大学受験の英語は文法から!時制についてわかりやすく解説
大学受験生で、英文法の「時制」を苦手にしている人は少なくないはずです。時制が難しいのは当然で、英語の時間の概念と日本語の時制の概念はかなり異なります。むしろ「英文法の時制は完璧」と思っている人のほうが、警戒したほうがよいかもしれません。本当に時制を理解できているでしょうか。
時制の問題を「なんとなく」で解いている人は、基礎問題で通用しても、応用問題になると太刀打ちできなくなります。この機会に、時制の「正体」をしっかりとらえて、入試の難問に対応できるようにしておきましょう。
「時制」が難しいのは日本語にない概念だから
英文法の時制の理解を難しくしているのは、その「概念」です。日本語の時制には、現在、過去、未来の3つしかありません。ところが英文法には、この3つに加えて、進行形と完了形があります。そして進行形には、現在進行形と過去進行形と未来進行形があり、完了形には現在完了形と過去完了形と未来完了形があります。
さらに、進行形と完了形を合わせた現在完了進行形や過去完了進行形があります。現在、過去、未来以外の時制の表現は、日本語には存在しません。だから多くの受験生は、進行形や完了形が出てくると難しいと感じるのです。
「日本語にない概念を学ぶ」ことの難しさ
時制に限らず、多くの受験生は「英語は難しい」と感じています。その「難しい」という言葉には2つの意味があると思います。ひとつ目の難しさは、暗記の難しさです。「kennel」の意味がわからなければ、いつまで経っても「I made a kennel.」の意味はわかりません。暗記の作業は苦しいので「難しい」と感じることになります。
しかし、こちらの難しさは、覚えたら解決します。より深刻な難しさは、次に紹介するふたつ目の難しさです。
それは、理解の難しさです。例えば、英語の勉強が進むほど「take」という英単語を理解することが難しくなります。中学1年生であれば「take=取る」と覚えるだけで試験問題を解くことができますが、大学受験ではそうはいきません。大学受験生は、takeの意味を、少なくとも次の9個覚えておかなければなりません。
takeの9個の意味
・獲得する・選ぶ・取り込む・保持する・受け入れる・利用する・運ぶ・行う・占める
takeを理解することが難しいのは、takeに該当する日本語がないからです。上記の9個の日本語は「takeに当てはめている」だけです。takeは、英語にしかない概念です。「kennel=犬小屋」のような単純な単語ではないため、多くの日本人はtakeの理解に難航します。
takeの理解の難しさと同じことが、時制でも起きている、と考えてください。大学受験の英語学習は、日本語で行います。受験生は、目の前に英語の問題が出題されたら、すぐに日本語に置き換えて解いていきます。
英作文は英語をアウトプットしますが、それですら、日本語に適した英語を探してアウトプットしているだけです。よほどの上級者でない限り、英語を英語で勉強することはできません。そして日本語で英語を勉強すると「日本語にない概念」にとまどうことになります。
進行形は「継続」を重視している
それでは具体的に、時制の問題を見ていきましょう。難関な完了形を見る前に、進行形を確認しておきましょう。進行形も、英文法では「時制」のひとつとして習います。
中学校では現在進行形を、1)現在形とは別に存在する、2)まさに今その行動を行っているシーンを表現している、などと教えますが、この説明には少し無理があります。
現在進行形の授業では、例えば次の2つの例文を使って解説します。
文章A:I play tennis.
文章B:I am playing tennis.
そして次のように説明すると思います。
文章Aは現在形なので「私はテニスをしています」と訳し、文章Bは現在進行形なので「私はテニスをしているところです」と訳します。 文章Bは「まさに今、テニスをするという行動を行っているシーン」を表現しています。
なぜこの説明に無理があるのでしょうか。それは、日本語の「私はテニスをしています」でも十分、「私はテニスをしているところです」というニュアンスを伝えることができるからです。例えば、次のような日本語の会話はまったく自然です。
Cさん:あなたは今、何をしているところですか。
Dさん:私はテニスをしています
この会話からも、日本語の現在形には、英語の現在進行形の意味が含まれていることがわかります。
では受験生は、現在進行形をどのように理解したらよいのでしょうか。そのためには、英語の本来の意味を確認したほうがよいでしょう。現在進行形のことを「Present Progressive Tense」といい、英語ではこう説明しています。
The PRESENT PROGRESSIVE TENSE indicates continuing action, something going on now.
