【大学受験】国語の勉強は「システマチックに」始める

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大学受験の国語試験は、母国語である日本語について問われるので「直感で解ける」と思っている受験生は少なくありません。そして実際「なんとなく」解けることがあるので、0点になることはまずありません。しかし、そのままでは一定レベルを超えることができず、のちのち苦しくなるでしょう。

国語の試験には、評論読解、小説読解、古文、漢文の4分野しかないので、1つでも不得意領域をつくってしまうと、大きなロスを招きます。「システマチックに」学び、システマチックに解くように心がけることが大切になるのです

国語が「受験のスタート地点」といわれる所以(ゆえん)

これから受験勉強を始める高校生は、国語は、受験勉強のスタート地点になると考えてください。なぜなら、国語の勉強は日本語を磨くことだからです

英語も数学も社会も理科も、日本語で出題されます。難関大学の英語の試験は、英語で問われますが、その場合でも、頭のなかで英文を日本語に変換したり、日本語を英語に変えたりしなければなりません。

日本語をマスターしていないと、英語、数学、社会、理科の問題を正しく理解できません。例えば、国語の読解力が、数学の成績に影響を与えることは、さまざまな研究で証明されています。日本語のスキル、つまり国語の学力は、全体の学力に影響を与えます。

もちろん、国語の成績が上がれば、その他の教科の勉強をしなくても、すべて学力が上がるわけではありません。次のように覚えておいてください。

★国語の学力を上げると、その他の教科の勉強がはかどるようになる

国語力が上がると、その他の教科の授業が理解しやすくなります。国語力は、その他の教科の「素地」になるのです。

システマチックに学ぶ、とは

冒頭で、国語はシステマチックに学ぼう、とアドバイスしました。システマチックな学び方は、珍しいものではありません。数学、理科、社会では、普通におこななわれているはずです。

例えば物理なら、「物体の運動とエネルギー」を学んでから「熱」を学び、次に「波」を学びます。この順番は、文部科学省の高等学校学習指導要領に書かれてあります。なぜ文部科学省がこの順番にしたのかというと、エネルギーの概念を身につけずに波の勉強をしても、理解が進まないからです。

これがシステマチックな勉強法の一例です。システマチックな学び方とは、効率的かつ合理的かつ自然に学ぶ方法といえます

日本史でも、徳川家康を学んでから、織田信長を学ぶことはありません。必ず、織田信長→豊臣秀吉→徳川家康の順に学びます。古い順に学ぶことで、「家康がこのような政策を取ったのは秀吉の影響を受けたから。秀吉がこうしたのは、信長のやり方に不満があったから」ということが、自然に頭のなかに入ってきます。

他教科でシステマチックに学習できているのに、国語の勉強では、行き当たりばったりになってしまう人は少なくありません。なぜなら、国語の試験で出題される評論の文章も小説の文章も、読んで「なんとなく」意味を理解することができてしまうからです。

国語が苦手な人は、試験後に答え合わせをして正答していることがわかると、「なぜ正答なのか」を検証せずに、「正答して当然だ」と感じてしまいます。また、答え合わせをして不正解であることがわかると、今度は「筆者の考えと出題者の考えは違う」と、間違った納得の仕方をしてしまいます。これでは、まったくシステマチックな学び方になっていません。

そこで、次の章から、「評論」「小説」「古文」「漢文」のシステマチックな学び方を紹介していきます。

評論の勉強はこう始めよう

評論の問題のシステマチックな学び方を紹介します。

1)普段はじっくり読み込み、内容を完璧に把握する
2)試験のときは、傍線箇所の前後3行、計6行だけを読んで考える

国語の受験勉強を始めたばかりの人は、この2点をしっかり守ってください。この勉強法はとても重要なので、一つずつ解説します。

普段はじっくり読み込み、内容を完璧に把握する

「普段」とは、高校での授業や自宅学習のことです。特に自宅学習で、問題集の評論問題を解くときは、課題文をゆっくりじっくり読んでいってください。意味がわからなかったら、2度3度と繰り返し読んでも構いません。それでも不明瞭であれば、ノートに、段落ごとの「要約」を書いていってもよいでしょう。

全身を「耳」にするつもりで、著者の問いかけを受け止めてください。この作業を丁寧かつ、繰り返しおこなわないと、国語力は身につきません。

受験における国語力とは、表現を正しく理解することと、構成を正しく理解することです。評論の課題文は、一読すると普通の日本語で書かれているようにみえますが、友人とLINEでやりとりする文章や、テレビのお笑い番組などで使われている日本語とは、まったく種類が異なる日本語です。

