少子化でも大学受験者(志願者)数は意外と減っていない!?

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日本では少子化が進行しているといったことを聞いたことがあると思います。少子化とは子供が少なくなることです。子供が少なくなれば大学の受験生も減少するため、難関大学の競争率も下がり入学しやすくなると考えたことはないでしょうか。

残念ながらそのような「嬉しい現象」は起こっていませんし、今後も起こりそうにありません。難関大学は依然として簡単には入ることができません。子供が減っているのに受験生が意外に減っていない現状と将来像を紹介します。

少子化の現状

少子化は「人口減少問題のひとつ」という位置づけです。「日本の人口は?」と聞かれたら、多くの人は「大体1億3千万人くらい」と答えると思います。2017年の人口は1億2,671万人でした。では将来はどれくらいになるでしょうか。

国立社会保障・人口問題研究所という国の機関によると、2065年には日本の人口は8,808万人と予想されています。2017年の1億2,671万人からは30.5%も減ることになります。
そして、年少人口(0~14歳)は、2017年の1,559万人から、2065年には898万人まで減少すると予想されています。減少率で考えると42.4%となります。

つまり、全体の人口が減るスピードより子供(年少人口)が減るスピードのほうが速いのです。そして今まさに、その少子化が進んでいます。人口も年少人口も「国の強さ」に深く関わっているので、人口減少と少子化は重大な社会問題としてとらえられています。このことを踏まえたうえで、受験生に関係する数字をみていきましょう。

2016年度入試(2017年度入学)の国公私立大学の状況

文部科学省が2016年度入試(2017年4月入学者)の入学志願者数(受験者数)を公表しています。( )は前年の人数です。
・国立大学380,936人(383,588人)
・公立大学160,506人(157,023人)
・私立大学3,913,897人(3,670,240人)
・計4,455,339人(4,210,851人)

入学志願者数が減っているのは国立大学だけで、公立大学も私立大学も合計も前年より増えています。その増減率は次のとおりです。

・国立大学:マイナス0.7%
・公立大学:プラス2.2%
・私立大学:プラス6.6%
・計:プラス5.8%

国立大学がマイナス0.7%と微減している一方で、私立大学はプラス6.6%になり、合わせた数値もプラス5.8%と大きく増加しています。つまり少子化が深刻な社会問題になっているにも関わらず、受験生(入学志願者数)は「かなり増えている」状態です。

大学は入学定員を増やすスピードを急減速させている

ただやはり、少子化が進んでいることは厳然たる事実なので、大学の入学定員はあまり増えていません。以下の表は、文部科学省が作成した資料「大学の入学定員・入学者数等の推移(長期的傾向)」から引用しています。

入学定員とは、大学側が事前に決めた「入学させる人数」で、入学者数は「実際に入学させた人数」です。志願者数は受験者数とほぼ同じと考えてよいでしょう。

単位:千人

18歳人口

高校卒業者

入学定員

志願者数

入学者数

昭和41年

1966年

2,491

1,557

195

513

293

昭和51年

1976年

1,543

1,325

302

650

421

平成4年

1992年

2,049

1,807

473

920

542

平成11年

1999年

1,545

1,363

525

756

590

平成21年

2009年

1,212

1,065

572

669

609

平成22年

2010年

1,216

1,071

575

680

619

平成23年

2011年

1,202

1,064

578

675

613

平成24年

2012年

1,191

1,056

581

664

605

平成25年

2013年

1,231

1,071

584

679

614

平成26年

2014年

1,181

1,064

586

662

608

平成27年

2015年

1,200

1,056

589

666

618

平成28年

2016年

1,190

1,092

593

665

618

長期的な視野

2016年と

1966年の比較

-52.2%

-29.9%

204.1%

29.6%

110.9%

短期的な視野

2016年と

2010年の比較

-2.1%

2.0%

3.1%

-2.2%

-0.2%

  