訳:現在進行形とは、継続中の行動や、「今」進んでいる状態を示す文章表現である
英語のネイティブ(アメリカ人やイギリス人など、英語を母国語としている人たち)は、現在進行形を「時間」と考えていないことがわかります。ネイティブにとって現在進行形の文章で重要なのは「継続していること」です。
このように理解すると、進行形に現在進行形と過去進行形と未来進行形が存在する理由が理解できます。継続中の行動は、現在でも過去でも未来でも発生します。だから、進行形に現在進行形と過去進行形と未来進行形が存在するのは当然です。
応用編:反復的動作を表現する進行形
現在進行形を「まさに今その行動を行っているシーンを表現している」とだけ理解すると、次の英文を理解できなくなってしまいます。
・She is always playing tennis.
これは「彼女はいつもテニスばかりしている」という意味になり、反復的動作であることを伝えています。確かにこの文章のSheは「今」テニスをしているところです。しかし、この文章が強調したいことは「進行中のテニスのこと」ではなく、「いつもテニスばかりしている」ことです。
現在進行形にalwaysを加えるだけで、意味がかなり違ってきます。
「She is playing tennis.」だけなら、単なる実況中継です。これが「She is always playing tennis.」になると、この話者は、テニスをしている彼女を見て、別の気持ちを持っていることが推測されます。
この話者は、例えば、次のようなニュアンスを伝えたくて「She is always playing tennis.」と言っているのかもしれません。
「やれやれ、どこにいるのかと思ったら、やっぱりテニスコートにいた。まったく、彼女ときたら、いつもテニスばかりしている」
彼氏が彼女のテニス熱に困っているときに、「She is always playing tennis.」と言うとよいでしょう。
この、反復的動作を伝える進行形からも、現在進行形が「現在か過去か未来か」といった時間軸に着目しているのではなく、継続のほうを重視していることがわかります。
完了形を学ぶ前の心構えについて
日本語と英語は、完全に一致する場合と、一致しない場合があることをご理解いただけたと思います。dogやcatは、日本語と一致します。しかし、takeや現在進行形は、日本語にない概念なので、これを理解することは簡単ではありません。
時間の概念も、日本語と英語では一致しません。日本語では、現在・過去・未来を「している・した・する」と表現します。動詞の表現を変えて、時間を変えています。しかし、英語では、現在・過去・未来を「動詞の現在形・動詞の過去形・助動詞の利用」で表現します。例えば、次のとおりです。
・I play tennis. テニスをしている
・I played tennis. テニスをした
・I will play tennis. テニスをする
このように並べると、日本語の時間の考え方と英語のそれの違いは明らかです。英語では未来形だけ、「助動詞will+動詞の原形」にしています。現在形と過去形は、「動詞を変形させて表現しているのに」です。
これは「I will play tennis.」は「I must play tennis.」と同じ構造になっています。つまり英語の未来形は、「助動詞を使ってニュアンスを伝える表現方法」の仲間なのです。
英語の未来形は「現在形と過去形の仲間」ではないのです。
これは英語が、未来を「単なる時間軸の1点」ではなく「未来志向の意思」を意識しているからです。willは未来形をつくる助動詞のほかに「意思」という意味の名詞でもあります。
いよいよ次の章から完了形の解説に入りますが、日本語と英語の時間の概念の違いを意識しながら、読み進めてください。
「なぜ完了形に完了・経験・継続があるのか」考えよう
完了形を苦手にする受験生が多いのは、1)形が複雑で2)意味も複雑だからです。
現在完了形は「have+過去分詞」
過去完了形は「had+過去分詞」
未来完了形は「willまたはshall+have+過去分詞」
現在完了進行形は「have+been+ing」
過去完了進行形は「had+been+ing」
このように完了形の形は大きく変化します。
さらに、動詞の過去分詞形も厄介です。「ed」をつけるだけのものもあれば、「sit、sat、sat」のようにまったく違う形になりながらも過去形と過去分詞形が同じ場合もあれば、「forget、forgot、forgotten」のように、「変形」+「過去形≠過去分詞形」というパターンもあります。
完了形の形の複雑さは「いかんともしがたい」ところがあります。もちろん、なぜhaveを使うのか、なぜ過去分詞という形態が存在するのか、といったところを掘り下げてもよいでしょう。しかし、受験勉強という観点からすると、その領域の学習は非生産的です。完了形の形は、そのまま覚えたほうが効率的です。
完了形の学習では、むしろ意味の複雑さを考えていったほうがよいでしょう。完了形には「完了、経験、継続」の3つの意味があります。なぜ、英語は、日本語の3つの意味を、たったひとつの完了形だけで表記できるのでしょうか。そうです、日本語には完了形という概念がないのです。
「現在完了形」ではなく「Present Perfect Tense」として覚えよう
現在完了形は英語で「Present Perfect Tense」と表記し、ネイティブたちは次のように理解しています。
The present perfect tense refers to an action or state that either occurred at an indefinite time in the past or began in the past and continued to the present time.