国語の出題者は、正しい表現を使い、正しい構成で書かれた文章しか試験に使いません。そうしないと、正解を作成することができないからです。

評論問題の出題者は、受験生たちから「なぜこれが正解なのですか」と聞かれたときに(実際はそのような質問の機会はありませんが)、「なぜなら、ここにこのように書いてあるからです」と説明できるようにしています。

幾通りも意味を取ることができる表現が多い文章や、論理的な展開になっていない、構成が崩れた文章は、試験には使えません。受験生は、普段の学習では、評論問題の課題文をじっくり読み、正しい表現と正しい構成を把握するようにしてください

試験のときは、傍線箇所の前後3行、計6行だけを読んで考える

入試本番や模試、学校の定期テストでは、評論の読み方は「ガラリと」変わります。傍線箇所の前後3行、計6行だけを読んで設問に答えるようにしてください。

例えば、「問い:傍線部分に「○○」とあるが、それはなぜか。その理由の説明として最も適当なものを次の選択肢のなかから選べ」という問題が出たとします。
このとき、傍線部分の前3行から読み始めて、傍線部分の後3行で読み終えてください。その計6行のなかで、答えを探してください。評論の課題文の全体から答えを探すようなことはしてはいけません。

なぜ計6行を読むだけで正答できるのかというと、評論の課題文は正しい構成でできているからです。評論では、例えば、1行目に書いた問題提起について20行目で答える、といった構成は取りません。入試で出てくる評論文の構成は、「問題提起→答え、さらに大きな問題の提起→答え、最終的な問題の提起→答え」といった、整った形になっています。もしくは「起承転結」がしっかりしています。

推理小説であれば、1ページ目に書かれた内容が伏線になっていて、最終段落の事件解決につながる、といった構成もあり得ますが、評論ではそうした構成は取りません。

入試の評論問題の解き方のコツ

したがって、入試の評論問題を解くときに、いきなり1行目から最終行まで読み込まないでください。入試の評論問題では、1行目から読み始めて、傍線が登場するたびに、設問に答えるようにしてください。もしくは、評論の課題文を読み始める前に、設問を軽くチェックしておいてもよいでしょう。

「出題者は何を尋ねているのか」と考えながら、問題を解いていってください。つまり、評論問題を解くには、「筆者は何を言おうとしているのか」と考えるだけでは足りず、「出題者は何を尋ねているのか」考えなければなりません。

速読は「次のステージ」で

普段の勉強では、評論の課題文はじっくりゆっくり読み、難しい内容であれば、ノートに段落ごとに要約を書いてもよい、とアドバイスしました。しかし、国語の教師や講師によっては、「評論は速く読めるようにしよう」とアドバイスします。実はこのアドバイスも間違っていません。

評論問題の攻略には、速読は欠かせません。しかし、受験勉強を始めたばかりの人が速く読むことに集中してしまうと、正しい表現と正しい構成の把握ができなくなってしまいます。
ノートに書く要約を、頭のなかでできるようになったら、スピードを意識して読んでもよいでしょう。

小説の勉強はこう始めよう

小説問題の解き方は、「自分勝手な読み方を捨て、作者の視点を追うことに集中しましょう」と教わると思います。これは100%正しい勉強法なのですが、受験勉強を始めたばかりの人は、この意味が十分伝わらないかもしれません。なぜなら、まだ「痛い思い」をしていないからです

正解がないなかから正解を導き出す

小説問題では、例えば「問い:このときの少年の気持ちの説明として、最も適切なものを選べ」といった問題が出ます。普段から小説を読み慣れている人は、「絶対これだ」という自信を持って、選択肢のなかから一つを選ぶでしょう。しかし、小説問題では、それが誤答になることは珍しくありません。これが、小説問題での「痛い思い」です。

小説の文章は、評論の文章ほど正しい表現や正しい構成を持っていません。なぜなら、小説の筆者は、「正しく伝えよう」とは考えていないからです。小説家は、悲しい気持ちを伝えたいとき、「どうすれば悲しい気持ちが伝わるか」と考えます。そして、読者が「悲しい」と思ってくれたら、それで小説家は満足します。読者が文章を少しくらい誤解しても、小説家はあまり気にしません。