18歳人口

高校卒業者

入学定員

志願者数

入学者数



まずは、2016年と1966年の比較をみてください。18歳人口が52.2%も減り、それにともなって高卒者が29.9%も減っているのに、志願者数はむしろ29.6%も増えています。大学に進学したい子供の数が急増していることがわかります。

さらに1966年から2016年にかけて大学の定員は204.1%も増えています。つまり3倍以上になっているわけです。このように長期的な視野に立つと、日本の大学は「志願者数が増えるスピードをはるかに上回るスピードで入学定員を増やしてきた」ことがわかります。

ところが短期的な視野に立つと、傾向はかなり変わってきます。2016年と1999年を比較すると、志願者数は2.2%減っています。そして、入学定員の増加率も3.1%でしかありません。つまりここからは「大学は、志願者数の減少傾向に合わせて、入学定員を増やすスピードをかなり減速させている」ことがわかります。

受験生も減っているのですが、これまでのようには入学定員が増えないので、受験の競争の激しさはそれほど緩まないのです。

文部科学省「大学進学率は2040年まで上昇し続ける」

少子化が進んでいるのに大学受験の競争が緩んでいないのは、次の2つの原因があることがわかりました。
・大学進学を志望する子供が増えている
・進学意欲が高まっているのに大学側がそれほど入学定員を増やしていない(増やしてはいるが増加率は低い)

それではこの傾向は今後どのようになっていくのでしょうか。文部科学省は「大学進学率は2040年まで上昇し続ける」とみています。

 

進学率

(男女計)

 

進学者数
(男女計)
(単位:人)

増減(2017年比)
(単位:人)

増減率
(2017年比)

男子

女子

2017年

52.6%

55.9%

49.1%

629,733

2033年

56.7%

57.8%

55.5%

569,789

-59,944

-9.5%

2040年

57.4%

58.4%

56.3%

506,005

-123,728

-19.6%



以上の表は、2017年から2040年に向けて大学への進学率と進学者数がどのように推移するか推計したものです。

男子の進学率も伸びるが女子の伸びはさらに急になる

まず、進学率からみていきましょう。2017年は男子の進学率は55.9%と50%を超えていましたが、女子は49.1%止まりでした。男女合わせた進学率は52.6%ですので、「高校の同級生の半数が大学に行っている」イメージになります。

男子の進学率は、2017年から2033年には1.9ポイント上昇し、2040年は2017年より2.5ポイント上昇します。また、女子の進学率は、2017年から2033年には6.4ポイントも上昇し、2040年には2017年より7.2ポイントも上昇しています。

男子と女子の進学率の差は、2017年は6.8ポイントでしたが、2033年には2.3ポイント差に縮まり、さらに2040年には2.1ポイント差まで縮まります。つまり、男子の進学率も高まりますが、女子の進学率は男子を上回るスピードで高まるのです。

進学者数は2017→2040年で2割減

次に進学者数に注目してください。2033年の進学者数は569,789人で、2017年より59,944人も減ります。減少率は9.5%と約1割にもなります。また、2040年の進学者数は506,005人と、いよいよ50万人割れが視野に入ってきます。加えて、2017年との比較では、123,728人も減り、減少率は2割近い19.6%減です。進学者数が激減するものの、進学率は増加し続けることになります。

男女計の大学進学率が50%を超えたのは2009年

さらに興味深い数字を紹介します。これは2017年以前の進学率です。男女計の進学率が50%(半数)を超えたのは2009年であることがわかります。

単位:%

男女計

男子

女子

2007年

47.2

53.5

40.6

2008年

49.1

55.2

42.6

2009年

50.2

55.9

44.2

2010年

50.9

56.4

45.2

2011年

51.0

56.0

45.8

2012年

50.8

55.6

45.8

2017年(再掲)

52.6

55.9

49.1

2017年と2007年の比較
(単位:ポイント)