訳:現在完了形とは、1)過去のある時点で発生した行動または状態、2)過去に始まって現在まで継続している行動または状態を示す表現方法である。
また、次のように説明されることもあります。
The present perfect is used to indicate a link between the present and the past. The time of the action is before now but not specified, and we are often more interested in the result than in the action itself.
訳:現在完了形は、現在と過去を結びつけるための表現方法である。行動が始まった地点は過去であればよく、過去のいつの時点であるかは重要ではない。現在完了形では、結果に関心が持たれる。行動それ自体には、それほどの関心は持たれない。
これらの「Present Perfect Tense」の定義から、完了形のキーワードは次の3つであることがわかります。
・継続
・過去と現在を結ぶ
・結果を重視
日本語で時間の概念を学ぶときに、「継続」「過去と現在を結ぶ」「結果を重視」はどれも重要視されません。もちろん日本語でも「継続」「過去と現在を結ぶ」「結果を重視」のニュアンスを出すことはできます。
例えば、「あの火山は12時間前に噴火したが、今は大分沈静化した」という文章は、「継続」「過去と現在を結ぶ」「結果を重視」を言い表しています。しかし、「あの火山は12時間前に噴火したが、今は大分沈静化した」は、過去形と現在形を使っているだけです。日本語には完了形がないので、完了形の意味を、過去形と現在形を使って表現するしかないのです。
完了形の正体を把握する
完了形には「完了、経験、継続」の3つがあり、文法の参考書では、例えば次のように説明しています。
・完了:He has just returned from Paris.
彼はちょうどパリから戻ってきたところです。
・経験:She has once sailed the Edo river.
彼女はかつて江戸川を航海したことがあります。
・継続:We have been good friends since childhood.
私たちはおさななじみで、いまだに仲よしです。
ポイントは、日本語の3つの意味を、英語では1つの表現方法で済ませていることです。なぜ英語ネイティブは、日本語の「完了、経験、継続」の3つのニュアンスをひとつの表現で済ますことができるのでしょうか。
それは「完了、経験、継続」がすべて、次の2つに当てはまるからです。
1)過去のある時点で発生した行動または状態
2)過去に始まって現在まで継続している行動または状態を示す
「彼はちょうどパリから戻ってきたところです」は、過去のパリにいた状態から始まって、今は自宅にいるので2)に該当します。
「彼女はかつて江戸川を航海したことがあります」は、過去のある時点で発生した行動なので1)に該当します。
「私たちはおさななじみで、いまだに仲よしです」は2)に該当します。
これが完了形の正体です。
もちろん、完了形を学習するときは、日本語で理解しないと記憶に定着させにくいので「完了、経験、継続」の3つの言葉を使って覚えたほうがよいでしょう。しかし、「ネイティブは3つの意味を1つの表現方法で表現している」ことを忘れないでください。それは、「完了、経験、継続」には、上記の1)または2)という共通項があるからです。だから英語ネイティブにとっては、日本語の「完了、経験、継続」をひとつの概念でくくれるのです。
まとめ
時間の概念である「時制」が日本語と英語で違うのは、当然といえば当然です。時間の概念は文化や歴史や宗教観などで変わってくるからです。ところが、時計の針の動きは、日本でもアメリカでもイギリスでも同じなので、どうしても私たちは「時間は全世界同じ」と考えたくなります。その先入観を捨てないと、英語の進行形も完了形も、完全には理解できないでしょう。語学の学習はその国の文化や思考にも通じます。先入観を捨てた考え方が必要になってくるのです。