア(株)第一生命保険(株)
(株)りそなホールディングスアメリカンファミリーライフアシュアランスカンパニーオブコロンバス東京海上日動火災保険(株)
(株)横浜銀行エヌ・ティ・ティ・コムウェア(株)東京都庁
(株)三井住友銀行オリンパス(株)東京特別区
(株)三菱東京UFJ銀行セイコーエプソン(株)東日本電信電話(株)
(株)商工組合中央金庫ソフトバンクグループ(株)東日本旅客鉄道(株)
(株)静岡銀行みずほ証券(株)凸版印刷(株)
(株)千葉銀行警視庁日本生命保険(相)
(株)大和証券グループ本社国家公務員 一般職日本通運(株)
(株)日本政策金融公庫国税専門官日本電気(株)
(株)日立システムズ三井住友海上火災保険(株)日本放送協会
(株)日立製作所三井住友信託銀行(株)日本郵政グループ
ANAホールディングス三井不動産リアルティ(株)富士ソフト(株)
JTBグループ【旅行事業会社群】三菱UFJモルガン・スタンレー証券(株)富士通(株)
KDDI(株)三菱UFJ信託銀行(株)野村證券(株)
NECソリューションイノベータ(株)三菱電機(株)有限責任(監法)トーマツ


(参照:明治大学「主な就職先」

<華やかなイメージがピカイチの青学>
青山学院大学(青学)は、華やかさでは早慶上智を上回る、と評価されることもあります。もちろん、華やかさの尺度は主観でしかないのですが、サザンオールスターズの桑田佳祐さん、フリーアナウンサーの田中みな実さん、「お・も・て・な・し」の滝川クリステルさんたちの出身大学であり、箱根駅伝の2015、2016、2017、2018年の優勝校であり、そしてなんといってもキャンパスの場所(住所は東京都渋谷区渋谷)です。
これだけ華やかさがそろっている大学は他にありません。

ただそのせいで世間では「青学生=軽い」と思われていますが、それは上辺だけに見方にすぎません。
青学は実は就職に強い一面もあります。「就職力で見抜く!沈む大学 伸びる大学」(木村誠著、朝日新書)で、就職率上昇大学ランキングで3位に入りました。
実際、2017年3月卒業生たちは、「みずほフィナンシャルグループ」「全日本空輸」「三井住友銀行」「三菱東京UFJ銀行」「富士通」「楽天」「JTBグループ」「ソフトバンク」「リクルートグループ」「アクセンチュア」「日本IBM」「ニトリ」「オリックスグループ」「ソニー」「SUBARU」などに入社しています。
青学OBOGのいない一流企業はない、といっても過言ではありません。

<マーチ社長は意外に多い>
そしてマーチのOBOGは、ベンチャー意欲が旺盛です。あるサイトの「社長の出身大学ランキング」では、明治が4位、中央が5位とベスト5入りし、法政は6位でベスト10入り、そして青学は11位、立教は13位とベスト20位入りしました。 1位日大、2位慶應、3位早稲田であることを考え合わせると「マーチは決してあなどれない」といえます。

<力が抜けているイメージ>
マーチの魅力は、イメージのよさもあります。「賢いのに肩に力が入っていない」「ガツガツしていない」という印象は、マーチ学生に共通しています。 これは東大や京大や早慶上智の学生に比べて、シビアな受験戦争をくぐり抜けていないことにも要因がありそうです。東大京大早慶上智に入る学生の多くは、子供のころから親の期待を一身に背負い、勉強に明け暮れてきました。そうなるとどうしても「エリート意識」「普通の人とは違う」といった気持ちが芽生えてくるでしょう。それが悪いわけではありません。エリート意識は社会を引っ張っていこうというモチベーションになるので重要ですが、しかしどうしても肩に力が入った生き方になってしまいます。
しかしマーチ学生やマーチOBOGには、いい意味でエリート意識が抜けています。彼らのライフスタイルに憧れる人は少なくないでしょう。

まとめ

日本の社会では、働き方改革が進んでいたり、幸せや豊かさの形が多様化してきたり、企業がグローバル化してきたりしているので、かつてよりは学歴を重視する風潮は弱まりました。学歴で仕事をしようとする人が尊敬を集めなくなってきています。
しかしそれでもなお、有名大学を卒業した証である学歴は、一生ついて回る肩書といえます。そして少子化で、誰でも大学に入学できる大学全入時代が到来した結果、「大卒」の意義は薄れ「有名大学や難関大学を出たかどうか」の価値がますます高まっています。
すなわち、早慶とマーチの存在感は今後ますます高まるはずです。

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