5.4

2.4

8.5

2040年(再掲)

57.4

58.4

56.3

2040年と2017年の比較
(単位:ポイント)

4.8

2.5

7.2



また、2040年と2017年の比較は先ほどみたとおり、男子の上昇率より女子の上昇率のほうがはるかに上回りました。その差は4.7ポイントでした。しかし、2017年と2007年の比較では、男子の進学率2.4%に対し、女子の進学率は8.5%と、その差は6.1%もあったのです。つまり、女子の進学率は、10年以上前から勢いを増していたのです。

進学率は都道府県でかなり異なる

こちらの表は進学率を主な都道府県別に並べたものです。

単位:%

2010年

2017年

2040年

全国

(再掲)

男女計

50.9

52.6

57.4

男子

56.4

55.9

58.4

女子

45.2

49.1

56.3

北海道

男女計

39.1

43.9

54.4

男子

47.4

49.4

54.4

女子

30.5

38.2

54.4

宮城

男女計

45.7

46.0

47.5

男子

49.2

48.4

48.4

女子

42.1

43.5

46.5

東京

男女計

73.1

72.8

72.8

男子

76.6

72.4

72.4

女子

69.6

73.2

73.2

石川

男女計

47.3

49.7

53.4

男子

54.0

53.4

53.4

女子

40.4

45.6

53.4

愛知

男女計

52.4

52.2

54.4

男子

57.6

54.4

54.4

女子

47.0

49.9

54.4

京都

男女計

63.9

64.7

73.8

男子

70.0

68.8

73.8

女子

57.7

60.6

73.0

鳥取

男女計

39.6

39.0

45.6

男子

45.0

40.6

45.6

女子

33.8

37.2

45.6

香川

男女計

48.7

49.0

49.6

男子

52.3

50.9

50.9

女子

44.8

47.1

48.2

福岡

男女計

46.2

48.2

53.5

男子

51.6

51.6

53.5

女子

40.5

44.7

53.5

沖縄

男女計

34.3

37.1

38.6

男子

35.6

38.6

38.6

女子

32.9

35.6

38.6



2010年の全国の男女計は50.9%でしたが、北海道(39.1%)、宮城県(45.7%)、石川県(47.3%)、鳥取県(39.6%)、香川県(48.7%)、福岡県(46.2%)、沖縄県(34.3%)は50%を大きく割り込んでいます。北海道、鳥取県、沖縄県は30%台でした。
一方、東京都(73.1%)と愛知県(52.4%)と京都府(63.9%)は50%を大きく超えています。

ここから、東京、名古屋、大阪の3大経済圏の中心地ほど進学率が高く、その一方で経済規模が小さく東京から離れているところほど進学率が低くなることがわかります。7年後の2017年も、2010年とほぼ同じ傾向を維持しているので、地方と都会の格差が固定されていることがわかるでしょう。

2040年の推計では、注目できる動きがあります。北海道の男女計が54.4%にまで上昇しています。北海道の男女計の2010年は39.1%でしたので、実に15.3ポイントも上昇しています。2040年と2010年の差をとったものが以下の表になります。

単位:ポイント

2040年と
2010年の差

全国

男女計

6.5

男子

2.0

女子

11.1

北海道

男女計

15.3

男子

7.0

女子

23.9

宮城

男女計

1.8

男子

-0.8

女子

4.4

東京

男女計

-0.3

男子

-4.2

女子

3.6

石川

男女計

6.1

男子

-0.6

女子

13.0

愛知

男女計

2.0

男子

-3.2

女子

7.4

京都

男女計

9.9

男子

3.8

女子

15.3

鳥取

男女計

6.0

男子

0.6

女子

11.8

香川

男女計

0.9

男子

-1.4

女子

3.4

福岡

男女計

7.3

男子

1.9

女子

13.0

沖縄

男女計

4.3

男子

3.0

女子

5.7



北海道の女子の「2010→2040年」は23.9ポイントも上昇しています。石川県の女子(13.0ポイント)、鳥取県の女子(11.8ポイント)、福岡県の女子(13.0ポイント)も10ポイント以上になっています。