そのため、小説は、10人が読めば10通りの解釈があって構わないわけです。小説問題の正解は「本当は」存在しません。

しかし、入試の小説問題では、答えを一つに絞らなければなりません。そこで、小説問題の出題者は、文章に書かれてあることを根拠に正解をつくります。小説問題の解き方も、評論問題の解き方同様、システマチックでよいのです。

小説問題の勉強もシステマチックでよい

小説問題のシステマチックな学び方のコツは、次の2点です。

1)自分の感想を「捨てる」勇気を持つ
2)文章に「だけ」根拠を求める

自分が好きな作家の小説や、読んだことがある小説が試験に出題されると「ラッキー」と思うかもしれませんが、実際はそれほど幸運なことではありません。むしろ、独特な読み方をしてしまっている人の場合、「答えは絶対これだ」と思っていた設問で、誤答するかもしれないのです。

小説問題を勉強するときは、自分の感想を捨てる勇気を持ってください。設問を考えるとき「直感的に正答はこれだと思うが、きちんと文章で説明されているだろうか」と検証するようにしてください。そして、文章内にキーワードがなかったら、勇気を振り絞って「正答はこれだと思うが、文章に書かれていないから、これは違う」と思考してください。

小説問題ではときに、著者の思いも無視したほうがよいでしょう。「この著者なら、こういうふうに考えるはずだ」といった推測は危険です。必ず「文章にそう書いてあるか」をチェックしてください。

古文の勉強はこう始めよう

古文と漢文は、評論や小説よりも、システマチックに学習しやすい分野です。まずは古文のシステマチックな学び方を紹介します。

古文の受験勉強を始めたばかりの人は、少し「酷」に感じるかもしれませんが、次の2点を実施してみてください。

1)文法を徹底的に把握する
2)単語を徹底的に覚える

古文は、「英語よりも英語の勉強法で」勉強していってください。なぜなら、ほとんどの受験生にとって古文は、英語よりも外国語のように感じるからです。

親しみのない言語の習得は、どうしても文法と単語の「ベースとなる知識」が必要になります。ベースとなる知識が獲得できるまでは、いくら勉強時間を長く取っても、成績はほとんど上昇しないでしょう。

成績が上がらないのに、文法と単語の勉強を続けることは苦しいと思いますが、「これが唯一の突破口」と信じて、知識のベースづくりに徹してください。これが、古文の初学者のシステマチックな学び方です。地味ですが、この方法が最短ルートになります。

漢文の勉強はこう始めよう

漢文は、古文よりも「難解言語」なので、文法と単語の学習を徹底する必要があります。漢文問題では、漢字の意味が問われたり、内容や理由が問われたりします。漢文では、精神論も重要になります

「漢文は捨ててしまおうか」という誘惑に打ち克とう

国語が苦手な人は、先に評論対策や小説対策に取り掛かりがちです。そして、余力で古文の勉強に取り組みます。すると、古文の段階で「苦手科目対策はこれくらいにしよう」と思ってしまいます。同時に「漢文は捨ててしまおうかな」と考えてしまうかもしれません。

漢文の問題は簡単

しかし、それはとてももったいないことです。なぜなら、漢文の問題の内容は、とても簡単だからです。出題文の意味さえ押さえることができれば、設問に答えることは容易です。考えを巡らせる必要はありません

例えば、ある年のセンター試験の漢文の問題に、次の問いが出ました。

問い:「知開封府」の解釈として、最も適当なものを、次の1~5から選べ。
1:開封府の長官の知遇を得た
2:開封府には知人が多くいた
3:開封府の知事を務めていた
4:開封府から通知を受けた
5:開封府で王嘉祐と知り合った

出題文の意味を理解していれば、間違いようのない選択肢です。この問題を、漢文の基礎知識がないだけで取りこぼしてしまうのは、とてももったいないことです。

まとめ

国語ほど「やりがい」がある教科もないでしょう。国語力が身につくと、日本史や世界史といったストーリー性のある教科の勉強が面白くなるはずです。教科書や参考書の説明文がスラスラ読めるようになるでしょう。また、国語力が身につくと論理的思考ができるようになるので、数学、物理、化学の成績向上が期待できます。

何より、国語では、多くの受験生が、ある程度まで伸びても、そこから成績が上がらないことに苦しんでいます。それはシステマチックに学んでこなかったからです。独学や直感的な学習法では、必ずどこかの地点で壁にぶち当たります。しかし、システマチックに学んでいけば、壁を感じることなく、学習量や勉強時間に比例して成績を上げていくことができるでしょう。国語は、ライバルを引き離しやすい教科と考えることができるのです。

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