一方、東京は男子がマイナス4.2ポイント、愛知県の男子もマイナス3.2ポイントと、元々高い確率だった地域で大きな減少がみられます。このことから、地方と都心との格差が「やや」解消されていくことがわかります。

ただ京都の男女計の9.9ポイント上昇や、宮城県男子のマイナス0.8ポイント、香川県の男子のマイナス1.4ポイントといった、「高いところがより高く、低いところがより低く」なる現象もみられました。

大学進学者数の将来推計

次に、18歳人口と大学進学率と大学進学者数の長期的な流れについて解説します。

18歳人口

日本の18歳人口は1992年の205万人をピークに減り始め、2008年には124万人となりました。この間39.5%も減っています。その後「小康状態」を維持し、2017年の120万人まで、120万人付近を推移していました。

文部科学省の推計では2035年に98万人と、初めて100万人を割り込みます。そして2040年には88万人になると見立てています。ピーク時の205万人から88万人へと2.3分の1まで減少します。

大学進学率

大学進学率は1990年ごろまで20%台で推移、2000年に入っても30%台でした。つまりこのころは「大学に行く人が珍しい」時代であったといえます。ところが2000年以降、大学進学率は急上昇し、2010年ごろに50%を超えます。2017年は先ほどみたとおり52.6%でした。それ以降は緩やかに上昇を続け、2040年は57.4%になるとみられています。2017→2040年の23年間で4.8ポイントしか上昇しません。

大学進学者数

大学進学者数のピークは2017年で63万人でした。1980年でも41万人だったので、1980→2017年の37年で22万人しか増えていません。ゆっくりですが、確実に上昇しています。これは、18歳人口の激減と進学率の急増が相殺し合い、そのうえで進学率の増加の力のほうが勝った結果といえます。

ところが2018年以降は、進学率の増加スピードが軟化するので、今度は18歳人口の減少スピードが勝ることになり、大学進学者数が減っていくのです。2040年の大学進学者数は51万人と推計され、これは1990年ごろの水準です。

存在感が増す外国人留学生

国内の大学院、大学、短大、高等専門学校、専修学校などを合わせた外国人留学生は、2011年は163,697人でした。翌年の2012年は161,843人と一時的に減少するのですが、その後急増します。2017年には267,042人と、2011年と比べると63.1%も増加しています。

そのうち、大学院と大学学部の外国人留学生の推移をみてみましょう。大学院の外国人留学生は、2013年の14,227人から2017年の17,578人へと23.6%の上昇でした。大学学部の外国人留学生は同期間、11,437人から16,445人へと43.8%の上昇でした。

文部科学省は「ポスト留学生30万人計画」を掲げ、大学の外国人留学生を増やしたいという考えです。各国が優秀な留学生の獲得競争を展開しているなかで、日本が後れをとるわけにはいかないからです。

日本は少子高齢化と人口減に歯止めがかからないので、外国人に日本に来てもらう必要があります。しかし、外国人が日本に来ても犯罪に関与したり学業の途中で帰国してしまったりしては「本末転倒」です。そこで「高度外国人材の卵」を国内の大学で育成し、優秀な外国人に日本の企業で働いてもらおうとしているわけです。外国人留学生の存在は、大学のなかで着実に存在感が増しつつあるといえるでしょう。

まとめ

大学生の人数に関係する数字を概観しました。「少子化=受験の軟化=好きな大学に入りやすくなる」という構図にはならないことがわかったのではないでしょうか。また、大学に進学したいと思っている人が勉強を続けられるケースが増えてきており、その傾向は今後も続くことが予想されます。「学ぶ機会の拡大」は大いに歓迎といったところではないでしょうか。

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